今日はいよいよ待ちに待った、全日本ナントカ対抗ナントカ発表会の日。俺は、我がチームのリーダーとして、中身は良く分かっていないながらも、皆を纏めて素晴らしい発表を行い、できることなら全国の強豪チームを抑え上位に食い込みたいと考えている。

準備は万全の筈だ。俺は何もしてないが、チームのトンガリ女子や地味女子たちが、何日も、寝る間も惜しんで準備をしてきた。彼女らが積み上げた山の上に、ちょんとサクランボを乗せて世界へ向けて華々しく発表する、それが今日の俺の役回りだ。

チーム控室で、早速、地味女子が俺に発表内容の説明を始めた。
発表は二部構成、前半のイントロダクションはこれ、とパソコンにCDみたいやつを入れて、こうこうと説明する。うむ、さすが女子軍団の血と汗の結晶、まずまずの内容だ。

「で、後半は?」
「もう少しで完成するから、ちょい待ってて」

そう言ってすっ飛んでいった。
後半の発表内容は、前半で提起された論点を、あっと驚くどんでん返しを交えた後で鮮やかに解決するストーリーで、特に重要な筈だ。
時間ギリギリまで内容を推敲するつもりだな。OK、あとはすべてを彼女に任せておけば間違いない。

俺はすっかり安心して、その他大勢の努力しない系女子やダメ男子らと、菓子を食べたり、トランプをしたり、寝転がったりした。彼らは、裏方の仕事はあるが、重要な役割もなく気楽なものだ。主役である俺の応援のためだけに来ている者も多い。俺は気分がよく、彼らに囲まれて控室での時間を楽しく過ごした。

...ん? 今、何時だ??

そういえば地味女子はすっ飛んでいったが、一体何処で作業をしているのか?

「後半の発表内容って、そろそろ出来んとやばくね?」

殆どの者は地味女子が何処にいるのか分かっていない様子で顔を見合わせたが、唯、トンガリ女子は心当たりがある様で、何かを言い置いて部屋から出て行った。
しばらくするとトンガリがCDを持って控室に駆け戻って来た。
真っすぐ俺のところに来て「後半出来たよ!」とCDを差出した。
俺は努めて冷静にそれを受け取り、速やかにパソコンにセットした。皆がかたずをのんで見守る中、画面に映し出されたのは、どう見てもゲームのパックマンのオープニング画面だった。えっ?と驚いて皆と顔を見合わせた。「あっパックマンや」と遠くでダメ男子。

...地味女子一流のジョーク? な、訳ないよね? ゲームと発表のCD取り違えた?

トンガリに向かって何か言おうとした時、突然「オッハヨゥ〜〜」と地の底からダミ声が響いて、その瞬間にすべてが消えてしまった。そして目が覚めた。

じいちゃんは用も無いのに日曜の朝に人の家に来て大声で叫ぶ。
いい所で夢が台無しだ。
今日という今日は、腹が立った。