今回はユーロ本大会の試合感想になる。ただ、この試合の詳細な記事というか、画像などをつかった、わかりやすい記事については土日にアップしたいなと考えている。そのため、今回の記事は文章のみ。
ベルギー代表は4-2-3-1。クルトワ、シマン、アルデルヴァイレルト、ヴェルメーレン、ヴェルトンゲン、ナインゴラン、ヴィツェル、デ・ブルイネ、フェライニ、アザール、ルカク。トップ下にフェライニ、1トップにルカク。サイドにデ・ブルイネ、アザールを配置した。ヴェルトンゲンはサイドバックで起用。
イタリア代表は3-1-4-2。ブッフォン、バルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニ、カンドレーバ、パローロ、デ・ロッシ、ジャッケリーニ、ダルミアン、ペッレ、エデル。
前半
イタリア代表もベルギー代表も、ボールを保持することを好むチームだ。そして、それぞれに保持のための方法を用意している。
イタリア代表は3バック+アンカーでボールを動かしていく形。これに対してオーソドックスに2トップでプレスにいくと、数的不利の中でボールを追い回さなければいけなくなる。そのためか、ベルギー代表は、前からの守備の場面で準備していた部分がいくつか見つかった。
ベルギーの準備
ベルギーはイタリアがボールを保持するのをある程度は許しているような姿勢だった。ただし、デロッシ、ボヌッチに関してはフェライニ、ルカクが縦の関係になってそれぞれをマークしていた。中央のキーマンをマークする代わりに3バックの両サイドには、ある程度ボールを進めさせてもいい、というのが狙いだったのかもしれない。
また、ベルギーはイタリアがボールの進め方に迷っているようならば、プレスにいくような姿勢も見せていた。その局面では、アザール、デブルイネがバルザーリ、キエッリーニへプレッシャーをかける。そのため、ベルギーの前線が1-3になり、イタリアの3バック+アンカーを1人1殺できれば、プレッシャーをかけきってブッフォンにロングボールを蹴らせられたり、ミスを誘発させられたりできる。ただ、45分間走り続けることは難しい。なおかつベルギーの両サイドはアザール、デブルイネで、守備で走り回るタイプではない。
ベルギーは時間とともに、イタリアの保持を潰す手段を失っていった。また、そもそもベルギーのプレスには連動性が感じられない場面も多いので、あまりイタリアに対してベルギーが効果的な守備を見せられなかった。準備しているのは見えるが、その準備を選手に徹底させられていなかったのかもしれない。
ベルギーの攻撃
一方のイタリアはベルギーがボールを保持すると、あっさりと後退して5-3-2で守備ブロックを形成する場面が多く見られた。ボールを失った後のプレスに関しても、ボールを失ってから奪い返すというよりは、全体が後退する時間を作るのが目的のようだった。ただ、スコットランド戦で書いたような5-3-2からカンドレーバが上がって4-4-2へ変化しつつ守備する形は、少なくなった印象だ。ここはベルギー相手ということで、慎重に試合に入ったのかもしれない。
ベルギーはボールを奪えば、速攻も見せるが、状況によっては選手間が幅をとって、DFラインからじっくりとボールを動かすことも苦手ではない。さらにイタリアは前から奪いにいく姿勢を見せていないので、ベルギーがボールを保持することは簡単にできていた。
しかしベルギーの攻撃を見ていると、なかなか息が合わないというか、狙うが定まらないように見えた。ベルギーが前半に見せた攻撃の形は2つ。1つがサイドのアザールとサイドバック、デブルイネとサイドバックでイタリア相手にサイドから2on2で勝負してクロスを入れる形。もう1つが選手が自由にポジションを入れ替えながら、攻撃を見せていく形だった。このポジションチェンジを見せる攻撃では、デブルイネとアザールが同じサイドにいたり、フェライニがセンターハーフの位置まで下がったりサイドへ流れたりと、かなり自由にポジショニングしている感じだった。ただ、攻撃の連動性はあまり見られなかった。1度だけ、アザールが足元でほしがり、フェライニがサイドのスペースへ抜けていく動きでサイドを突破したりしていたが、継続してそのような動きが見られることはなかった。
得点
