大繁盛本舗 オーイズミ
04年に登場したA-400タイプのST機。
毎ゲームRT解除抽選を行っているが、複数のモードによってその確率が異なる。小役による解除抽選もあり。
わりとスタンダードな仕様だが、他機種にない独自性として「リプレイ2連続」を突入契機とするチャンスゾーンの存在があった。
チャンスゾーン中は小役成立による解除確率が大きく上昇。チェリー25%、スイカ100%、ベル10%と、現行5号機の自力系チャンスゾーンより当たるんじゃね? 程度の期待度でボーナスを放出してくれる。
当時のST機においては「リプレイ3連続で解除抽選、4連続で確定」という仕様の台が多く、その系譜かと思わせておいて「リプレイ2連続」というのは、ありそうでなかった感を出すことには成功していた。
内部モードは通常、ハマリ、即連、大繁盛、小繁盛が存在。ベースとなる通常&ハマリモードでは、毎ゲームでの解除確率は1/341~1/1170となかなか厳しい数字だが、即連モードではこれが1/8と跳ね上がる。
中段チェリーやジャックハズレなどを契機に移行する大繁盛モードは、解除確率こそ1/32だが50%以上でのループが期待できるので「チャンスゾーン解除と即連モードで凌ぎつつ、大繁盛モードにぶち込んで頑張る」という、狙い所がシンプルでわかりやすい作りだった。
スタンダードな仕様にちょっとした独自要素。出玉爆発契機もあり。決して派手ではないが、手堅い、じっくりと遊べる台として、一定以上の評価を得、長く愛された良台でした……。
で、終わらせてしまえば、それは嘘ではないが大いなる事実誤認であろう。この台は、分類するのであればまず間違いなく「マイナー台」であるが、後世における知名度としては「歴代の名機クラス」でもある。5号機世代の打ち手でも、ベテランスロッターとの会話で北斗や吉宗や銭形と並んで名前を挙げられて(そんな有名な台なのか……?)なんて経験をした人もいるではないだろうか。
その理由は明確で、
液晶演出とはなんぞや? というテーマを、哲学レベルまで掘り下げてみせた問題作
だったからだ。
この台には実に豊富な連続演出が存在する。
・埋蔵金発掘演出
・体操大会演出
・バイクレース演出
・会社に泥棒演出
・野球勝負演出
・部長ティータイム演出
演出という演出が出揃って煮詰まってる感のある、現代スロッターなら、どれも字面を見るだけで、どういう内容でどうなればOKなのか想像できると思う。
埋蔵金発掘に成功して金塊を獲得。
体操大会で10点満点を決めて金メダル。
バイクレースで優勝。
会社に侵入した泥棒を無事に逮捕。
野球勝負でホームラン。
部長ティータイムでは、カウントダウンが発生し「0」と同時に部長がなんか覚醒する。
部長の扱いはさておき、全体的には突飛でも理解不能でもない。
この台が問題作とされたのは、そういった勝利や成功的な演出が出ても、直後にボーナスが放出されるわけでもないところにあった。
それだけならまだ(???)と首を傾げながらも(大当たり確定の画面は今のとは別にあるのか……)と無理矢理に納得できたかもしれない。だが、この台の真価はそういった「連続演出の発生頻度」にあった。
20スロでの1000円分、約30回転の間に現実的に起こりうる挙動を書いてみるとしよう。
液晶に大きく「?」の煽りが出現→連続演出「埋蔵金」に発展→金塊獲得!→通常画面に戻る→数G後「?」の煽り再び→連続演出「バイクレース」に発展→負けて3位→通常画面へ→また「?」で煽られる→連続演出「野球勝負」に発展→ホームランで勝利!→通常画面へ。
ここまで30G。その後もう30G回したが特にボーナス放出はなし。ついでにレア小役成立とかも特になし。
打ち手の心理面を描写するのであれば、
埋蔵金発見!(ボーナスキタコレ!)→通常画面へ(あれ…? まさかのガセ…?)→バイクレースで3位(やっぱりガセか。黄金発見は確定じゃないのか~わかりづらいな~)→野球でホームランで勝利(え? ええ!? 本当はやっぱり入ってるの? 長めの前兆とか? だとすれば埋蔵金の時点で前兆スタート中? G的に次で告知か)→通常画面へ(わけがわからないよ!)
