2009年02月16日

沸騰都市 シンガポール NHKスペシャル

NHKスペシャルは面白い。今回もシンガポール政府の世界から知を集める取り組みが紹介されていた。

シンガポールのパワー、とりわけ政府の力強さには圧倒される。知を集めないと国は滅ぶ。そのとおりだ。素晴らしい。

一般的には、だから、シンガポールは素晴らしい未来があり、日本は駄目だ。東京は駄目だ、と言うことになるだろう。

私は、全く逆のことを感じた。シンガポールは危うい。その危うさがパワーになっているが、一度誤ると転落していくだろうし、政治が一度も誤らない、と言うことはあり得ない。

日本は、なかなか倒れないと思う。今後、未来が開けるのは日本だ。

なぜなら、シンガポールには文化がない。地に根を張った社会がない。契約に基づいて生まれた、理想的な組織があるだけだ。組織と社会とは違う。組織は良くできているし、思い通り作れるから、デザインがよければ、素晴らしいものが出来るが、使い手が悪かったとき、悪意がある、あるいはデザインを理解しない構成員が、組織をいじれば壊れてしまう。

社会はそう簡単には壊れない。ただし、一旦壊れてしまうと、ゼロから作ることはできないので、また、壊れることもありうるので、そして、今、世界で社会は壊れつつあるので、社会はなんとしても守らなければならないのだ。

シンガポールは社会ではなく組織だ。だから、簡単に壊れる。

日本は、社会だ。だから粘り強い。変な首相が3代続いたぐらいでは壊れない。しかし、今、壊れ始めている。これを防止することが、GDPをあげることの何百倍も重要だ。というより、比べようがない。国家の責任は、GDPではなく、社会を壊さないように守ることだ。一方、社会は、国家には作れない。この国家と社会の関係をもう一度見直し、再構築するチャンス、それが今なのだ。

今晩のNHKスペシャルは、東京。東京とシンガポールの違いが垣間見られるか。番組としては、不動産としての魅力が中心になるような雰囲気だったが、その番組から、何を感じ取れるかは、我々次第だ。


この記事へのコメント
 2009年は多くの知識人がこぞって社会の重要性を唱えていますね。でも、それをどうやって再構築していくか、私には分かりません。とりあえず身近な所から、ということでしょうか。
Posted by s688839 at 2009年02月16日 07:35
はじめまして。貴書に感動しブログにたどりついてしまいました。

仰っていること、日本に関してはもっともだなと思います。厳しい状況でも、自国の長い歴史を踏まえ、これからの日本社会の方向性に影響を与えるのは、今生きる日本人自身なんだという自覚を、積極的に持つべき時期だと思います。

心に響く記事だったのでコメント入れさせていただきました。これからの小畑さんのご活躍も、心から応援させて下さい。
Posted by ちゃっぴー at 2009年02月16日 08:10
私も沸騰都市見ました。
おもしろかったです。

確かに先生のおっしゃる通りですね。
私は他人に優しい(優しかった?)、日本の社会が
大変好きです。

何とか守っていきたいものですね。

Posted by yh at 2009年02月16日 09:33
コメントありがとうございます。本のほうも過分なお言葉ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
そうですね。我々こそが頑張らないと。

> はじめまして。貴書に感動しブログにたどりついてしまいました。
>
> 仰っていること、日本に関してはもっともだなと思います。厳しい状況でも、自国の長い歴史を踏まえ、これからの日本社会の方向性に影響を与えるのは、今生きる日本人自身なんだという自覚を、積極的に持つべき時期だと思います。
>
> 心に響く記事だったのでコメント入れさせていただきました。これからの小畑さんのご活躍も、心から応援させて下さい。
Posted by sobata2005 at 2009年02月16日 10:17
みなさん
コメントありがとうございます
そうですね。日本社会を守って行くために、少しずつ出来ることを私もやらなければ、と思っています
Posted by seki at 2009年02月16日 10:19
>国家の責任は、GDPではなく、社会を壊さないように守ることだ。

経済学者でありながら、こう言い切る先生は本当に素晴らしい!先生のような方が経済学者の多数派になってほしいものです。そうなればフツーの人々がもっと幸せに暮らしやすい社会になると思います。現状の多数派の経済学者はまるっきり逆のことをしているとしか思えませんので。

シンガポール同様、アメリカ合衆国という国家も人工国家として同じ脆さを内包しているのではないでしょうか?日本とはまるで「国柄」の異なるアメリカ的な思想を無批判に輸入することは極めて危険だと考えます。



Posted by 通りすがり at 2009年02月16日 15:00
沸騰都市を見た者です。
まるでSFに描かれるような国家のありように驚愕しながらも、一方で、
ああやって国力を上げて上げて、はて国民は幸せになれるのか?
そもそもシンガポールに本来的な意味の国民というのはいるのか?
などと思っていました。
そうした違和感の根源にあるものを、先生がピタリと言い当ててくれたことに感謝します。

