2010年11月13日

「マリアビートル」伊坂幸太郎

マリアビートル
マリアビートル
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これこれ!こういうのが読みたかった!という、久々の伊坂さんらしいお話でした。おもしろかったー。「グラスホッパー」の後の物語のようで、かなり絡んでるんで、「グラスホッパー」を読んでからのほうが楽しいだろうなと思います。あの事件のことや、登場人物たちも登場します。そういうリンクもうれしかったけれど、物語自体もおもしろい。いいキャラもたくさん出てきました。というか、これだけ殺し屋が出てきてそれなりにそういうシーンもあるのに、おもしろいってすごいですね・・。

内容(「BOOK」データベースより)
元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線“はやて”に乗り込む。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み―物騒な奴らが再びやって来た。『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲。3年ぶりの書き下ろし長編。


東北新幹線「はやて」に乗り合わせた殺し屋たち。「蜜柑」と「檸檬」はある大物の息子を13人殺害のうえ救出して息子とスーツケースを送り届ける途中。「七尾」はそのスーツケースを奪おうとしている。そこに乗りあわせた狡猾な中学生「王子」。3つの物語が同時に進んでいきます。そしてその3者が絡み合って、そして「グラスホッパー」に出てきた押し屋のあさがおの章まで登場して、いったいどんなふうに絡んで収束するんだろうと、期待は高まりました。ちりばめられた伏線、どたばたとコミカルに進む物語、そして発せられる「なぜ人を殺してはいけないの?」というセリフ。どれも伊坂さんらしくて、こういう伊坂さんらしさがあるものが読みたかったとしみじみ思いました。

思いがけずスズメバチの正体がわかったし、鈴木くんも登場しました。彼の口から聞く「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いに対する答えは、彼が巻き込まれたことがわかっているだけに、ずっしりとしたもののがありました。ここで鈴木くんにそれを言わせるってすごいです。そして最後に活躍したのがまさかのあの二人!そうきましたか!そう使いますか!うまいなぁ。「蜜柑」と「檸檬」のコンビもよかったし(トーマス好きのキャラも笑えました)、こういう世界で生きている人にはとても思えないツキのなさすぎる「七尾」のキャラもよかったです。「王子」は唯一全面的に嫌な奴!って思ったんですけど、キャラとしては魅力的なんですよね。物語もおもしろいし、キャラもいい。伊坂さんのことだからこれが見事につながって最後のピースがぴたりとはまる爽快感があるのだろうな・・と思いつつ読みましたが、期待通りの爽快感。期待して読んでも充分満足できる1冊でした。

ところで七尾ってアンソロジーの「Story Seller 」に出てきた首折り男?

2010年10月30日

「真綿荘の住人たち」島本理生


真綿荘の住人たち
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とても島本さんらしいお話だと思いました。痛くてちょっといびつな恋のかたちが切なかったです。一見穏やかに暮らしている住人たちですが、それぞれが胸のうちに抱えるひりひりするような痛みだとかが時折覗くのがスリリングでした。
でも「真綿荘」の大家さん綿貫さんと、晴雨の愛のかたちはよくわからなかったなぁ・・。重いしラストには本当に驚きました。そっちですか・・。最後の話を読んだらそれまでのお話がふっとんでしまった気がします。

レトロな下宿「真綿荘」に集う人々の恋はどれもままならない。超絶に性格の悪い美女に駆け落ちを迫られる大和君、彼に片想い中だが先輩に告白されて揺れる鯨ちゃん、女子高生の恋人の一途な愛情表現に戸惑う男嫌いでクールな椿。そして、大家で小説家の綿貫さんは、17年前ただ一度自分を抱いた男・晴雨(せう)を内縁の夫と呼ぶ――。『ナラタージュ』の著者渾身の恋愛小説。自分だけの至上の相手を貪欲に求める、熱い恋のあり方に心震える傑作です。 文藝春秋 内容紹介より


真綿荘に暮らすのは、大家の綿貫さんと内縁の夫の晴雨さん、過去の出来事から男嫌いになって人に触れられるのが苦手な椿、ちょっと太めで自分に自信がない女の子の鯨ちゃん。そこに北海道から出てきた大和くんが加わります。
大和君は思ったことをストレートに口にしてしまうタイプ。空気が読めないっていうんでしょうが、なんか憎めなかったりもします。彼が入ることによって、きれいに完結していた真綿荘の人間関係が少し変わったのかなと思います。

