「住宅都市整理公団」別棟

ここは団地マニアのためのウェブサイト「住宅都市整公団」の総裁のblogです。団地だけじゃなくて工場やジャンクションや高架下建築や。

読んだ本

団地を通じて事件を知る。ちょっとだけ。「郊外少年マリク」




パリ同時多発テロ事件についてどう考えていいのか分からない。みんなのSNSアイコンがトリコロール調に変わっていくのをぼんやりと眺めるだけ。そういうぼくと同じ仲間にお勧めしたいのが『郊外少年マリク』だ。ぼくのサイトを訪れるような人であれば必ず楽しめる。なんせ、団地の物語だから。

あ、今回の事件と無関係にすばらしい作品です。なんというかこういう事件と絡めた勧められ方すると気がそがれるかもしれないけど、ほんとうにいい本です。軽口と悪口雑言がテンポよく並べられつつ、ジョークにあふれた一人称の物語。でも、主人公を取り巻く環境はかなりヘビー。読みながらまさしく「泣き笑い」」する。そういう本。

主人公はフランス郊外(バンリュー)の団地(シテ)に住んでいる。移民が多く暮らす低所得者むけの集合住宅だ。母親と二人で暮らすマリクはアルジェリア系フランス人。

今回のテロ事件の容疑者の一人はパリ郊外の移民が多く住んでいる公営団地に住んでいたというニュースもあり、今読むとマリクとの共通点をいやでも連想してしまうが、この本が日本で出版されたのは3年前。

一方で、物語の中では2005年のパリ郊外暴動事件も登場する。サルコジ内相が団地で「社会のクズ」と呼んだあれだ。つまり、パリ郊外の団地はそういう場所としてあり、これらの事件は地続きなのだ。続きを読む

ハインライン『銀河市民』を読み直した

明けましておめでとうございます。みなさんどのような年越しでしたでしょうか。ぼくは年末年始熱でぐんにゃりと寝込んでいました。

睡眠の合間あいまに読んだのがハイラインの名作『銀河市民』。ジュヴナイルという位置づけということもありとても読みやすい。でもさすがハインライン! という傑作なので、読んだことない方はぜひ。SF好きじゃない人にお勧めです。続きを読む

ある重要なデータだけが載っていない!〜 CanCam2014年10月号『私って、どのくらい"平均"ですか!?』

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東京エスカレーター」の田村さんから「今月号のCanCamがすごいよ!」と教えられて、買ってみた。たしかにこれはすごい!特集が『私って、どのくらい"平均"ですか!?』なのだ。

いまや「いかに目立たず埋没するか」に腐心する時代なのか!ぼくの理解では、ファッション誌って「いかに個性的になるか」の指南書だと思っていたのでこれにはびっくりだ。続きを読む

「保存」ってすごく動的なものなんだな、という話〜「データを紡いで社会につなぐ」を読んで〜

ヒロシマアーカイブ」や「ナガサキアーカイブ」、「東日本大震災アーカイブ」などのすばらしい作品ですっかり有名人の渡邉さんによる一冊。タイトル通り、それぞれの出来事に関する大量のデータをどのような考えと手法で「紡ぎ」、発表してきたのか、ということが書かれている。

それぞれのアーカイブ作品はリンク先を見ていただき、この本のまっとうなレビューは他の論者のものを見ていただくとしよう(ググれば書評がたくさん出てくる)。ぼくはこの本を読んであらためて思った「渡邉さんっておもしろい人だよなあ」って話を書きたいと思う。面白い人だよあの人。

■巻き込まれた人続きを読む

どうかみなさん「炎上」恐れずフィールドワークを!〜『東京人』 2014年 05月号がすばらしい〜



雑誌「東京人」の今月号がすばらしい。これはみなさんにぜひ読んでもらいたい。月並みな言い方だが、永久保存版だよこれ。
『東京人』 2014年 05月号
●特集「フィールドワーカーになる」発見、観察、採集
  • 武富恭美「東京ピクニッククラブ」
  • 皆川典久「東京スリバチ学会」
  • 飯間浩明「ワードハンティング」
  • 坂口恭平「モバイルハウス」
  • 林雄司「東京スケール」
  • 山口晃「箱庭」
  • 大竹誠「ガード下学会」
  • 都築響一「TOKYO STYLE」
  • 高野公三子「定点観測アクロス」
  • 黒石いずみ「今和次郎・考現学」
  • 中野純「闇」
  • 加藤文俊「大学で学ぶフィールドワークの極意」
  • 尾崎憲一「大散歩時代の到来」
  • 大山顕「SNS「炎上」時代の路上観察」
  • 座談会・「野良仕事のすすめ、無用の用が面白い」藤森照信×中谷礼仁×石川初