また「社会はそう簡単には壊れない」という先生の、社会に対する強い信頼の思いに勇気づけられました。

Posted by 緑茶 at 2009年02月16日 19:48
みなさん
本当にたくさんのコメントありがとうございます
思い切って書いてみてよかったです。
皆さんとの議論の中で、また考えが深まりました。
お互いに刺激しあっていきましょう
これからもよろしくお願いします
Posted by seki at 2009年02月17日 07:35
中谷巌氏も同じような事を言ってます。

http://www.tbsradio.jp/ac/2009/02/post-149.html
Posted by skym at 2009年02月17日 18:05
沸騰都市を見ました。
検索するとSEKIさんのような意見は少数派ですね。
みんなシンガポールを賞賛!
でも、僕もSEKIさんの意見に賛成です。

シンガポールも民主主義国家としては色々と問題を抱えているようですが、
国家の方向性を優秀な指導者があんなにサクサク進められるのはうらやましいですね。

民主主義の欠点って多数意見が常に正しいとは限らないことですからね。
(むしろ間違っている場合が多い)
国家の仕組みとしてはある意味優秀ですが、危ういのも事実。

ただ、日本はくだらない議論ばかりで進むスピードが遅い!
Posted by ジェシー・リバモア at 2009年02月18日 05:18
90年代にシンガポールに何度か出張しましたが。。あのころの自然な発展とおもいました。人口流出が激しく、さらに、同数の移入もあり、均衡を保っていましたが。これで愛国心、というものが育つのだろうか?と。もちろん、愛国心はよし、あし、です。書店にはいかがわしい書物は一冊もなく、ゴミポイすれば高額の罰金、麻薬を持ち込んだりすれば即、死刑。当時は中国語の新聞がありましたがいま、すべて英語になっています。研究者も労働者も、金、で引きつけられているが。。金、に魅力が無くなったとき、オシマイ、の国です。国としての求心力が問題だろう。建国の祖=リカンユー氏が元気でいるうちは、大丈夫だろうが。。
Posted by 古井戸 at 2009年02月18日 09:26
はじめまして。

私は以前シンガポールの大学に留学したことがあります。そのときの経験を基に考えると、先生がおっしゃった「シンガポールには文化がない」や「シンガポールが社会ではなく組織だ」という意見に対してはまったく共感できません。

なぜならシンガポール人は、シンガポール人であることに誇りをもっています。特に中国系の人間は、海外では明確にシンガポーリアンとチャイニーズの区分けを徹底しています。
自分たちがシンガポーリアンであることを明確に主張する彼らの行動や考え方に触れれば、シンガポールに社会や文化がないなどという意見にはたどり着かないと思います。

私にはどう考えても内向きになっている日本人より、世界を眼中におくシンガポール人のほうが明るい将来があるように見えますが、先生はどうお考えでしょうか?
Posted by ilikecar at 2009年02月18日 10:38
みなさん
コメントありがとうございます
ilikecarさん
コメントありがとうございます。私の意見が異端で、ilikecarさんの意見が普通と思います。
現状では、シンガポールは素晴らしいパフォーマンスを発揮してきており、また、独立から頑張っていますから、社会がそこに成立し、文化が育ちつつある、ということでしょう。
ただ、企業にも企業文化というものがあり、例えば、早稲田大学にもワセダ文化、というのがあると思います。ただ、その文化とは危ういものではないか、と思っています。
その企業の経営が傾けば、企業文化は一気に失われますし。
日本は、今のところ、明治維新によっても、太平洋戦争の敗戦によっても、あるいは、現在のめちゃくちゃな政治によっても、変わらない文化というのが(かろうじて?)存在していると思うのです。
シンガポールで、こんな政治が行われてしまったら、どうなるでしょうか、というのが私の疑問の出発点です。
今後とも、よろしくご指導お願いいたします。
Posted by seki at 2009年02月18日 11:19
小幡先生

私もシンガポールに住んでるときに
同じようなことを考えていました。
シンガポールは「経営」されている国です。
あれは「政治」ではない。

以前はそれを羨ましいと感じましたが、
サブプライム以降、危うさを感じるようになりました。
「経営」される「組織」には
「社会」のもつ根深い力強さはありません。
むしろ戦前のような租界的なシンガポールの方が
不確実性に対する対応力は高かったのかもしれません。
リークァンユーがなくなると
あの国は方向性を見失う可能性があります。

ただ、グローバルなネットワークという点に
関していうならば、
華僑のそれは日本人の及ぶところではありません。
戦後の日本はそれまで世界各地に
広げていた人的なネットワークの拡大を
とめてしまいました。
日本という国自体が経済発展をしていたため、
リスク分散のために家族を世界に散らばせるという
発想を失ってしまったのでしょう。

そのように考えると、シンガポールも所詮国ではなく、
華僑ネットワークの結節点のひとつで、
よくできたヴィークルに過ぎないのかもしれない。

生き残るのは果たして社会なのか?ネットワークなのか?
このような対比で日本とシンガポールを
比較するのも面白いかもしれませんね。
Posted by Shimmura at 2009年02月18日 23:21
ありがとうございます
改めて考えてみたいと思います
Posted by seki at 2009年02月19日 04:43