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 スピーチをというものをこれほど真剣にとらえている本はないかもしれません。私はこの本から、ジャック・ウェルチという人の、スピーチのとらえかたと、それに対する真剣さにおののいたのだと思います。この本は、直接、ウェルチが語っているのではなく、ビル・レーンという人が書いています。このひとはウェルチの専属スピーチライターです。スピーチの専門家ですから、レーンさんの語りはわかりやすく、それでいていろんなことを描いてくれています。 

 例えば、ウェルチの人柄やあの大手のGEという組織がどんなところかが、言葉を通じて伝わってきたように思うのです。ウェルチは、5分の話をきけば、その人の能力の全て分かるというのです。たった、5分だけなのに、そこまでいろんなことがわかるなんて恐ろしいですね、たった5分で判断されてしまう。ビジネスでの局面で、それも、ウェルチほどの経済界の重鎮のような人の時間を、5分もらってスピーチするなんて考えると、膝が震えてきそうです。そんな話を知るだけで、こちらの背筋は伸びそれこそ正座でもしないと、ウェルチに叱られるように感じるのです。ビジネス界で、GEのような大きな組織を従え、成果を出してきたビジネスパーソンだからこそでしょう。そんな厳しさも本を通じて伝わってきます。

 そんなウェルチに言わせると、スピーチにジョークなんてのはありえないようです。スピーチの目標は、ずばり仕事を進めるために明確に具体的なことを提言すると言い切っています。そう考えると、ジョークで笑いをなんて考えると、それだけで能力なしの烙印を押されそうです。

「笑いを取ろうとして自らのスピーチを台無しにしてはいけない。寸前で思いついたことを、とっさにスピーチの中に盛り込もうとするのもよくない。アドリブは大抵の場合はうまくいかないものだ。だから、ウェルチと私は毎回、隙のない原稿作りに心血を注いだ。ウェルチくらいになれば、多少のアドリブを入れても問題なかったかもしれない。なぜなら、聴衆はそのすぐ後に彼の真剣なメッセージが続くとわかっていたからだ。だが、そうでない場合は、下らないアドリブを入れた時点で、相手の心はあなたから離れてしまう。ウェルチは後年、時折スピーチの冒頭にユーモアを交えるようになったが、決して『ジョーク』は言ったりはしなかった。」(p344

 そのウェルチも、ユーモアは使っていたようです。あくまで、ユーモアは、伝えたいことをより分かりやすくするために駆使する手段だからです。ジョークのように笑いを求める必要もないというわけです。ユーモアを使うことで、その話が分かりやすくなるだけでなく、聞き手が笑ったり、ニンマリすることもあります。でも、それは分かりやすく伝えたための副産物なのです。そのあたりを誤解すると、ビジネス上での話をするのに、笑いを求めることを考えて、コメディアンか、ビジエンスマンかがわからなくなるような状態を諌めているのでしょう。

 ここまで、厳しくウェルチの見方を習わないとしても、スピーチをするときに安易に笑いを求めることは諌めるべきでしょう。笑いがこないと、笑いを乞う人もいます。実は、この「笑いを乞う」っていうのを、プロの噺家は嫌います。以前、ある真打の落語家さんの話を聞く機会がありました。その時に、「プロとして絶対にやらないこととして、笑いを乞うこと」というのがありました。これは、笑わせたいポイントを話した時、全く聞き手が受けない場合があります。その時に、「みなさん、ここは笑うポイントですよ!」という場合を聞いたことがないでしょうか。これは、受けない冗談のところで、無理やり受けるように促すことで、「笑いを乞う」行為となるのです。

 私は、この話を聞く前までは、そんな風に「笑いのポイントですよ」というのも、笑いを取る技術だと思っていたのですが、それ以降、いっさい笑いを乞うのを、自分に禁じています。仮に、笑ってほしい冗談を話したとしても、それが受けなかったら、しらっとそのまま話し続けていきます。そして一人で考えればいいのです。もちろん、これは仮にジョークを入れたとしたらの話です。

 私の基本線として、スピーチにジョークはいれません。まずすべるし、良い効果や良い評価がうまれると思わないからです。ただ、ユーモアを駆使して、いいたいことを極端にいったり、おもしろおかしく形容したりすることはあります。そういう中で、聞き手が笑ってくれることは多々あります。しかし、あくまでそれを狙っているのではなく、言いたいことを分かりやすくしていく、という視点からのユーモアです。何もスピーチに限らず、ユーモアと、ジョークの使い分けなどは意識しておきたいところです。そうじゃないと、笑えないスピーカーになる可能性が大きくなるように思うのです。しかし、G・ウェルチのユーモアはどんなものなんでしょうね。もしかしたら、それを聞いた観客は結構大きく受けていたりして・・・。もちろん、ウェルチは言うでしょう。これはジョークではなく、私のユーモアであり、その笑いは私のメッセージが分かりやすく伝わったからであると。


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