今回はU17ユーロについてです。現在、本大会は始まっているようで、U17イタリア代表も本大会に出場していました。そして、U17イタリア代表の大会初戦はU17オランダ代表戦でした。その試合の感想をザックリ語りながら、その試合で見られたイタリア育成年代の変化などについて語っていきます。
試合の雑感
試合はイタリアが4-3-1-2、オランダが4-4-2という形で始まった。オランダといえば4-3-3で選手が幅をとってボール保持を大切にしながら、サイドにいるウイング、中央のポストマンなどを起点とした攻撃が特徴だ。そして、それは布陣、選手の並びが変化しても変わらなかった。4-4-2であってもボール保持を重視する姿勢はかわらない。
一方のイタリアは4-3-1-2という布陣で、前からプレスにいく姿勢を見せていた。ボールを保持すれば、幅をとった4バックやポジションを調整する3センターから、中央のトップ下、FWへクサビのボールを入れていく。CBから一気にFWへクサビを入れ、ボールを進めていくことが多く、次いでSBがサイドからインサイドハーフと連携しながらボールを進めていくことが多かった。ただ最も多く見られた、クサビをDFからFWへ入れていくプレーは、成功率が高いわけではなかった。
そのためボールを保持するのはオランダという場面が試合を通して多くなる。ただ、イタリアのクサビが収まると、攻撃が少ないタッチ数で加速して一気にゴール前へ迫る場面も見られた。
オランダはサイドハーフが中へ入り込む動き、ライン間で細かいプレー、コンビネーションに秀でた選手がいた。その選手を中心にイタリアのDFラインとMFラインの間となる中、サイドバックとサイドハーフが外で起点を作りながら、攻撃を組み立てていた。オランダはピッチを広くつかってボールを動かしていく。そのためイタリアの4-3での守備ブロックは、サイドへのスライドが間に合わずにピンチを迎える場面が時間とともに増えていった。
その問題はイタリアのスタミナが要因になるだけでなく、4-3だけで守ろうとすれば、そうなってしまうという構造上の要因も絡んでいた。
一方のイタリアもカウンター攻撃、クサビを入れてからの攻守の切り替えなどにおいて、高い位置でボールを奪ってから速攻という形は機能していた。ただし、いかんせん成功回数が少ない。さらに、その少ない回数で得た決定的なチャンスも決めきれていなかった。
試合は、ある程度同じ展開を繰り返しながらオランダ優位で進み、後半終盤にオランダがサイドを突破してのクロスをファーで折り返してゴール。0-1でオランダが勝利した。
育成事情を考える
さて、今回の試合でU17イタリア代表は4-3-1-2システムを採用していた。これに関しては以前に記事も書いたが、2010年ワールドカップでイタリア代表が惨敗してから、イタリア代表の育成年代では、4-4-2を軸とした戦術を一貫して採用してきた。これは2010年からイタリア代表の育成年代コーディネーターとなったアリゴ・サッキ氏の方針によるものだった。
しかし、ここにきてU17イタリア代表は4-3-1-2を採用したということは、やはり何か変化が起きているということだろう。
この変化というのも2014年ワールドカップ後のコンテ監督就任以降に訪れたものである可能性が高い。2014年にイタリア代表監督であったプランデッリの辞任に伴って、イタリア代表育成年代コーディネーターだったサッキ氏も辞任した。つまり、現在のイタリア代表の育成年代は2014年のサッキ辞任をきっかけに、見直しを図っているのだろう。そして、その見直しのひとつがU17イタリア代表の4-3-1-2採用という形で現れたのだ。おそらくサッキ氏が退いて以後、初めての変化になる。
4-3-1-2とクラブユース
さて、育成年代イタリア代表が2010~2014年までの、年代で一貫して4-4-2型布陣を採用する方針は、これから薄れていきそうだ。これからは新たに4-3-1-2や4-3-3など、選手に合った布陣を採用する方針へ切り替わっていくのではないかと考えている。そして、その中でも4-3-1-2というシステムは、今後どんどんと増えていく気がする。
なぜなら、現在のセリエAの強豪ユースチームは、そろって4-3-1-2での育成をスタートさせているためだ。代表例を挙げるとローマ、ユベントス、ミランなどのチームは、ユース年代から4-3-1-2システムを採用して育成している。
特にローマなどは今まで一貫して4-1-4-1で選手を育成し、ある程度は結果を残してきたのだが、今季のユースCL(ユース年代のチャンピオンズリーグ大会)での試合を見ると、システムを4-3-1-2へと変更していた。
この変化の要因は、まだわからない。ただ、イタリアの各クラブが新たに何かを考え始めているというのは確かだろう。そして、イタリア代表側、イタリアサッカー協会側としても、クラブのユース育成事情を考慮しながらの年代別代表チーム育成を進めていくのが、今後の方針になっていくのかなと考えている。
試合から見るイタリアクラブユースの狙い
では、最後に今回のU17イタリア代表の試合を通して、管理人が感じた戦術的な変化と狙いについて語っていく。
簡単に言えば、今までのイタリアサッカーに比べてショートパスを中心に細かく中央から攻撃してDFラインを突破する意図は強くなった。これは4-4-2などのシステムに比べて、4-3-1-2ならば中央に人数をかけて、優位性を作りやすいためだ。
今までのイタリアならば、相手に後退されて守備されると、サイドから手数をかけずにクロスを入れていく攻撃が目立っていた。
しかし、今回のU17イタリア代表からは少ないタッチ数のパス交換やドリブル突破などで、相手の中央から攻撃する意識を強く感じた。一方サイド攻撃に関してはサイドバックに一任されているといった印象だった。試合を通して見ても、熱心にサイド攻撃を仕込んでいたわけではなさそうだった。どちらかといえば、サイドバックが個人でドリブル突破してクロスという場面が多いので、そこまで効果的ではない印象だった。
今までイタリアサッカーやイタリア代表の弱点だった、相手の守備を中央での連携、関係性で崩しきるというのが、現在イタリア育成年代で考えられているところであり、そこを強化するために中央でコンパクトに優位性を形成し易い4-3-1-2での育成が進んでいるのではないかと考えている。
最後に
ここまでの意見は、まだまだ仮説であるし、将来的にどうなるかわからない。ただ、今後5年くらいで、育成の影響が確実にでてくると思うので、それを楽しみにしていきたい。
近年にセリエAで活躍している若手や育成年代のイタリア代表を見ると、2010年以降からサイドアタッカーが増えた印象があったが、これからはだんだんと減少していくのかもしれない。その代わりに現在は少なくなったトップ下、攻撃的MFの選手が増加したり、万能型FWが増加する可能性がある。
未来のことはわからないが、これからイタリアサッカーが変化するかもしれないと考えるだけで、非常に楽しみだ。
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