今和次郎〜路上観察学会からそれ以降、現在活躍するフィールドワーカーたちを集めている。これはすごい。そうそうたるメンバーだ。続きを読む

実在しない街を散歩することができる〜「みんなの空想地図」がすごい〜

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世の中には「架空地図」という趣味があることは前々から知っていた。以前NHKの「熱中時間」のレギュラーを務めていたときにお会いして感動したのが「北部急行電鉄」の方で、この架空鉄道趣味(これも歴史ある趣味だ)を通じて知ったのだ。

そして「空想都市へ行こう!」の"地理人"こと今和泉隆行さんにお会いしたのが、ニフティのカルチャーカルチャーで定期的に行っているイベント「マッピングナイト」の第3回目だった。石川初( @hajimebs )さん、渡邉英徳( @hwtnv )さんと3人でやっている文字通り「マッピング」をテーマにしたこのイベントを見に来てくれたのだった。イベント終了後、彼が作っている架空の都市「中村市」の地図をプリントアウトしたものを見せてもらったのだが、これがほんとうにすごかった。舞台に広げ、ほかのお客さん交えみんなでしばし見入ったものだ。

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セーラさんはバックヤード化した屋上で

「屋上バレー」は何になった?以来、ビルの屋上が気になってます。実際の屋上もそうだけど、映画やマンガに出てくる屋上もいろいろ探してて(屋上シーンがある作品知っている方がいたら教えてください)、そういえば、とちょっと変わった屋上を思い出した。

みんな大好き「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の13巻の91ページに見事な「バックヤード化した屋上」が出てくるのだ。

これが重要なシーンでして

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テクノロジーを発達させていくさまは、青春と見分けがつかない



先日のエントリを八谷さんに読んでいただけたようです。で、気づいたことが。当該タイトルはクラークの三法則のひとつ「充分に発達したテクノロジーは、魔法と見分けが付かない」のもじりなわけだが、どうして見分けがつかないのか。

昨年の八谷さんの展示や本を読んで思ったのは「テクノロジーを発達させていくところを見ると、魔法には見えない」ということだった。飛行機作るのがこんなにたいへんだとは!いやたいへんだろうなとは思うけど、こうやって見るまではなかなか実感できないよねえ。

魔法が魔法たるゆえんは「どうしてそういう結果になるのか」というプロセスをすっ飛ばしている点にある。クラークが言う「充分に発達したテクノロジー」はもたらされる結果のすごさじゃなくて「どうしてこのようになるのか」を意識しなくても使えるようになっている、ということを意味しているのだと思う。因果関係という思考そのものが科学なわけです。

これはテクノロジーだけに限らず、例えばチック・コリアのプレイ見てると魔法に見える。それは彼が子供の頃からどれだけピアノ練習したきたかを人に見せないから。絵やダンスもそうだ。

ぼくが昔音楽を少し勉強した動機は「この曲はなんですばらしいのか」を分析したいからだった。世の中にはそういう「どうしてこうなった」を知るのは興ざめだと思っている人がいるようですが、ぼくは種明かしは感動を増すことがあっても減じることはないと思う。それは八谷さんの「ナウシカの飛行具、作ってみた 発想・制作・離陸---- メーヴェが飛ぶまでの10年間」を読むとほんとうにそうだとあらためて思う。

それにしても(たいへんなことがたくさんあったとは思いますが)八谷さん楽しそう!「テクノロジーを発達させていくさまは、青春と見分けがつかない」って感じ。
 
 
tw fc
カモ
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ぼくが出した本たち↓
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名団地たちをペーパークラフトにしました。
門外不出の旧公団による古い団地写真も多数!
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