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 私の読書ブログ「自宅で立ち読み」の五百冊目として、このブログの出発点で大いに刺激を受けた編集工学にまつわる本を選んだ。私はこの本は、年表なのでいろんなタイミングでその時代を概観したい時に参照している。松岡正剛氏の編集によるものだから、その内容や表現法が普通の年表とは一味もふた味も違う。たとえば、各ページ五つのトラックが決められていろんな情報をそのテーマに沿って編集をしている。年表の随所に出来事が縦に書かれて強調されている。その部分だけを拾い読んでも時代の特徴が浮き彫りになる。そんな普通の年表にはない遊びも面白いので、私はちょくちょくとひっぱり出してはページをながめている。どんな本がその時代を作ってきたかという情報も満載だ。ここも本好きにはたまらない。数えていないがこの年表で紹介されている本は万を超えるだろう。おそらく、編集工学研究所の何万もの蔵書がかなり紹介されている筈である。そう考えるとこの一冊はあの松岡正剛氏の頭の中を垣間見られる稀有な書とも言えそうだ。では、年表の一部を取り出し紹介してみよう。

 

【輪郭の発生〜BC6000万年前】

 まずは、本書のタイトルでもある、情報が芽生えた時期からの記載が始まる。情報の歴史とはいうまでもなく人類の歴史である。だからこの年表もそこまで太古にさかのぼる。ページ左下の言葉はこうこの時期を形容する。

「立ち上がった人類は、難産と育児をひきかえに、巨大な脳の持ち主担っていた。すべての歴史は、この大きくなりすぎた情報処理能力に富んだ脳に始まった」

 最初の年表は、7000万年前から40万年前である。最初の言葉は「7000 白亜紀末期、恐竜絶滅、哺乳類台頭」とある。このトラックは「気象と地史」とあり、ヒマラヤ造山運動、現代の生態系、ヴィラフラキアン期、日本列島の弧状化、ギュンツ氷期、ミンデル氷期とある。「人類の脳の進化」では、3700万年前に人類と類人猿の分化、1500万年前に東アフリカ前猿人が出現して二足歩行開始。600万年前に東アフリカに猿人出現(アウトラロピテクス、アファレンシス)。猿人の発展(脳容量470~700cm2)、190万年最古の原人(ホモ・エレクトゥス)、150万年原人世界に拡大する(脳容量、850~1200cm2、右脳・左脳分化か)、50万年前北京原人(シナントロプス・ペキネンシス、脳容量、900~1200cm2)と進化の足跡が記されている。

 5番目のトラックでは「先史文化」とあるが、500万年からの記載である。ここで一番注目なのは、100万年前とされる「五指分節、言語萌芽」である。そして後に「火の使用」が出てくる。脳の発達が加速され、情報という概念すら生まれ出てくる時期だろう。

 

1770年〜1789年】

 この時代を選んだのは、2018年元旦の新春ドラマで、解体新書(1774年)の物語が放映されたからその時代を選んでみた。第一のトラックでは「アメリカの独立」(1776年)がある。今の世界を考えるときにアメリカの存在抜きでは語れない。そんな国が誕生した時代である。日本では田沼意次が老中(1772年)になり20年間実権を握ることになる。イギリスでは最初の労働組合ができる(1776年)。

 第2トラックの「経済と社会の縮図」では、ブリタニカの初版(英、1770年)、アダム・スミスの「国富論」が出て自由主義経済学が確立される(1776年)。次のトラックテーマは「博物学と技術革命」になり、英国で「工学」という概念が誕生する。平賀源内がエレキテルを完成、前野良沢、杉田玄白の「解体新書」が世に出される。「ロマンとメディア」というトラックテーマでは、ドイツではヘルダーやゲーテが登場してくる。私が大学卒業の論文のテーマにした「若きウェルテルの悩み」(1774年)もこの時代の産物である。日本では江戸の出版プロデューサーとして、蔦屋重三郎が本屋を開業する。

 

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1959年、昭和34年】

 私はこの年の3月に京都の金閣寺の近くで生を受けた。ページ左上の言葉としてこう書かれている。

「カウンターカルチャーの自覚がはじまり、

 ヌーヴェル・ヴァーグの映像が雄弁に見える」

そして左下にはこんなコピーが踊る。

「アラン・カプローと土方巽。肉体だけのメッセージ」

「大人にも女性にも、子供にも、

 日本人は週刊誌が好きになる」

 この年、日本では週刊誌の発刊ラッシュだ。「週刊現代」「週刊文春」「朝日ジャーナル(現アエラ)」「少年マガジン」「少年サンデー」「朝日ソノラマ」などだ。私は子供の時にむさぼり読んだ漫画の原点のような年とも言えそうだ。小学校の時は「少年マガジン」や「少年サンデー」などの漫画雑誌は欠かさず読んでいた。学校ではみんなで奪い合うようにして回し読みをしていた。そのヒーローにあこがれ、夢をもらい、困難に立ち向かう姿勢を学んだ。

