古馬の牝馬のGIはかつてのJRAのレース体系にはなく、長く望まれていて、まずエリザベスが三冠目という位置づけを秋華賞に譲り、三歳・古馬の牝馬の対決となり、その後、春にもGIということで、ヴィトリアマイルのとなった。なお昔のビクトリアカップはその後のエリザベス女王杯だ。
ずっと古馬の牝馬の大レースがなかったのはイギリス競馬の伝統に忠実だったからで、そもそも三冠目もフランス競馬に倣って後から出来たものなので、クラシックではない。これは伝統だけの話しかと言うとそうでもなく合理性のあることだ。
牝馬は肌馬として子出しの良い馬が求められる。つまり、戦って稼ぐことが要求されるのではなく、才能を証明して、繁殖牝馬としての価値を高めることだけに意味がある。そうなると成長力などはあまり重要でなく、大人として完成されるあるいはその手前のオークスで十分であり、せいぜい秋まで戦えばそれで十分なのだ。
それ以上走らせることはナンセンスで、馬を壊すか、子出しを悪くするかであるから、古馬になっても牝馬を走らせることは現金稼ぎの下品なことと思われていた。
社台グループの吉田善哉氏の一生の後悔は、シャダイソフィアを亡くした事であり、6歳秋にもなって(今の5歳)、56.5キロも背負わせて走らせた結果、事故で予後不良になってしまった。ソフィアの鬣を自分の棺に収めさせたといわれている。一方、理論的には最も進んでいた和田共弘はスイートナディアを早く引退させ、繁殖に励ませたし、すべての牝馬をレースで消耗させないようにしていた。
だから、ウォッカを走らせ続けたのもブエナがまだ走っているのも、本来は異常なことであるが、これは今の馬産が不況であるにもかかわらず、レース賞金は高止まりしていることの経済的帰結といえるだろう。
さて、昔話が長くなったが、予想である。
古馬にもなって走るからには、牡馬と同じようにタフでないといけない。アパパネの国枝調教師もコメントしているように、牝馬は気持ちだけで走って古馬になると気力を失う(おっとりするのは普通で、大人の女は走ることでなく性殖中心となるのが自然である)馬も多く、古馬のレースになると三歳での実績が全く通用しない馬もいる。
ということで、今回は、古馬の牡馬にもまれた経験がある牝馬が強いということで、その馬に絞りたい。
もちろん、ブエナビスタ。二番手がアパパネ。この二頭の差はかなりあると思うが、調子と人気から逆転の可能性もゼロではないが、揉まれ方の次元が違うので、やはりブエナから。単勝と馬単一点。
それ以外の馬は大きく離されていると思うが、牡馬経験で、ショウリュウムーン。ワイルドラズベリー、オウケンサクラ。これにコスモネモシン、カウアイレーン、ブロードストリートまで。これらが3着候補で、馬券の厚さはこの順番の通り。絶好調のレディアルバローザは、牡馬経験、人気から軽視したいが、牝馬は格より調子という格言もあるので、3着候補の一角としては押さる考え方もある。一着、二着順番固定の三連単で一応7点だが、パドックを見て絞りたい。