筆者も初打ち時、本当にわけがわからなかった。当時の感覚で想定できるありとあらゆる可能性を模索してみたりもしたが、最初から最後までわけがわからなかった。そのうち考えることを辞めた。
そんな、ベテランや上級者を含む多くの打ち手を困惑した液晶演出だが、5号機時代になって液晶全盛期を迎え、多様にもほどがある一つの極みにまで達した今なら、説明および理解が可能だ。
鍵は「その演出が何を示唆するために存在するのか」にあった。
液晶登場以前。リーチ目、チャンス目、ランプ、リールフラッシュといった演出は「ボーナスという大当たりを示唆」するためにあった。
液晶登場初期。液晶上で展開される演出も、それまでのスロの流れを継承するように「ボーナスという大当たりを示唆」していた。
爆裂AT全盛期には「ボーナスないしATという当たりを示唆」と含む対象が増えたが、AT=当たりというのは、メーカー・ホール・打ち手の共通認識として成立していたので、問題なく機能した。
STやゲーム数解除の全盛期になると「一つのシナリオとして数十ゲーム単位で一括処理される前兆の一部」としての演出も目立つようになるが、それでも最終的に示唆しているところが「大当たり」であることは変わらぬまま、5号機時代へと入る(※)。
5号機時代。流行し定着した二つの要素が、この流れを少しずつ変えはじめる。
一つは小役重複。その重要度が高まり続けるにつれて「重複期待度の高い小役が成立したことを示唆する」演出が目立ちはじめる。
「小役成立時のボーナス重複に当選した」という結果に対してではなく、小役が成立したことへの示唆。表面的にはわかりづらいが、この変化を敏感に感じ取っている打ち手も少なくはないと思う。
もう一つはチャンスゾーンだ。「チャンスゾーン当選を示唆する」ための演出。こちらは演出の歴史の初期からある「当たりを示唆」のラインナップの一つとして「チャンスゾーン」が加わっただけなので、シンプルではある。近々の台では「チャンスゾーンのチャンスゾーン」なんて「当たり」も存在するようだ。
最新台を打っていて、なんだこの詐欺演出は!? と憤った経験がある方は、そこから一歩踏み込んで「その機種における演出が示唆する行く先」を検証してみると、ちょっとだけ世界が変わるかもしれない。
リールロック→激熱→動物柄→液晶フラッシュ→強チャンス目→30Gほど液晶ざわざわ→特に何事もなく静かになる
こんな現象に遭遇してしまっても、それは「チャンスゾーンのチャンスゾーンへの当選期待度が高い小役が成立していることへの示唆」として設定された演出であるならば、演出は与えられた仕事を正確にこなしており罪はない……のかもしれない。ホントか?
さておき。
上記のような概念が育っていない時代において『大繁盛本舗』の演出は「前兆を示唆」する役割を与えられていた。
当時の常識的発想で受け止めてしまうと、ボーナス確定示唆にしか見えない演出たちは「最大32Gの前兆RTに滞在している時ほど出やすい」設計であり、現行の台における「黒ナビ頻発」「会話赤文字頻発」などと同位の存在だったのだ。
初代の『主役は銭形』における不二子と表現すれば、ピンとくる打ち手もいるだろうか。金塊発見も金メダルもレース優勝もホームランも泥棒逮捕も不二子。社長が登場して広げた扇子に「大繁盛」と書いてあっても不二子。ど派手にロケット発射に成功しても不二子。石器時代にタイムスリップしても不二子……ではなく、この石器時代だけは「チャンスゾーン滞在を示唆」する役割を担っているらしい。ただしこれも確定ではない。
初代の『主役は銭形』における不二子と表現すれば、ピンとくる打ち手もいるだろうか。金塊発見も金メダルもレース優勝もホームランも泥棒逮捕も不二子。社長が登場して広げた扇子に「大繁盛」と書いてあっても不二子。ど派手にロケット発射に成功しても不二子。石器時代にタイムスリップしても不二子……ではなく、この石器時代だけは「チャンスゾーン滞在を示唆」する役割を担っているらしい。ただしこれも確定ではない。
その演出が大当たりを示唆するために存在するといつから錯覚していた? というスロ界最先端の概念を先取りしていた、惜しいというか「突き抜けすぎれば、それはそれで着いてくる人もいるものだを体現した」そんな台でした。
※4号機時代における「ボーナスでもATでもないものを大当たりに含む」としては、初代『秘宝伝』の高確率などごく少数の存在はあった。
蛇足。
※4号機時代における「ボーナスでもATでもないものを大当たりに含む」としては、初代『秘宝伝』の高確率などごく少数の存在はあった。
蛇足。
要は、残念すぎるクオリティでも、徹底すればそれはそれでアリなんだな! と思ってしまった方は、ちょっとだけご注意です。
『大繁盛本舗』は、出玉バランスや、リール配列&制御や、モード移行などのシステムや、スロとしての総合的なゲーム性は「悪くない」という評価もまた多い台でした。液晶関連だけが突き抜け過ぎていたために、ある種の伝説にまで到達しただけで、頭から尻尾までダメな台が後世に名を残すことは、やっぱりなかなか難しいことを示した台でもあると、そんな風に思うところです。