何かの機会に、チチの書いたものを読まなければならないことがあった。

ハハとQさんといっしょだった。

 

ハハが言った。

「お父さんの字は達筆すぎて読めないのよねぇ〜」

 

確かに。

ぐちょぐちょで、全然読めない。

 

+ + + + + +

 

私とQさんが実家にいるときに、私の実母への年賀状か何かで、チチの字をみんなで読む機会があった。

 

Qさんが言った。

「チチの字は達筆すぎて、読めないんですよ」

 

「???」

 

+ + + + + +

 

ハハとQさんが、折に触れ、チチの字のことを『達筆すぎて読めない』と言うたびに、だんだんと、この人たちはチチの字が汚いことを皮肉って、揶揄して、そう言っているのではない事に気がついた。

 

本当にチチの字は『達筆』だと思っていたのだ。

 

 

 

だから私は、教えてあげた。

「達筆って言うのはね、字が上手な人のことだよ。

読めない人にはグチャグチャに見える字も、くずし方がちゃんと決まっていて、それにのっとって書いているんだよ。

ただ、適当にグチャグチャに汚く書くのとは違うの。

美しく見えるようにくずしてあるし、決まりがあってくずしているんだから、その決まりを知っている人なら、すらすら読めるんだよ。」

 

+ + + + + +

 

十数年経っても、Qさんは未だに「達筆すぎて読めない」と、チチの字のことを言う。

 

ちょっと書道をかじった私には、チチの書く字は、

ものすごく汚い字

に見える。

草書も習ったけど、私が知っているくずし方の文字はないので、私はチチの字を読めない。

 

ちなみに、チチも「自分の書いた字を読めない」といっていたような気が………

 

私が相手にしている人たちは、こんな人たちです。