毎回毎回ネタバレがあるということを事前に知らせるのが面倒なので、これからはそれがあることを前提に感想を書いていこうと思います。以後、ご了承ください。
はい、また桜庭一樹です。実は最近この作家さんの本を四冊くらいまとめて買ったので、次に書く感想もこの人の本になると思います。さて、この小説は、とにかく人並み外れて美しい七竈という十七歳の少女とその周りの大人たちを描いた物語なのですが、この本を読んで桜庭一樹は色々な書き方が出来る非常に筆力のある作家なのだと、改めて実感しました。舞台は平成の世の中、つまりは現代ですが、文章の雰囲気はどことなく昭和を感じさせます(と言ってもぼくは平成生まれですが……)。特に主人公の七竈の喋り口調は戦前戦後の時代の女性と言った感じで、普段見るアニメや漫画のキャラクターとは異なり新鮮味を感じました。そういえば教科書の文学作品に出てくる女性もこんな感じだなー、とか思い出しました。
読み終えて感じたのですが、この作家さんは本来ライトノベルを書くような人ではない気がしました。やはりこのように地力のある作家さんは純文学の世界でこそ生きると思います(と、文学をあまり読まない奴が偉そうに言ってみる)。どこかのインタビュー記事に書かれていたのですが、桜庭一樹さんの中では「GOSICK」とそれ以外の小説、という風に仕事が分かれているそうです。微妙に違うことを言っていたかもしれませんが、GOSICKは純粋なエンターテイメントとして書いているそうで、そのジャンルだと人の感情の深い部分を書き貫くことが難しい、とのことです。確かにそう言われてみると、GOSICKは分かりやすく”ライトノベル”と言った感じで、登場人物も、『人』というよりは『キャラクター』と表現した方がしっくりきます。中高生が対象のライトノベルでは、読者が読みやすいようにキャラクターもある程度分かりやすく描写する必要があり、そう言った点から、キャラクターの心情を深く複雑に書くことはやはり困難になるのでしょう。つまり、桜庭一樹という小説家のことを本当に知るためにはGOSICK以外の小説も手に取る必要があるということです。というわけで皆さん、桜庭先生の著作をぜひよろしくお願いします!(なぜ宣伝をしているのだろう)
話が逸れました。作品の話に戻ります。僕が感じたこの小説のテーマは、大人になるということの意味、でした。主人公の七竈は十七歳の少女でとても美しいのですが、彼女の周りには年をとって醜くなったという女の人が数多く登場します。そしてその中には、若かった頃は彼女と同じように綺麗だった女性もいます。年齢を重ねるにつれてその美貌を失っていき、そして同時に心も廃れていった彼女たちの姿がこの作品では過剰なまでに描かれていると感じました。女性の人物だけに限らず、この小説には他にも年をとって衰えていった人々が多く登場します。七竈の親友に、雪風という七竈を男にしたようなこれまた人並み外れた美少年がいます。そしてこの少年の父親もやはり若い頃は雪風のような美貌をもっていました。ですが、結婚し年をとった彼はかつての美しさを失い、妻からは役立たずの馬鹿呼ばわりされる有様です。この作品では、このような大人たちを七竈や雪風といった若く異常なまでに美しい人物と対比させることによって、年をとることの残酷さを強調しています。
というかぼくってあんまり長い文章書けないですね。まだ書くことはあるような気がするのですが、正直もうこれ以上考えられないです。まあでも細かい部分に手を出すとキリがない、というのもありますよね。ほら、なにせ桜庭先生の小説だし。とてもとてもすべてを書き表すなんて……すいません、言い訳です。
しかしながら最後にもう一つだけ書かせてもらうと、七竈という女の子は僕の中でかなりポイント高かったです。残念な趣味を持つ美少女、という今となっては王道になってしまった萌えの設定がしっかりと生きていましたね。七竈の趣味は鉄道なのです。鉄道を馬鹿にされてむきになる七竈はとても可愛いですよ。先述した通り、七竈は昭和風の女の子ですからね。そのアンバランスさがなんとも言えない味わいを醸し出しています。七竈を愛でたい、と思った皆さんはぜひこの作品手に取ってみてくださいね!
……なんだこの締めくくり方。