安保法案強行採決に対する声明

安保法案強行採決に対する声明


 2015年9月19日、参議院は安全保障関連法案を強行採決した。これは、社会運動研究者の立場から以下の点で暴挙だといわざるをえない。
 まず、安保法案の審議過程で、国会前をはじめとして全国各地で多くの抗議行動が発生した。可視的な社会運動は氷山のうち水面に出た部分と同様に、水面下にいる多くの市民の支えがなければ発生しえない。今回の抗議行動は、間違いなく今世紀に入ってからの日本で最大規模のものであり、その広がりの大きさに見合った形で、政治は応答する責任がある。しかし政府与党は、抗議行動の盛り上がりを恐れて連休前に強行採決するという姑息な方法をとった。
 次に、安保法案に対する反対運動は、他のイシューと比較して別格といってもよいくらいの動員水準に達している。これは、「平和国家」というアイデンティティが、日本にいかに深く根付いているかを示すものである。それに対して政府与党は、自ら喧伝する積極的平和主義の意義も法案の意義も、何ら説得的に議論できなかった。その挙句が、議会での数を恃みにした強行採決である。社会運動が要請する民主主義的な手続きをなきものにし、社会全体に根を張った平和主義を覆す点で、政府与党が無血クーデターをはかったと言われても仕方ない。
 さらに、反対運動の盛り上がりを「既成勢力の動員」や「一過性の現象」としてみるのは誤りである。日本に新たな運動文化が芽生える状況として、ここ数年の一連の動きを捉える必要がある。これは、代議制民主主義が見過ごしてきた問題を市民社会の側から提起し、政治を活性化する点で大きな意味を持つ。それに対する政府与党の反応は、ひたすら回路を閉ざし、議会という制度に守られた特権にしがみつくものでしかなかった。このように、政治と市民社会の関係を再構築する機会を放棄することで、政治全体の正統性を損ねた政府与党の責任は重い。
 我々は上記の事態を招いた政府与党に対して抗議するとともに、今後必要な対応として以下の2点を実行するよう要請する。

1.戦後70年を経て今なお、日本では平和国家というアイデンティティが強固に保たれている一方で、安保法案の説明はそれに応えるものではなかった。そうした反省の上に、政府は法律の施行を停止して必要な政策を論議し直すこと。

2.政府与党は、反対運動を市民社会からの政治的働きかけとして尊重し、直接対話する機会を手厚く設けること。また、現に作られつつある運動文化を危険視するのではなく、その声を政治に生かすよう取り組むこと。

2015年9月20日 社会運動論研究会

賛同者(アルファベット順、2015年9月27日現在)
原田峻(立教大学)
橋本みゆき(立教大学)
早川洋行(名古屋学院大学)
林大造(神戸大学)
樋口直人(徳島大学)
平山満紀(明治大学)
稲葉奈々子(上智大学)
清原悠(東京大学大学院)
町村敬志(一橋大学)
丸山真央(滋賀県立大学)
松原弘子(大阪経済法科大学)
松谷満(中京大学)
中澤秀雄(中央大学)
奈良本英佑(日本中東学会)
大畑裕嗣(明治大学)
成元哲(中京大学)
鈴木江理子(国士舘大学)
鈴木努(東北学院大学)
高木竜輔(いわき明星大学)
眞幸(岡山大学)
竹中健(広島国際学院大学)
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