きたる2016年5月20日(金)〜7月4日(月)、品川のキャノンギャラリーで宮本隆司さんの写真展『九龍城砦』がありますよ! これは必見だ。

m

いわずと知れた、かつて香港にあった九龍城。ぼくが興味を持ったときにはすでに取り壊しが始まっており、ついに訪れることができなかった。晴海高層アパートとならんで「見ることができなくてものすごく残念物件」だ。ほんとうに残念。

宮本隆司さんの写真集『九龍城砦』は学生時代何度も見返した。今回プリントを見ることができるのがとても楽しみ。

実は20年前、研究室に宮本さんをお招きしたことがあって、そのとき下の製鉄所の写真を見てもらったことがある。
8539360304_72abff08fa_k

8539361248_66b632c44f_k


この写真に対して当時ぼくには学生らしい無根拠な自信があって、宮本さんもそれなりにほめてくれるだろうと思った。そうしたら宮本さんは写真については何も言わななかった。

そのかわりこう言ってくれた。「きみは撮り続けなければならない」と。今でもすごくよく覚えている。

つまりほそぼそと末席ながらぼくがいまフォトグラファーなどと名乗っていられるのは、宮本さんのおかげだ。

そういえば同じ時期、別の写真家さんに同じ写真を見せたら「キミはさー、写真学校に行ってるわけじゃないんでしょ? だったら写真家とか無理無理(*ちなみに写真家になりたいなんて一言も言ってない)。そんなことよりサラリーマンになってぼくに仕事ちょうだいよー」って真顔で言われた。誰とは言いませんが。当時ほんとうにむかついたけど、今思えばあの一言も良いアドバイスだったと今は思います。ぜったいそういうつもりで言ったんじゃないと思うけど。

さて、九龍城跡地は公園になったと聞いていて「ま、機会があったら見に行くか」ぐらいにしか思っていなかったんだけど、過日行ってみたらすごく面白かった。もっとはやく行くべきだった。デイリーポータルZで「香港のすごい団地商店街と九龍城跡」というタイトルでそのときのレポートを書いた。

いちばんびっくりしたのは、この公園に在りし日の九龍城の模型と断面図が置かれていたこと。

041

なににびっくりしたかというと、この断面図『大図解九龍城』(九龍城探検隊 (著, 写真), 可児 弘明 (監修), 寺澤 一美 (イラスト) /岩波書店)に収められている図だからだ。こちも学生時代食い入るように読んだので一目でわかった。

038

039
↑この圧倒的な絵!

「九龍城好き」の日本人が描いたものが現地に記録としておかれる、ってなんだかすごい。そういえばこの頃、他にも九龍城関係の本が相次いで出版され、「クーロンズ・ゲート」というゲームもあった。そのためだけにプレステを買った。それぐらい入れ込んでた。思えばぼくの「工場萌え」の原点は会えなかった九龍城かもしれない。

で、この記事を書いた後、一通のメールをいただいた。なんとこの『大図解九龍城』をまとめた九龍城探検隊の鈴木隆行さんの娘さんからだった。

そこには、この記事を読んで、文中ぼくがこの本を「宝物」だと書いたことに感動した、とあった。残念ながらお父様はすでに亡くなっていらっしゃるとのこと。「父も大変喜んでいると思います」の一言に目頭が熱くなった。

「この本は父が生涯の中で一番思い入れを持って制作したもの」とのこと。DNAを受け継いだという意味ではぼくもまた鈴木隆行さんの子どもと言えるだろう。現在の日本のカルチャーの原点に『大図解九龍城』があると思う。お会いしたかった。残念。

なにが言いたいのかというと、宮本さんの写真展必見だぜ、ということと現在絶版の『大図解九龍城』の再版を強く希望する! ということと、もしかしたら若い誰かがどこかでぼくの影響を受けているかもしれない、ということだ。

そういう人に会ったときはちゃんと接しなければならないな、と背筋を伸ばした次第だ。そしてもしその人が写真を撮ってたら、ぼくも言おうと思う。「きみは撮り続けなければならない」と。