有馬記念は、スポーツとしての競馬としては意味がないレースだが、興行としては、世界最高のレースである。売り上げはもちろん世界最高。クリスマス後で自棄になった人々、モチ代を得るために賭ける人々、ボーナスで今年最後の夢に賭ける人、競馬はほとんどやらないが、有馬だけは毎年やる人、職場でグループでみんなでかけて、初めて馬券を買う人、そして、ギャンブラーたちも、今年の総決算、帳尻を合わせるために、最後の勝負をかける。そして、賭け金、動員人数は最高となる。JRAの最高の発明であろう。
だから、わたくしは有馬記念は嫌いであり、こんなシーズンオフに馬は可哀そうで、人間ならば先日のレアルのように、遊びでやる気なくやればいいわけだが、人間でもそういうときほどけがをするから、馬のためにはやらない方がいい。
これらの理由で、有馬記念に馬を完全に仕上げる調教師は良心的ではないが、3億円のためにはやるしかないか。金があってこその競馬で、日本の馬と競馬が議論の余地なくいまや世界一なのは、JRAによるビジネスの大成功によるものだから、受け入れるしかない。
こんな愚痴が予想に関係するのか、というとするのである。有馬は、チャンピオン決定戦ではなく、ファン投票で選ばれたオールスター戦、プロ野球と同じく余興であり、GIではなく、実質GIIのレースとして考えればよく、だから力が劣っても、展開や運、あるいは実力馬が100%発揮しないことにより、勝ってしまうことがままあるわけで、それがギャンブルとしての面白さ、祭りとしての有馬記念を盛り上げることになっているのである。
そうなのだ。今日は祭りだ。
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キタサンブラック。無印。
俺は堕落した上海の奴とは違う。
今回のレースはキタサンブラックにぴったりだ。
中山の2500.逃げ馬。またもや1枠1番。衰えていたオグリですら持ってきた祭りの天才武豊。実質GIIという低レベルの戦い。
キタサンブラックに勝ってくれ、と言わんばかりのレースとなった。
私はキタサンブラックという馬が嫌いなのではない。彼は日々成長し、春の天皇賞でもパドックは素晴らしいかったが、ジャパンカップのパドックでは惚れ惚れする馬体。雄大な馬格、かつ美しく、落ち着いた歩き。風格を備えてきた。血統も大好きで、異常な過小評価、かつ結果もまったく出せなかったジャッジアンジェルーチ。これが底力を与えており、しかも祖母の乙女心は、異様に不器用で重いジャッジ産駒にも関わらず4勝もあげており、理想的な繁殖牝馬。これに、日本が生んだスピードもスタミナも意外な成長力も備えたサクラバクシンオーが加わるという素晴らしい血統だ。
また馬主を特に嫌っているわけでもない。ほかの馬主のことが好きだとは到底言えない。
私が違和感があるのは、競馬は馬が主役、女房役の騎手、親である調教師、彼らが出てくるのは構わないが、馬主が出てくるのはやめてくれ、馬を映さずに馬主を映すテレビが大嫌いなだけで、一旦こうなってしまうと、見たい情報がほとんど見られない酷い競馬になってしまうからだ。
ただ、ケンタッキーダービーでフサイチペガサスが何十年かぶりで1番人気で勝ち、米国はオーナーがすべてを支配する社会であるから、米国テレビ中継では関口氏が大きくアップされていた。
しかし、日本は違うのだ。オーナーは大事でも、投資家は大事でも、常に縁の下、裏にいて、表に出ないのが流儀だし、それを引っ張り出すテレビは大嫌いだ。それだけのことだ。あとパドックに競馬と無関係な派手な女を呼び込む馬主達も嫌いだ。
本命はサトノダイヤモンド。穴はシュヴァルグラン。
どちらもオーナーは有名だが、テレビの取り上げ方が違うので、それは構わない。
一番強いのはダイヤモンド。間違いない。そして、ルメールがほかの軟弱なJRA騎手とは違い、だれも潰さなければ、残り1000メートルからキタサンブラックとマッチアップをして、力を振り絞るようなレースをして、彼を下そうとするだろう。それに賭けたい。
ダイヤモンドをジャパンカップに出さなかったのは理解できず、さらにそちらをスキップして有馬に出るのはもっと理解できないが、間隔を取りたいということだろうが、昔と違い、菊花賞は天皇賞の後ではなく前になったのだから、大きく不満だ。
まあ言っても仕方がないので、そのうっぷんをここで晴らしてほしい。
キタサンブラックは、ジャパンカップを圧勝し、日本でもっともレベルの高いレースだから、キタサンブラックの強さは認めざるを得ないが、ただ、やはり展開に恵まれた、というかほかの騎手が腰抜けすぎた、ということに尽きる。
彼は強いのだから、つぶしに行かなければ、自分がつぶれてしまったとしても、彼に勝たれてしまう、自分の馬が勝つ可能性がゼロになる、ということを誰も考えない、実行しない、というのがJRA病、日本病なのだ。
2着、3着でほっとして、上位人気で惨敗してファンに怒鳴られるのが嫌なら、競馬の騎手などやめてしまえ。競馬では1着がすべて、2着、3着で褒められるのは日本だけ、普通の競馬社会なら勝てるチャンスがあったのに取りに行かなかったということで首になるだろう。柳井氏に切られた経営者と同じだ。
前回の戦犯は吉田隼人。レースをする意味がない。ただ、馬の調子が悪かったかもしれない。今回は、前回の悔いもあるはずで、枠順からもそれ以外にやることはない。彼にも勝つチャンスがあるはずだし、やるしかない。
彼がやらなければルメールがやる。
したがって、さすがの甘え社会、日本、JRA、といえども、今日は違うだろう。
さらに行動経済学的にも、上海馬券王ですら陥落した、みながもうキタサンブラックで仕方がない、と思った時は逆張りをする最大のチャンス。問題はオッズがそれほど下がっていないことだが。
シュヴァルグランの福永は、やはりコラムを読む限り、永遠に勝負師としては駄目な勝負師で、騎手には向かないが、まじめに努力しているから、彼の柔軟性の完全なる欠如があっても、馬の実力はあるから、そこが障害にならなければチャンスはあるだろう。スタミナ十分。
大穴はアルバート。われらが戸崎。さすが、非JRAジョッキー。日本のライアンムーアの戸崎が、世界の戸崎になるために。スタミナ十分だから、誰もいかなければ彼こそがつぶしに行くだろう。ルメールとの首位争いも注目。
今年の有馬は例外的に注目だ。