 1959年のページのトラックテーマは、「第三世界の時代」「宇宙開発と通信」「科学文化の反省」「ヌーヴェル・ヴァーグ」「情報の氾濫」となっている。

 最初のトラック「第三世界の時代」での出来事として盾文字、オレンジ色で目立つように「キューバ革命」とある。チベットでは反乱、そしてダライ・ラマ14世が亡命する。シンガポールは独立宣言をする。中印国境紛争がある。韓国政府が日本への渡航を禁止する。ヨーロッパではドゴール大統領が就任。ソ連の書記長フルシチョフが訪米する。世界は米ソを軸にしながらもどんどん大3世界の国の台頭が見える。 

「宇宙開発と通信」のトラックでは、米の人工衛星打ち上げやソ連の月ロケット・ルーニク打ち上げなど、米ソの競争が活発に起こっている。第2世代コンピュータの開発が始まる。IBM1401発表。アメリカでCOBOL開発開始となる。「通信」として日本では電話が300万台を超える。私が小学校の時は家に電話はなかった。隣の家の電話を連絡先としていて「呼び出し」なる言葉があった。京セラ(京都セラミック設立)、新三井物産発足。新しい産業の芽が出ている一方で、基幹産業になる鉄鋼ストや三井三池鉱業所で大量指名解雇通知が出された。

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 最後のトラック「情報の氾濫」では、本、雑誌、テレビ、ラジオなどのメディアからの情報が爆発するように増えている。ニッポン放送がオールナイト放送を開始する。皇太子結婚がテレビで実況中継される。ブルーバードが発売され、マイカーブームが来る。東芝がカラーテレビを発売する。白黒テレビからカラーへ変わっていく時代である。本田技研オートバイ・チームがマン島レース初参加する。天覧試合で長嶋茂雄がさよなら本塁打。杉浦四連投で南海ホークス優勝。

 こんな風に眺めていくと、私が生まれた時代をおぼろげながらも輪郭が見えてくる。そして、断片的に知識として(その時は自覚できないので)知っていたもののつながりが出てくる。この出来事とあの事件が同年だった、という気づきは、影響という関係線を引いたり、さらなる気づきの対角線を引いてくれたりする。年表を眺めてみる知的な面白さがここにある。

 

【情報の万華鏡:クロニクル年表】

 ISIS編集学校の通信プログラムの「破」(応用コース)では、クロニクル年表を作る課題がある。年表を自分の手で作成するのだ。この『情報の歴史』のような複雑なものではない。自分の年表と、何かのテーマを決めてその出来事を並べて、3つのトラックを出して関係を見つけていく作業を行う。私はこの「破」のプログラムを二度体験している。1度目は「ロボット開発の歴史」、二度目は「サラリーマン漫画」の歴史を私自身の年表と重ねてみた。これは予想以上に面白い。時代を生きてきているのだから、いろんな出来事の影響を受けて生きている。しかしそんな背景をじっくり考えないでいることも多いように思う。その時の流行り、その時代の技術の発展と限界、情報の入手も変化する。私がクロニクル年表を作成して気づいたのは、同じ時期に起こっていることがらの関係や影響を無視しては、その時起こっていることの本質がわからないことだ。間違っていても自分なりにものごととの関係線を引くことが、時代感をつかむことになり、自分で考える姿勢を鍛える大切なことだと思えたのである。

 そんな気づきを持った時に、「わかった」気がした。それは、松岡正剛氏の持つ突出した時代感、歴史観は、自分の頭の中にハイパーリンクして繋がっている年表があるからではないかと「わかった」のである。本を読んでいる時に見つけた年代の記録を、どんどんとノートにしていく。松岡自身が『多読術』の中で自らの勉強法を教えてくれていた記述を思い出した。バラバラに見ていたものが、時間軸の中でつながっている。そのつながりに意味が加えられて、面見えなかったものがわかるようにしていくのが編集の根っこなのだろう。ISIS編集学校の応用プログラム「破」の中での「クロニクル年表」の課題はそんな手法を学ぶ初歩だったとわかる。そしてそんな編集工学的手法が駆使されたのがこの『情報と歴史』という巨大年表本になる。

 この本はできるなら手元に置いておきたいものだ。私はふとこの時代はどんな時代だったかと思った時にページを開いている。その時代の出来事を注意深く読んでいく。同時期に起こったことを探していく。そうすると面白いことに読むタイミングごとに違った関係を見つけたりする。見えなかった関係線が現れたりする。さながら情報の万華鏡のような面白さがこの年表にはあるのである。

 

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