椿さんと女子高生の八重子の物語は、不器用で痛々しかったけれど、普通にちゃんと恋のお話として読むことができたし、鯨ちゃんの片思いのお話はかわいらしかったな。女の子から見たら鯨ちゃんはとっても素敵な女の子。大和君の鈍感ぶりにはいらっとしましたが、それでも荒野先輩みたいな人がちゃんといてくれることにほっとしました。二人がうまくいくといいなって思います。
それにしても、大和くん以外の椿さん、八重子、鯨ちゃん、荒野先輩、綿貫さん、みんな親との間に確執やわだかまりや切望があります。誰もがみんな持っているものですけど、その度合いがとても強い。それが彼らの恋のかたちにまで関わっているようで、なんだか切なくなってしまいました。だからそういう屈託のない大和くんの存在にいらっとしながらも、ちょっと救いを感じてしまうのかなと思ったりしました。
彼も思いもよらぬ駆け落ちで少し成長したみたいなので、これから素敵な男の人になってほしいななんて思いました。

と、ここまでは不穏なものを感じつつもゆるゆると読んできたのですが、この後の綿貫さんと晴雨さんの話でトーンが変わって、ちょっと驚きました。重い・。特にこのラスト。まさか出てくるものがあれだったなんて・・。私はてっきりあっちかと思ってたので・・。って普通あっちだと思いますよね。(ネタバレにならないようにしたんですが、あれとかあっちとか、訳わかりませんね。)嫌な終わり方でなくてよかったとは思うんですが、綿貫さんはこれでよかったの?なんて考えてしまいました。17年間の想いってものすごいと思うんで・・。やっぱりこの二人の間に横たわる感情は複雑でよくわからないです・・・。

2010年10月22日

「光待つ場所へ」辻村深月

光待つ場所へ
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辻村さんの作品は、他の作品とリンクしているものがあるので読む順番は要注意なのですが、これは3作とも他の作品のスピンアウトでした。(「冷たい校舎の時間は止まる」「スロウハイツの神様」「僕のメジャースプーン」「ロードムービー」「凍りのくじら」「名前探しの放課後」・・色々リンクしあってるので抜けてるかも)知ってて読んでるので、知らないで読んだらどうかというのは推測するしかないのですが、やっぱり読んでからの方がいいのだろうと思います。たぶんその方が、前の作品を別の角度から見るような楽しみ方もできるし。
読んで思ったのは、辻村さん、迫力が出てきたなぁということ。これでもかこれでもかと剥き身の感情が露わにされて、ほんと迫力ありました。辻村さんの小説に出てくる女の子は苦手なことが多いんですが(すごくしつこく言ってる気がします・・)、ここに登場する女の子たちは、友達にはなれなくても憎めなかったり、もしかしたらわかり合えそうな気がしてきました。

内容説明
悔しい、恥ずかしい、息苦しい――。
それでも日々は、続いていく。

今もっとも注目の作家・辻村深月 心震わす傑作青春小説!

【収録作品】
「しあわせのこみち」
T大学文学部二年生、清水あやめ。「感性」を武器に絵を描いてきたという自負がある。しかし、授業で男子学生・田辺が作った美しい映像作品を見て、生まれて初めて圧倒的な敗北感を味わい……。

「チハラトーコの物語」(「『嘘』という美学」を改題)
美人でスタイル抜群、ガチに博識でオタク。チハラトーコは、言葉に嘘を交ぜて自らを飾る「嘘のプロ」。恩師、モデル仲間、強気な脚本家との出会いが彼女にもたらすものとは?

