何かの機会に、チチの書いたものを読まなければならないことがあった。
ハハとQさんといっしょだった。
ハハが言った。
「お父さんの字は達筆すぎて読めないのよねぇ〜」
確かに。
ぐちょぐちょで、全然読めない。
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私とQさんが実家にいるときに、私の実母への年賀状か何かで、チチの字をみんなで読む機会があった。
Qさんが言った。
「チチの字は達筆すぎて、読めないんですよ」
「???」
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ハハとQさんが、折に触れ、チチの字のことを『達筆すぎて読めない』と言うたびに、だんだんと、この人たちはチチの字が汚いことを皮肉って、揶揄して、そう言っているのではない事に気がついた。
本当にチチの字は『達筆』だと思っていたのだ。
だから私は、教えてあげた。
「達筆って言うのはね、字が上手な人のことだよ。
読めない人にはグチャグチャに見える字も、くずし方がちゃんと決まっていて、それにのっとって書いているんだよ。
ただ、適当にグチャグチャに汚く書くのとは違うの。
美しく見えるようにくずしてあるし、決まりがあってくずしているんだから、その決まりを知っている人なら、すらすら読めるんだよ。」
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十数年経っても、Qさんは未だに「達筆すぎて読めない」と、チチの字のことを言う。
ちょっと書道をかじった私には、チチの書く字は、
ものすごく汚い字
に見える。
草書も習ったけど、私が知っているくずし方の文字はないので、私はチチの字を読めない。
ちなみに、チチも「自分の書いた字を読めない」といっていたような気が………
私が相手にしている人たちは、こんな人たちです。