2012年06月05日

21世紀のケインズ 第二章 本当の乗数効果 

ケインズ理論というと、乗数効果だと思っている人がいる。

あるいは、意図的に、そのように捉えて、財政支出を正当化しようとしている場合がある。

乗数効果が実際にあるかどうかは、そのときの経済次第であり、長期的には財政負担が逆乗数効果をもたらすから、相殺され、長期には中立的な結果をもたらす。

この長期の中立性を強調したのが(短期にも成立するとしたのが)、新古典派的なマクロ経済学者達であり、短期の影響が中期にも残ることを強調したのが、ケインジアン(ケインズの経済学を引き継いだと思い込んでいる人々)というのが、一般的な理解であるが、ケインズ自身は乗数効果はどうでもよかった。

ケインズはケインズを慕う弟子の熱意に負けて、妥協し、乗数効果を強調することとなったのである。

一方、ケインズ自身はどこに関心があったかというと、乗数効果の過程にあった。

乗数効果の過程でどのようなことが起きているか。そもそも、どうして乗数効果が生じるのか。

これが彼の不均衡動学への関心の表れであり、経済が不均衡状態で均衡しているのを動かすことが出来る可能性はあるのか、という政策的な関心、提言へつながっているのである。

だから、いわゆるケインズ的な乗数効果やその水準には、彼は関心はなく、財政政策を正当化することにはなったが、当時は、財政政策というものは存在せず、それはいわば発明であり、政策提言としての新規性に興奮していたのであった。