「樹氷の街」
中学校最後の合唱コンクール。指揮を振る天木だったが、本番一ヶ月前になっても伴奏のピアノは途中で止まり、歌声もバラバラ。同級生の松永郁也が天才的なピアノの腕を持つことを知った彼は……。


「しあわせのこみち」
「冷たい校舎の時は止まる」を読んだのがだいぶ前なので、清水さんのキャラはうろ覚えでしたが、読んでるうちに色々よみがえってきました。そして、あぁこんな思いを抱えていたのか・・と。いま「冷たい校舎の〜」を読み返したらまた違う読み方ができそう。
清水さんの、自分は特別だというものすごい自意識だとか、それゆえにまわりとうまくやっていけないところだとか、ここまですごいとさすがに共感はできなかったです。でもその痛さはどこか若い頃の自分にも重なるものがあるような気がして・・。だから彼女が敗北して挫折してもがきながらも、自分の感情と向き合って一歩踏み出すことができたことに、心からほっとしました。そういう成長のお話なんでしょうが、恋愛小説として読んでも素敵なお話だったと思います。

「チハラトーコの物語」
この間読んだばかりの「スロウハイツの神様」のその後なので、さすがにまだ記憶が鮮明。チハラトーコはかなり嫌なキャラでしたが、こうして描かれると憎めなくなります。あのチハラチーコが踏み出した一歩。あんなに苦手だったのに、環が出てくるとなぜかうれしかった!

「樹氷の街」
これはあの二人が出てくるんで、いろんな作品とリンクしてます。合唱コンクールをめぐる、女子のドロドロとした葛藤とか感情。こういうの辻村さんホントうまいです。で、そこに天才的にピアノが上手な松永くんが絡んでくるんですが、最初はどうなるかと思ったドロドロが、合唱の歌声とともに昇華されていくのが、ものすごくよかったです。あの二人だけじゃなくて、松永くんのまわりの人たちが出てきたのもうれしかったです。

ここまで読んで「光待つ場所へ」というタイトルの意味がじんわりと心に沁みました。大人になると、図太くなるというか開き直ることができるようになるけど、若い頃って、未来に対する不安とか焦りとかあるし、自分だけが暗い場所でもがいているような気になったりしてる気がします。今は10年後の自分を思い描くことができるけれど、若い頃はそれができなかった気がするので・・。遠すぎて思いだせなくなってますけど、そんな感情や痛みは懐かしくて、そこから光を求めて一歩踏み出す姿が清々しくて、読み終えて爽やかな気持ちになりました。

2010年10月15日

「ペンギン・ハイウェイ」森見登美彦


ペンギン・ハイウェイ
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舞台は京都を離れ、どこかの新興住宅地。主人公はくされ大学生やタヌキではなくて小学生男子。どんなお話なのかすごく楽しみでした。
実は前半はちょっと退屈で、読むのが辛かったのです。でも後半物語がスリリングに展開して、そこからは一気に読んでしまいました。森見さんにしては、ファンタジー色よりもSF色が濃い感じです。少年が成長する過程の、何かをなくすさみしさだとか痛みが、淡々と乾いた感じで書かれていたのがよかったです。少年の成長小説として、これはこれでおもしろかったんですけど、やっぱり森見さんは、楽しいキャラが縦横無尽の活躍をするものとか、ファンタジックなものの方が好きかなぁ。

内容(「BOOK」データベースより)
小学4年生のぼくが住む郊外の街に突然ペンギンたちが現れた。この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎の研究を始めるが―。冒険と驚きに満ちた長編小説。


友達と探検隊を作って川をさかのぼったり、ペンギンが出てきたりということで川端裕人さんの「川の名前」を思い出しました。そしてなぜか村上春樹さん風味を感じました。なんでだろう。お姉さんに名前がなかったり、サンドイッチや紅茶の入った魔法瓶だとかの小道具が村上さんっぽいからかな・・。

主人公のアオヤマくんは冷静で論理的で、こんな小学4年生男子っているの?って感じの子です。スズキ君帝国皇帝のスズキくんが、アオヤマくんと友達の内田くんが気に入らなくていじめているという図式も、アオヤマくんが子供とは思えないような対応をするから、かみ合わないし対立も深まります。プールで水着を脱がされた時の対応なんて、小学生ばなれしてます。そのあたりはそのかみ合わなさがおもしろくもあり、心配でもあり・・という感じでしたけど。

アオヤマくんのお父さんにお母さん、初恋の人である歯科医院のお姉さんだとか、「海辺のカフェ」のマスターだとか、まわりで見守る大人たちもいい感じでした。特にお母さんは素敵だなと思います。
おっぱいに堂々と興味を示したりするところが森見さんらしいですけど、やっぱりこれは王道の少年の成長小説だと思います。

