2007年02月02日

●1−17 −まぶしさ


「、、も、もっ、もう卒業されてから、もう何年になりますか、、、そのあと、お見えにならなかったので


とても残念に思っていたのです。 ほ、本当です。」と石田は二人に向ってかろうじて言えたのだ。


石田は当時、電気関係の専門学校生であった。


昼間は学校だったが、夕方からこの喫茶店「ウァ」でアルバイトをしていたのである。


そのころ、この喫茶店をよく利用していたのがW大学の人たちであった。


石田がバイトを始める時間帯からがテニス部の練習が終わり、集まる頃なのである。


店のお客の中でテニス部の男女は石田にとってファッショナブルでまぶしかった。


その人たちの中でも優子は一人際立って美しかった。


ときにはテニスのユニフォーム姿で店に来ることがあり、その優子の容姿が石田を悩ました。


石田にとってこの喫茶店で働く意味はいつしか優子に会えるということと同じ意味になっていっ


た。


田舎では人なつっこい性格だったのに、東京に出て好きな人の前に出るといつのまにか人見知り


をしたりはにかんだりしている。


そんな自分自身をまどろっこしいと感じていた。


優子たちの前で飲み物をサービスしている自分が「あがっている」状態になるのだ。


石田にとって優子は忘れがたい女性になった。


いつしか告白したいと思っていた。


しかし優子たちを前にするとその気持ちを素直に表すことができない。


想えば想うほど切なくなってくる。


気持が増すほどに感情の押さえが利かなくなってくる。


しかし現実には優子の前でそらぞらしい態度をしてしまう自分自身に腹が立った。


しかし石田にとってそれが唯一、恋焦がれる人に対しての自分のとりえる表現方法だったのであ


る。


また喫茶店に訪れるテニス部の人たちの中で優子が一人になることは稀だったから{ なかなかチ


ャンスがこない }という言い訳をして、自分自身の勇気のなさを慰めるのだった。


それにもし石田の告白に対して、優子に拒否されでもしたらと想像するだけで怖い。


優子が訪れた日は石田の心が躍りだす。


来ない日はまだかまだかと待ちわびる。


こんな切ない日々を過ごしているうちにいつしか告白する機会をなくしてしまっていた。


そしていつしか優子はこの店に来なくなってしまった。


あまりにも単純なことに石田は気づいていなかったのである。


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