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HELL ~地獄の歩き方(タイランド編)

洋泉社の雨宮さん(@IAmemiya)より献本いただきました。ありがとうございます。

ごぞんじ都築響一さんの新刊。タイの「地獄」を取材した写真集です。

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…とまあ、こういう「地獄」の写真と解説がもりだくさん。これ、なにかというとタイの寺院にある地獄庭園なんだそうだ。つまり「生きている間に悪いことをすると、こういうふうに地獄でつらい目にあうよ!」というごくまじめな目的で作られた啓蒙装置。

ほんとか?作ってるうちにおもしろくなっちゃってない?

たぶん、そういうまじめさとエンターテイメント性って両立するんでしょうね。まあ、とにかく観光ガイドにも載っていない地獄庭園を探しだして取材調査したすばらしい本だ。

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目次。こんなにあるのか!地獄庭園!

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さいしょはどれもいっしょに見えるんだけど、読み返していくとだんだんそれぞれのコンセプトというか造形の特徴というか、見分けがついてくる。この選球眼は今後どこに活かせばよいのでしょうか。

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見ればわかるように、これらの造形物は、デザイン施工のプロが作ったものではない。だからこそ生々しくて怖い。きっとリアル地獄もそういうプロによって作られたものじゃないんだろう。

むかしから多くの人によって指摘・研究されていることだけど、ほんとにどうしてセックスとタナトスはごっちゃになるんでしょうね。ふしぎだ。

そして、素人仕事のせいだろうか、怖いんだけど、ずっと見てると思わず笑いたくなるコミカルさがある。死と笑いがとなりあわせ、っていうのも古くからいわれていること。いや、そういう話じゃないか?

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↑メンテナンスされない朽ちかけたやつがいちばん怖い。人間のコントロールを外れちゃったときにこそ、笑えない恐怖が醸し出されるのかもね。


とまあ、思うことはいろいろある。ぼくがいちばん興味深かったのは、「天国」があまりないこと。い因果応報によって悪しき行いを戒めるのであれば、「悪いことをするとこんなにつらいことが待ってるよ」と同時に「良いことするとこんなにすてきなことが待ってるよ!」も表現すべき気がするけど。
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↑かろうじて見られた「天国」のアトラクションのひとつが、これ。美女が実る樹。

キリスト教でもそうだけど、地獄におけるあの手この手のつらいことには、たくさんのバリエーションがあるが、天国になるととたんに歯切れが悪い。なんかびみょうにほんわかしてて、うまい食べ物と美女と妙なる音楽が…って。それはほんとに天国か?たいくつしそう。

人間の想像力ってつらい方面にはよく働くようにできてるのかな、とこの本を見ていて思った。だからいつまでたっても悪いことするんじゃないのか、人間は。いま我々に必要なのは、天国の想像力だ。たぶん。


ともあれ、本では満足できずに、実際に見に行ってみたくなる、という写真集としてもっともすばらしい性質を備えた怪著。編集の雨宮さんも"地獄へ行く際にはぜひ携えておきたい"


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(↑献本いただいた際に同封されていた紹介の一文)

と言っています。(じつは雨宮さんは拙著「共食いキャラの本」と「高架下建築」の編集さんでもあります)

「地元タイ人にとっても下品なB級スポットとして受け止められている」というこれら地獄庭園。しかし都築さんは「インテレクチュアルなひとたちがいちばん忌み嫌う足下の泥水に、その国のいちばん純粋な文化の形が凝縮している」と。

あと、おもしろいのは、ネット上にこれら地獄庭園を紹介したサイトはいくつかあるんだけど、なぜか日本のサイトがいちばん充実してるんだって!いやほんと、日本のそういうサイト文化は誇りだと思うよ、まじで。団地のサイトとかな!