2010年10月10日

「バイバイ、ブラックバード 」伊坂幸太郎


バイバイ、ブラックバード
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とりあえず、太宰治の「グッド・バイ」を読もうと思って本棚をあさったのですが、ありませんでした。そういえば何年か前、本棚の整理をしていて開いたら胸を病みそうな本は処分したんでした。中学生の頃に読んでいた本だからその時に処分したんだろうな・・と思ったら、青空文庫っていう手がありました!ネットばんざい!青空文庫ばんざい!です。なんかカラスミが出てきた覚えがあったんですが、やっぱり出てきてました。どんな話だったかすっかり忘れていたのに、読むと結構覚えていました。若い頃に読んだものの方が覚えているなぁ・・。
その「グッド・バイ」から想像を膨らめたという「バイバイブラックバード」。久しぶりに伊坂さんらしい作品にうれしくなりました。ささいなものだとか、ささいなことが誰かだったり何かだったり世界だったりをちょこっと変えるという。欲を言えばもっとこう・・なんていうか、わきあがってくるものがあったらよかったなぁとは思うんですけど、とりあえずこの方向は好きです。おもしろかったです。

内容(「BOOK」データベースより)
太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。1話が50人だけのために書かれた「ゆうびん小説」が、いまあなたのもとに


「あのバス」に乗せて連れて行かれることになった星野くん。彼が付き合っている女性たちに別れを告げるため、見張り役の繭美という巨大な女ともに、女性たちのところを訪れるという話です。

それぞれの女性とのエピソードや、別れの場面が順に描かれていくわけですが、なにより強烈なのが繭美のキャラです。口から出るのは悪意や敵意に満ちた言葉ばかり。人を不快にさせて喜ぶような人なのです。彼女がことあるごとに差し出す辞書は、「常識」だとか一般的に人に必要なものが塗りつぶされているのです。で、そんなものは私の辞書にはない、と。

伊坂さんの小説には強烈なキャラが多いですけど、彼女もかなり強烈です。でも読んでいてそんなに嫌ではないというのが不思議でした。
星野くんはなんだかつかみどころのない人でした。相手がどんな人でも、変わらないあるいはまったく逆で、自由に器の形を変えられるっていうんでしょうか、そういうところが彼がモテる所以かもしれません。でも、優しくていい人なんだろうなと思います。繭美のピンチを迷わず救おうとしたりしちゃいますから。

星野くんが別れてまわる女性たちも、子持ちだったり、すごい美人だったり色々楽しかったですが、一番好きなのはキャッツアイの彼女です。
星野くんが別れようっていっても、それどころじゃないっていうのがよかったです。

最後はどうなるんでしょうね。なんかこういう終わり方なんだろうなーとは思ってたんですけど。

2010年10月05日

「GOSICK IV-ゴシック・愚者を代弁せよ-」桜庭一樹


GOSICK IV-ゴシック・愚者を代弁せよ- (角川文庫)
GOSICK IV-ゴシック・愚者を代弁せよ- (角川文庫)
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もうすっかり久城くんのファンで、キャラ読みしています。というか、ここ2冊ほどキャラ読みの部分では満足なのですが、ミステリーとしてはちょっと物足りなく思ってたんです。でも今回はおもしろかったです。
謎だったことの核心にも近付いてきました。ヨーロッパの小国ソヴュールという舞台についても、時代が大戦前ということについても、なるほど、だからこの設定と納得。
この先に訪れる嵐の予感に、今は先が知りたいような、先に延ばしたいような・・そんな気持ちです。

内容(「BOOK」データベースより)
季節は初夏。今日も図書館塔最上階、秘密の小部屋で読書にふけるヴィクトリカの頭上に、金色の書物が落ちてきた。そこには“未来の汝よ。我は愚者なり。そして汝、愚者の代弁者となりて、我が愚かなりし秘密を暴け!”とメッセージが。時を同じくして学園にやってきた謎の人物。そして、時計塔で起きた密室殺人…知恵の泉のもと、すべての謎がひとつになるとき、王国の禁忌が白日のもとに!?人気ミステリ、急展開の第4巻。


