格闘激戦区 5号機 RT エレコ



まだホールで最後の4号機たちが稼動していたいわゆる「5号機黎明期~初期」にリリースされた機種。
今ではかなり定番素材となっている「格闘もの」だが、4号機まではメジャーなジャンルではなく「侍スピリッツ」「ストリートファイターII」「鉄拳」などはあったが、いずれもどちらかというと「マニア向き」的な評価をされる機種だった。
5号機時代に入ってからSNKが自社版権タイトルを大量リリースしはじめ、スロの素材としての「格闘もの」が目立つようになってきた。
そんな中で、この格闘激戦区。タイトルにも入ってるぐらいだからバリバリの「格闘もの」。ただしこいつはゲームとのタイアップではない。完全オリジナルである。

キャラクターの作り込みには相当力を入れていて、複数の主人公から好きなキャラを選んで通常プレイができる。隠しキャラも存在。各キャラにはストーリーが存在し、それぞれ固有のエンディングも用意されているのだから、かなりのもの。

そのエンディングを見るためにはボーナス中のボスバトルに勝利する必要があるのだが、この勝敗が押し順依存だったりする。残念ながらフラグや出玉とは連動していない、純粋な演出のためだけの演出なのだが、それでもたいしたこだわりようだろう。

ゲーム性としては、Aタイプ風+RT搭載機。ボーナス後のチャンスゾーンで特定フラグを引けばRT突入なのだが、これが完走型で150G固定。30~50G程度のRTが多い中で150G固定はかなり際立っていた。純増枚数も悪くなく、完走で90枚前後は期待できた。

元々の版権持ちという有利のあるSNKを例外とすれば、「格闘もの」というモチーフでここまでこだわって作りこまれたスロット、しかもオリジナルというのは過去にはなかった。メーカーとしてもかなりの自信と情熱を持って投入した作品だったろうだろう。


これが、残念ながらヒットしなかった。


原因の半分以上は、「時代が厳し過ぎた」というせいにはできると思う。
5号機黎明期は、出玉規制ありきのスタートだったこともあって、どこまで出玉を出していいのかの目安もないまま開発された台が多かったせいか、総じて辛い。この機種も例外ではなく、

ボーナス合算 1/316~1/291
機械割り 97%~105%
BIG純増234枚 REG純増112枚
1000円あたりの平均回転数31~32G

数字を並べてみると明らかに辛い。初代エヴァもボーナス確率はかなり重かったが、代わりにBIGが340枚以上獲得に加えて、1000円あたりのゲーム数が良いのが売りだった。

RT150消化で90枚上乗せと考えても、やっぱりかなり辛いスペック。スパイダーマン2や怪胴王、ジャックと豆の木などがほとんど同期であることを考えても、全てを時代のせいにするわけにいかないところ。

スロッターは同時にゲーマーであることが多いこともあってか、この機種のビジュアル・液晶に興味を持って着席、キャラクターの豊富さや背景世界の作り込みに「おっ」となって関心を抱いた者は少なからずいたと思う。それが長期稼動・人気につながらなかったのは…結局スロッターは辛い台では粘れないから。

それでもRT150は突入させた時の自力感がかなり快感だし、そこでボーナスがつながった時のノリノリ感も5号機初期の台の中ではかなり良い方だった。それだけに、もう少しだけ機械割り関連・出玉性能で頑張れていれば、シリーズ化も狙える人気機種に育った可能性は十分にあった。

「初代エヴァ」や「ハーレムエース」は優秀なコイン持ちをベースにボーナス連打を待つということができた。
「デビルメイクライ」や「うる星やつら」は獲得枚数という目に見える魅力があったし、あるいは「サクラ大戦」のようなツインBIGタイプには、いい方のBIGに偏らせればなんとかなる! なんていう自分の引きを信じてプレイが出来るという、自分を納得・言い訳させる要素が存在した。

この台に欠けていたのはそれだと思う。
いっそのこと、RTのゲーム数を50・150・次回ボーナスまで、などにしてしまったもよかったかもしれない。
数少ないファンが聞けば、そこは「150G固定だからこそよかった」という声もありそうだが、より幅広く人気を得るには、そういった「これさえ引ければ!」の存在が欠かせない。

あとひとつが届かずに「5号機初期の名機」になり損ねた、そう思える惜しい台でした。