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先日久しぶりにイベント行った「団地団」(お客さんの実況・感想のまとめ→2013/6/10「団地団夜シーズン3 初夏の団地団〜円山からクロユリまで」)。ここのところ団地映画が目白押しで、そのうちのふたつ、中田秀夫監督のホラー「クロユリ団地」と宮藤官九郎監督の「中学生円山」における団地の意味合いなどをいつものようにああでもないこうでもないとお話ししました。

いやー、おもしろかった。「クロユリ団地」のほうに関して言えば、劇中の団地の描かれ方は、戦後の家族の崩壊の象徴として見るととても示唆的だとぼくは思ったんだけど、一方佐藤大さんからはアイドル映画の変遷の最先端として見ると…、という分析があって、ほんとうにエキサイティングなトークでした。

で、われわれ団地団の第1回目から4回目までの内容をまとめたその名も『団地団 〜ベランダから見渡す映画論〜』にもコラムとして書いた「マンションポエム」に関連してすごい本があったので、その紹介をしたい。
マンションポエムとは、分譲マンションの広告におけるコピーのこと。その名調子はすでに物件のスペック紹介ではなく、その立地が実現するであろう暮らしのイメージだけを謳うものになってて、それをポエムと呼んでいるわけです。たとえば

FROM 神楽坂
東京を掌る
すべての時は、
ここからはじまる。


とか(これは三菱地所レジデンスのパークハウス牛込神楽坂のポエム。前書にも登場してます)。みなさんどこかで一度は目にしたことがあるだろう。(参考→Togetter:「【マンションポエム】 - 今ここに堂々のなんとかかんとか」)

これの何がおもしろいかというと(何がっていうか、まあ、そのポエムっぷりがおもしろいんだけど)、これ「団地とマンションは何が違うのか」を端的に表している点だ。ぼくはいつも団地とマンションの違いを、前者はインフラだけど後者は商品、と説明しているんだけど、マンションのその商品性がこのポエムに現れているのだ。

団地ときたら、ポエムはもちろん、ネーミングからして「○○一丁目団地」とかだもの。ポピュラーミュージックの「キミがいた街」とか的なタイトルに対する「交響曲第3番」みたいなこの堅実さ。

ただ、団地もタイトル的には80年代から商品たろうとしている節があって↓
江東区団地完成年月
これ、江東区のUR(旧公団)の団地の名前を、建設年月日で並べたもの。それまで質実剛健な「○○団地」「○○住宅」だったのが1979年の暮れ「東陽パークサイドハイツ」から急にカタカナ化する。さらに90年代以降は「ヴ」とか使いだし、「地名+住宅を意味する言葉」だった順番が逆になる(「木場三丁目パークハイツ」→「ヴェッセル木場南」というように)。

ちなみにこれは全国的なもので、大阪市の団地の名前でも同じ↓
name01


こういう興味の元、マンションの広告をここ3年ほどずっと集めているんだけど、先日@michiteaさんから「こんなものがありました!」と教えてもらったのが『ハウジングフライヤー』という本。冒頭の書影がそれ。早速買った。すごかった。こんな感じ↓

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出版社の PIE BOOKS はデザイン書籍を中心に出しているところみたいなので、こういうポエムが綴られたチラシやポスターをデザインする製作会社のための資料集なのだろう。ぼくのような好事家のためのものではなくて。他にもアルファ企画というところが『ハウジング アドグラフィックス』という同じ種類のものを出している。こうやってポエムは関係者によって反復され磨かれていくものなのだなあ、と思った。磨くかー。磨いちゃうかー。

今回入手したのは古書で、主に2005年の各ディベロッパーのポエムを載せている。上の写真のように、いまとあまり変わらない詩たちだが、ぼくのいままでの観察から言うと、震災以降は免震をポエム調でアピールする物件もあって(「安らぎの免震。」とか)、時代と立地によって微妙に変化している。今後も集め続けたい。

マンションは商品、とさっき書いたけど、もはや間取りや設備が「商品」として差別化できなくなった住宅市場においては、土地に物語を付与し、それをもってまわった大げさな言いまわしで語るしかない。だから上の写真にもあったようにやたら江戸時代の古地図があらわれて、そこからその土地がいかに由緒正しいかを謳う例が多い。

どのように暮らすか、どの収入階層に属しているか、どのような価値観を持っているか、などはすべて「どこの街で暮らすか」の問題にすり替えられている(ように見える)。価値観(とそれを支える収入)は最寄り駅が笹塚かあるいは東大島かの選択に現れている。少なくとも広告上では。

というように、興味の尽きないマンションポエムなわけですが、先日の写真展トークショーに石川さん(@hajimebs)がきてくれて、とてもおもしろいことを言っていた。それは、ここまで書いたような「マンションポエムが何を表しているか」もおもしろいけど、逆に「マンションポエムが何を隠しているか」を考えるべきではないか、というのだ。

なるほど!さっき「もはや間取りや設備が「商品」として差別化できなくなった」と書いたが、マンションを物理的に形作っているのはもはやデザインではなく、法律・規制なので(これについては『超合法建築図鑑』を激しくお勧めする。これほんと読むべき!)、建築物としての実態は、価値観やライフスタイルのデザイン的実現とは言い難い。そこでその齟齬を隠蔽すべく動員されるのがこれらポエムなのではないか、ということだ。

ということで、こんな本も買っちゃったし、とりあえず各ポエムをそのマンションの所在地でマッピングし、年代に分けてまとめてみようと思う。おもしろそう。