久城くん、どんどんたくましくなってますけど、まだまだヴィクトリカにやられっぱなしです。かわいいなぁ。
そして、ヴィクトリカは久城が自分のために息を乱して迷路階段を上り降りするのが好きだなんて言ってるのに、久城には弱かったりするところもあってかわいいのです。まさにツンデレ。
そしてずっとかわいそうだったアブリル。アブリルのことを考えると、久城の鈍感さがちょっと憎らしくなります。でもヴィクトリカもかわいいから、どちらかだけを応援することってできないんですけどね・・。それにしても久城くん、こんなかわいい二人からモテモテです。なんで!ってかわいいからだろうなぁ。わかります。私も好きだもん。

久城とヴィクトリカにはやっぱり何か揺るぎないものがあるように思います。アブリルは今回もちょっとかわいそうだったけれど、今回明らかになったヴィクトリカの背負った運命を考えると、自由に生きることのできる彼女と、どちらがいいんだろうって考えてしまいました。
2巻での占いや、この巻での予言のようなものによると、久城とヴィクトリカはこれから訪れる歴史の流れに翻弄されるようです。切ないです。せめて二人が一緒にいられる時間が少しでも長いように、少しでも幸せなものであるように願わずにはいられません。でも、二人の間に芽生えた感情がこれからどんなふうに育まれていくのかは、楽しみです。

2010年10月01日

「空想オルガン」初野晴

空想オルガン
空想オルガン
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このシリーズ好きなんです。新刊がでるのを心待ちにしていました。
今回も、笑ったりじーんとしたり、驚かされたり、学園ミステリを堪能しました。やっぱりこのシリーズ好きですー。

内容(「BOOK」データベースより)
吹奏楽の“甲子園”普門館を目指すハルタとチカ。ついに吹奏楽コンクール地区大会が始まった。だが、二人の前に難題がふりかかる。会場で出会った稀少犬の持ち主をめぐる暗号、ハルタの新居候補のアパートにまつわる幽霊の謎、県大会で遭遇したライバル女子校の秘密、そして不思議なオルガンリサイタル…。容姿端麗、頭脳明晰のハルタと、天然少女チカが織りなす迷推理、そしてコンクールの行方は?『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続く“ハルチカ”シリーズ第3弾。青春×本格ミステリの決定版。


これ、ハルチカシリーズっていうんですね。これからは通っぽくそう呼ぶことにします♪
第3弾でいよいよ吹奏楽コンクールが始まりました。今年は人数が少ない編成なので普門館へ行くことはできませんが、来年につなげるためがんばっています。今までスカウトしたり出会ってきたりした人たちがしっかりと仲間になっていて、何だかそれがすごくうれしかったです。

今回もハルチカコンビは相変わらず謎を拾っています。なかなかいい絵ヅラなのにロマンスが生まれることのないこの二人。最初はちょっと物足りないのでは・・と思ったこのバランスがいいなぁと今では思います。
草壁先生の謎も気になりますが、今回もそれは明らかにはなりません。なんだかすごく重いものが隠れているようで、知りたいような怖いような・・。ハルチカのキャラのせいか重たい印象は残らないのですが、お話自体も重めでした。
犬の飼い主を探すお話、祖父から残された建物のお話、おれおれ詐欺のお話、どれも家族の愛にまつわる重めのお話でしたが、おれおれ詐欺の方の話は、読んでいて切なかったなぁ。派手な女の子たちばかりの女子高の話も重たかったけれど、彼女たちのキャラもなかなかよかったので、これからもライバルとして絡んでくれるといいなと思います。
それぞれどの謎ときもおもしろかったけれど、最後の最後がやっぱり一番驚きました。

普門館への挑戦もあるし草壁先生の謎もそのままだし、まだまだシリーズは続きますよね?楽しみです。あ、そういえばコンクールの会場が舞台になっていても、演奏シーンがありませんでした!