試合は30分過ぎに動いた。ベルギーはルカクが前線でボヌッチを強く意識した守備を見せていたものの、ボヌッチを含めたユベントスの3バックがうまくボールを動かして、ルカクの守備を無効化させていた。こうなるとルカクの守備への関与もだんだんと薄れていく。そんな隙にボヌッチがDFライン裏へ抜け出したジャッケリーニへロングパスを通し、ジャッケリーニが決めて得点。イタリアが先制点をもぎ取った。
この場面では、イタリアのペッレがポストで受ける動きを見せ、ジャッケリーニが裏へ抜ける動きを見せる。単純だが、フリーラン、選手の動きにギャップを作ったことがベルギーDFのマークミスを誘ったプレーだった。そして、それを見逃さなかったボヌッチもさすがだった。
その後もペースはイタリア。サイドの大外に位置するカンドレーバへ大きくボールを動かしてサイドからの攻撃を見せたり、逆にエデル、ペッレが少ないタッチでボールを動かして、中央を突破する動きを見せるなど、中、外とバランスよく攻撃をしかけられていた。
後半
後半の立ち上がりからベルギーは覚悟を決めたかのように、前からプレッシャーをかけていく。前述したようにベルギーの選手がイタリアの選手を1人1殺すれば、イタリアのボール保持を妨害することは可能になる。ただし、前からいくということは、後ろが薄くなるということでもある。
イタリアはベルギーが前からボールにプレッシャーをかけてくると、ベルギーの薄くなった部分に起点を作ってボールを進めようとする。たとえば、デブルイネ、アザールが前へプレスにいくと、イタリアのウイングバックとベルギーのサイドバックは1on1の形になる。さらに、そのサイドにイタリアのインサイドハーフが寄っていくと、ベルギーのサイドは数的不利になる。このような構造を利用してイタリアはベルギーのプレスを回避して、ボールを進めていく場面があった。
また試合を通して、イタリアの攻撃というのは、中のエデル、ペッレへおさめてから、大外にいるサイドアタッカーのカンドレーバへ大きく振って、そこからゴール前へクロスという場面がおおかった。この展開で何度もチャンスが作れていたため、今のイタリア代表を支える攻撃パターンの1つだといえるだろう。
ベルギーの覚悟
試合は残り時間が少なくなるとともに、ベルギーがボールを保持する時間が増えていった。リードされたイタリアはカウンター攻撃を意識して5-3-2での後退守備。ベルギーはナインゴランを下げて、メルテンス。アザールをトップ下へ。しかし、攻撃の形はサイドからドリブルで仕掛けてクロスという展開だった。デブルイネ、アザールは本来、サイドから中央へ移動することによって力を発揮するタイプなだけに、ベルギーの中央での連携のなさは、見ている人にもったいないと感じさせるかもしれない。
終盤になるとベルギーはサイドバックを1枚削ってカラスコを投入し前線を厚くしていく。カラスコ、そしてメルテンス、デブルイネなどがクロスを入れていくのだが、ユベントスの3CBが跳ね返し続けて、得点のにおいはしなくなっていく。そして、前が厚いなら、後ろは薄くなっていく。
最終盤にはイタリアが選手交代で投入したインモービレがドリブルでの推進力でカウンター攻撃を機能させて、ロスタイムにインモービレのドリブルを起点にカンドレーバからのクロスをペッレがボレーで叩き込んで勝負あり。
不安視されていたイタリア代表が、ベルギー代表を下した。
感想
ベルギーが人海戦術でなんとかこじ開けようとしているのを見ると、なんとなく昔のイングランドを思い出した。
イタリアとベルギーに差があったとすれば、整備されているかどうかという部分だったと思う。そして、イタリアの攻撃がうまくいった背景にはベルギーの守備のまずさがあった。なので手放しにイタリアを褒めるという気分にはなれない試合内容だと思う。現在の形を封じられたときにコンテ監督がプランBを用意できているかどうかが、イタリアの成績を左右していくのかもしれない。
また個人的にコンテ監督がバランスを意識してインサイドハーフにパローロを配置したのは、非常におもしろかった。パローロはカンドレーバとラツィオでチームメイト、さらにセンターハーフもこなすことのできる選手だ。つまりコンテ監督としてはパローロが攻撃で目立っていなくても、セーフティネットとして必要だと判断したのかもしれない。また所属クラブが同じ選手を並べるのはチームの連携を重視するコンテらしいなと感じた。
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