kashiwai_BOOKS

 正直、自店が取り上げられた書籍を紹介するのは小恥ずかしく、こそばゆい。
 が、唸る文章に出くわすのは無上の喜び。
 年甲斐もなくうれしくなり、紹介したい。

 本年2月20日に出版された、光文社新書が届けられた。
 「極みのローカルグルメ旅」柏井壽著 ISBN978-4-334-03671-3 C0226  ¥840+税

 食関係の雑誌で、柏井壽氏のお名前を知って数年になる。
 勿論、田舎の蕎麦屋親爺は氏とお目もじする機会などない。
 これまで、雑誌などで京都の食と酒と町を軸に旅行者目線の洒脱な文章をかかれ、以降光文社から食・旅をテーマに何冊も出版されておられる。
 その柏井壽氏が、弊店に来店頂き、その模様をたっぷり記載して頂いた。
 いつご来店されたのか、弊店関係者はわからない。

 その弊店を紹介頂く、
  第一章4「ふらりと見つける行きつけ店ー小樽『籔半』の江戸蕎麦」
から一部抜粋すると、
 ・・・店主のこだわりとやらを押しつけられることにがまんならない。
 こだわりとは内に秘めるものであり、外に向かって公言するようなものではない。
 主人みずからの「こだわりの・・・」と言った瞬間から色褪せてしまう。
 そこでこの『籔半』。品書きを見るとかなりのこだわりがあるようだが、それを客に押しつけていないところに好感を持った。
 品書きの随所に江戸蕎麦の解説文が記載されている。 が、それを読まなければただの蕎麦。気を魅かれればつぶさに読むだろうし、興味がなければ字を追うことはしない。「こだわり」を投げかけてはいるが、それをどう受け止めるかは、客側に委ねている。
 極めて真っ当なあり方だ。・・・

 まったく、私の気持ちをそのまま表現して頂いている。
 蕎麦がお客様の前に配膳されるまで時の間に読んで頂ければいいと、ただそう思いたがって、代を継いでから品書きづくりを印刷屋に任せないで手作りでつくってきただけの話。

 ・・・こだわればこだわるほど品書きが少なくなると思い込んでいる〈似非蕎麦通〉には、きっとこの店の真価を見抜くことはできはしない。 暖かい種物の蕎麦すら認めないような輩はきっと『籔半』のメニューを見て小馬鹿にすることだろう。 何しろ天丼はもちろんのこと、カレー丼やカツ丼まで品書きにあるのだから。・・・

 よくぞ、書いて頂いて・・・

 最近のニューウェーブ蕎麦屋の、確かに技術はあっても、お客様にいらぬ緊張を強要し、蘊蓄を強要する店づくり姿勢には、ほとほと呆れはててきた。
 そこには、蕎麦屋は「お客様に育てられる」という真実への謙虚さのカケラもなく、いつから蕎麦屋はそんな偉い存在になったのか、と思ってきた。(まあ、蕎麦屋だけではないが)
 弊店のスタッフにはそんな育ち方は絶対させない、「たかが蕎麦屋、されど蕎麦屋」で生きろと常々言ってきている。

 折角だが、柏井氏の文章はとても紹介するのがこそばゆいほど弊店の蕎麦と店を紹介いただいている。
 そして・・・
 当該著書で知らされたが、柏井壽氏はなんと短い間に三度も弊店にご来店を頂いていた。
 これだから、飲食店商売はおっかない。

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 最初に召し上がって頂いたのが、↑ 「あられ蕎麦」。
 青柳貝の貝柱・小柱を熱々のソバつゆをかけて召し上がって頂く。
 蕎麦つゆに溶け出た小柱の旨味とコクと敷海苔の磯の香りの世界、淡泊にして豊穣なる味と思っているメニュー。 
 かつては、小樽の祝津(しゅくつ)海岸でも大漁だったが今は極わずかだが漁があり、近隣の後志(しりべし)エリアでは寿都(すっつ)海岸でも獲れている。
 もうすぐ、オホーツク海に面する北海道・標津(しべつ)の青柳貝の漁が開始され、札幌の中央市場に折り箱に入った青柳貝が並び、旬がきます。
 北海道で獲れても道内の飲食店はそれをメニューにせず、結果まっすぐ築地に行ってしまう。
 何が地産地消か、と。
 三月末から弊店にも入荷いたしますので、お待ちください。

 そして二度目のご来店では、弊店のはまれば泥濘的蕎麦のナンバー1メニュー

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カレー蕎麦を召し上がって頂いたと記載されておられる。
 こんなカレー蕎麦なら毎日でもいい、と言って頂きました。
 
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 そして三度目は、嬉しいことに「並粉せいろ」と日本酒。
 蕎麦屋親爺としては、せいろ、それも並粉せいろを評価していただいたのが一番嬉しい。
 
 三度も、短期間にわが町小樽に御来訪頂き、それも寿司の町・小樽で蕎麦屋にご来店いただき、その上著書で紹介を頂く・・。
 蕎麦屋冥利に尽きる思い。

 そこに行かないと味わえない食。
 その地で食べてこそ美味しさが輝くもの。
 日本中を旅して見つけ、出会った旨いものを「ローカルグルメ」と呼ぶことにし、それらの店を、その見つけ方とともに紹介していく。
 それを目的として旅に出るのもいい。
 旅の途上でふと目について食べるのもいい。
 その地の空気と一緒に食べる。
 それがローカルグルメの醍醐味である。
 最初にお断りしておきたいのは、本書はいわゆる〈食通〉の方に向けたものではないということ。
 と言って〈B級マニア〉の方向けでもない。
 日本には、まだま だ知られざる〈食〉があることに、心を動かされる方にこそお読みいただきたいと願っている。
 〈食〉をランクづけしたり、星の数で評価しようとなさる向きに はお役にたてないだろうことを、あらかじめお断りしておく。」
 上記は、同書の「はじめに」より抜粋させていただきました。

 「〈食〉をランクづけしたり、星の数で評価しようとなさる向きにはお役にたてないだろう

 この小気味いいほどの、庶民の食への理解に感謝、深謝する次第。