それにしても初野さんは、浅間山荘だとか昔の話をさらりと入れてきます。「退出ゲーム」と「初恋ソムリエ」にはがっつり入ってました。若いはずなのに。

2010年09月27日

「GOSICKs-ゴシックエス・春来たる死神」桜庭一樹

GOSICKs-ゴシックエス・春来たる死神ー (角川文庫)
GOSICKs-ゴシックエス・春来たる死神ー (角川文庫)
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シリーズ外伝ということで、楽しみにしていました。一弥とヴィクトリカの出会いのきっかけになった事件だとか、セシル先生って何者?だとか、気になっていたことが色々とわかって楽しかったです。でもミステリーとしては短編のせいか小粒だし、納得できないものもあったりして、ちょっと消化不良な感じも残ってしまいました。文章はテンポがよくて読みやすかったです。

内容(「BOOK」データベースより)
1924年、春。ヨーロッパの小国ソヴュールに、極東から留学してきた久城一弥は孤独である。不慣れな環境、言葉の壁、クラスメイトの間で囁かれる不吉な言い伝え“春やってくる旅人が死をもたらす”…そして噂どおり起きてしまった殺人事件。容疑者として絶対絶命の危機に陥った一弥に気まぐれな救いの手をさしのべたのは、図書館塔に篭もる謎の少女だった―。世界を変える出会いの瞬間を描く、名作ミステリ外伝短編集。


二人が出会うきっかけになった事件があるということは語られていましたが、ここで初めてその事件と一弥とヴィクトリカの出会いが語られます。
ヴィクトリカはどこから図書館に通ってくるんだろうとか、セシル先生のこと、アブリルが転校してきた時のこと、シリーズを読みながら、そういえば気になっていたということも次々語られていくので、読んですっきりしました。
あんな出会い方をしたら、アブリルは一弥を好きになっちゃいますよ。

ところで一弥ってボーイミーツガールを夢みる男の子だったんですねぇ。意外でした。でも、なのになんであんなに鈍感なんだろう。

それにしても途中、どうしても納得できない謎解きがありました。どう考えてもあの推理では無理だろうと思うのですが・・。あの謎解きは表向きで、実は真相はっていうのがこれから語られたりしないかなぁ。

あと、ヴィクトリカが一弥の兄に出した謎解き!あれがどうしてもわかりません。もうシリーズの続きを読むしかないじゃないですかー。

2010年09月23日

「南の子供が夜いくところ 」恒川光太郎


南の子供が夜いくところ
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恒川さんというと、異界です。身近なところに口を開けた異界への入り口に対する恐れと、それにノスタルジックなものを感じて惹かれてしまう気持ち、それを鮮やかに感じさせてくれるところが好きです。
今回の舞台は架空の南の島、トロンバス島が舞台ということです。土俗的なものって地域を越えて共通するものがある気がするのですが、やはり空気が違うと気質は違ってくるようで、今までのものとはちょっと雰囲気が違っています。
今までのものが日本的なノスタルジックホラーならば、こちらは南の海に浮かぶ島々の濃密な空気をまとった時代を超えたファンタジーという感じです。怖さも抑えめですが、各短編の時代を超えたゆるやかなつながりが物語の世界を広げていて、これはこれでおもしろかったです。
でもやっぱり日本的な世界の方が私にはぞくっとくる気がします。

内容(「BOOK」データベースより)
「今年で120歳」というおねえさんと出逢ったタカシは、彼女に連れられ、遠く離れた南の島で暮らすことになる。多様な声と土地の呪力にみちびかれた、めくるめく魔術的世界。


各短編を思い出してみると、バラエティに富んでいるなぁといまさら思いました。
おもしろかったのは「十字路のピンクの廟」と「夜の果樹園」。特に「夜の果樹園」
のフルーツ頭とか巨大な案山子のいる畑の話とか、すごい発想です。

「南の子供が夜いくところ」と「十字路のピンクの廟」「蛸漁師」「夜の果樹園」は現代のちょっと怖い話。リアルだったり不思議だったり悪夢のようだったり、それぞれ手触りは違いますが、登場人物はかなりリンクしています。

「紫焔樹の島」「雲の眠る海」「まどろみのティユルさん」は伝説とか叙事詩の世界です。そしてそのどれもがユナのいる現代のトロンバス島につながっています。もしかしたらトロンバス島、あるいは呪術師のユナが時空を超えた異界への入り口なのかもしれません。抜けるような南国の青空の下、あるいは濃密な闇の中にそんなスポット・・何だかありそうな気がしてきました。

ところでタカシの最初の描写っていつ頃のどこなんだろう?


