ダービーというのは意外と難しいレースで、本来、すべてのホースマンが一番の目標とするレースであるから、レースとしてのレベルも最高で、また勝ち馬もサラブレッドの中で一番強い馬、ということになるはずなのだが、過去の勝ち馬を見ると、そうである馬も多いがそうでない馬もいる。そしてダービーには間に合わなかった馬の中から大物が出ることも多い。
近年ダービーが難しくなっているのには理由があり、それは、クラシックディスタンス2400の相対的重要性が低下していることが一番大きいと思われる。
さらに、馬の専門職化も進み、スプリンターとマイラーは別物であるほど、馬の能力は進歩してきている。また、調教技術の進歩と、馬の繁殖としての価値と、日本のレース賞金のバランスが悪くなり、馬のレース寿命が延びたこと(人間の都合で走らせる期間が長くなったということだが)により、ダービーの後から出てくる馬に活躍の機会が増えたこともある。
しかし、もっとも深刻なのは2400というクラシックディスタンスが重要視されなくなってきたことだろう。オークスの距離と牝馬においてはなおさらそうであるが、牡馬であっても、3000の菊花賞を蹴って2000の天皇賞に向かうことが多いし、1600万下、オープン特別の2400のレースにおける層の薄さは嘆かわしく寂しいものがある。
血統的には、マイルで強い馬を作るのがもっとも採算が取れるようになった馬産の事情から、2400というダービーを勝つことがそれほど重要でなくなってきたのだ。
これは、長期的なタフで成長力のある血統が衰退する恐れがあり、器用な馬を掛け合わせすぎて、いつの間にかひ弱な馬ばかりになってしまう恐れもある。そもそも、サラブレッドという不自然な馬を育てることは、か弱いガラスのような速い馬を作ることであるから、宿命であるという考え方もあるが、やはり、私は、底力、タフさはスピードのためにも必要であり、真に強い馬は、タフでなくてはならないと思っている。
それは、ダービー馬を予想するのは難しいが、ダービーを勝って一流馬になった後は、種馬としても大成功している馬が多いことが示している。やはり底力の重要性は残っているのだ。
今年もそのような馬が誕生することを願いたい。
現時点では、ドゥラメンテ、リアルスティール、サトノクラウンの三頭が抜けていて、三頭立てのレース。
一番の大物はドゥラメンテで、前々走が断然の1番人気だったことを考えれば、前走が人気の盲点で軽視されすぎていただけと言えるだろう。
一方、サトノクラウンは、前走一番人気であり、安定感も抜群と思われたが、大きな不利があり6着。これで今回3番人気になるようであれば、馬券としては一番の狙い目だろう。血統的にも、ラストタイクーンとミスワキは私の大好きな血統で、単なる短距離ではなくスタミナが豊富で底力のあるスピード血統と捉えた方がいい。
実は騎手で見ても、今年は三頭立てと見て良く、JRA騎手となったルメールとミルコ、という他の騎手とは格の違う二人の争いと見るのが妥当だろう。
しかし、私は福永のリアルスティール。
福永は技術的にも、勝負師的にも、欧州出身の二人に到底かなわないが、最も誠実で向上心のある騎手だ。彼は勝とうと思うのではなく、リアルスティールのすべてを出してやろうと乗るはずで、そのときに、ドゥラメンテが、実力を100%発揮できなかった場合に勝つチャンスがあるだろう。
オッズは現時点ではリアルスティールが一番人気のようだが、当日までには、かなり離れた二番人気となると思う。リアルスティールの単勝。押さえは、ドゥラメンテが圧勝した場合の、ドゥラメンテ1着の馬単。本当に抑えたければ、三頭の三連複で、他の馬の馬券は一切買わないのがいいと思う。