あれはいったいなんだったのか。2007年の「ドボク本ブーム」のことだ。同年にぼくが石井さんと出したのが『工場萌え』、萩原さんが出したのが『ダム』、そしてぼくの『ジャンクション』。狙ったわけではなく、偶然なのだけどみんなこの年に。
というか、もう5年前かー。ということでこの5年を節目に、萩原さんの『ダム』とぼくの工場写真を文庫化しました!
■『工場』 (文庫ダ・ヴィンチ)
■『ダム』 (文庫ダ・ヴィンチ)
考えてみれば、例えば今年社会人になった方々は2007年にはまだ高校生だったわけだ。ここらへんでもういちど手に取りやすい形で出すのもいいかなー、と。萩原さんの『ダム』は2007年のオリジナル版に大幅に追加して(5年も経てば追加したい写真がたくさんたまるってものだ!)の文庫化。そしてぼくの『工場』のほうは今回商業初出の写真だ。たとえばこういう写真が収められてますよ↓
とまあ、こういう感じ。
で、今回の文庫化には個人的に思うところがありまして。ひとつは、これまでいろいろ工場みんなで巡ったりテレビや旅行会社や自治体の仕事したりして分かったのは、「工場萌え」はツアーなのだ、ということ。どういうことかというと「写真集」とは銘打っても、これらの本やあるいはネット上の写真を見て満足することはない。みんな現場に見に行きたい、ということ。なので今回の文庫化では「ここに行ったら素敵な工場を見ることができるよ」というページを各章に入れた。文庫なので、これ片手に現場に行って欲しい、という意味だ。
いずれはアプリとか作りたいね。工場ナビ。
で、もうひとつは冒頭に書いた「2007年はなんだったのか」というのをちゃんと考えてみたい、と思ったこと。これは本書で「工場萌え概論」としてページを割きました。
これ、結局いしたにさんと書いた『楽しいみんなの写真』につながっていくんだけど、2000年前後のドボク個人サイトを普通に見ていた世代が、2007年に仕事の第一線で働くようになって、ぼくらの写真がマスメディアに飛び出し(たとえば『工場萌え』や『ダム』の編集さんたちはいずれもぼくらと同世代だ)、そこへmixiから始まるSNSの台頭によってこれがさらに「ツアー化」したということなんだな。ドボク的な楽しみはすべてネット発なので、この広がり方を追うことは個人サイト〜SNSの文化の移り変わりを振り返ることになるのだと思う。
…とまあ、当事者の一人としていろいろ考えるところはありますが、この一冊は、ぜひ初めての方々に手にとってもらいたい。そしてこれ片手に工場見に行ってもらいたいなー、と。そういう本です。