2010年09月19日

「ふたりの距離の概算」米澤穂信

ふたりの距離の概算
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古典部シリーズももう5冊目なのですね。「遠回りする雛」がよかったのですごく楽しみにしてました。
舞台が20キロを走るマラソン大会で、途中に回想シーンが挟まれるという構成に恩田陸さんの「夜のピクニック」を思い出しました。でもこちらは昼間だけのマラソン大会で一晩中歩く歩行祭よりも地味だし、登場人物のテンションも低いです。でも米澤さんの作品にあるもどかしいようなこの雰囲気は好きです。
謎の真相についてはなんだか納得したようなしないような・・って感じですっきりしなかったんですけど、少しずつ変わっていく古典部のメンバーのこれからは、私気になります。続編が楽しみです。

春を迎え、奉太郎たち古典部に新入生・大日向友子が仮入部することに。だが彼女は本入部直前、急に辞めると告げてきた。入部締切日のマラソン大会で、奉太郎は長距離を走りながら新入生の心変わりの真相を推理する!


奉太郎たちは2年生に進級し、古典部にも1年生の大日向友子が仮入部してきます。けれども彼女が突然辞めると告げたため、奉太郎はマラソン大会の20キロを走りながら彼女の心変わりの理由を考えます。そして途中出会う里志や後から走ってくる摩耶花、千反田、大日向と言葉を交わしながら、謎を解いていきます。

奉太郎が自分の走る時速や距離から、何分後かに出発する摩耶花たちとの距離を計算するのですが、子供たちが算数や数学で解くような道のりと時間、速さの関係を実際に使っているのは初めて見た気がします。どういう時に使うんだ!と思いながら勉強を見てましたが、こういうときに使うんですね。なるほど。

でもタイトルのふたりの距離の概算って、実際の距離だけでなく、人と人との心の距離でもあったんですね。たぶんそういうことについては考えないできた省エネ主義の奉太郎がそういうことに思いをめぐらすこと、そしてこんなことを考えるために20キロの距離を費やすなんて、奉太郎は変わってきたなぁと思います。
千反田に対するゆるぎない信頼だとかも、読んでいてうれしくなりました。クールで省エネに徹するのも悪くはないですけど、私は変わっていく奉太郎の方がやっぱりいいなと思います。熱い人が好きですから(笑)。
里志と摩耶花の関係も変わっていておおっ!とうれしくなったし、奉太郎の家での招き猫やらジャムの話はなんだかかわいらしくていいなぁって思いました。彼らは必要以上に焦ってたようですけど。
彼らのこれからがすごく楽しみです。

今回はマラソン大会が舞台で大日向さんが入部を辞めた真相が大きな謎でしたが、小さな謎はあちこちにありました。新歓祭で感じた製菓研究会の違和感、招き猫がテーブルに置かれたままになっていた理由、大日向さんの従兄の喫茶店の名前etc。

でも、大日向さんの事情は意外というよりちょっとしっくりこない感じもしました。「遠回りする雛」からのつながりで、恋愛関係のこと?って思わせながら、それはあえてしないだろうなと思ってたんですけど、そうきましたか・・。ドロドロとしたものじゃなくてよかったとホッとはしてるんですけどね。

2010年09月17日

「GOSICKIII ―ゴシック・青い薔薇の下で― 」桜庭一樹


GOSICKIII  ―ゴシック・青い薔薇の下で― (角川文庫)
GOSICKIII ―ゴシック・青い薔薇の下で― (角川文庫)
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機↓兇眛匹澆笋垢ったけれど、これが一番さらっと読みやすかったかも。物語はちょっと物足りなかったんですけど、テンポがよくて楽しかったです。
でもこのシリーズは、一弥がヴィクトリカに振り回されてあわあわするっていうのが一番の楽しみなんで、今回もキャラ読みの楽しさは思う存分満喫しました。

内容(「BOOK」データベースより)
“青い薔薇”を買ってきてちょうだい―故郷にいる姉の頼みで、首都ソヴレムに出かけてきた一弥は、巨大高級デパート“ジャンタン”で、不気味な体験をした。街に流れる“人間消失”の噂、異様な計算能力を持つストリートチルドレン―深まる一方の謎を抱え、一弥は風邪で寝込んでいるヴィクトリカに電話をする。“知恵の泉”は距離の壁を超え、難事件を解決できるのか…!?大人気ミステリシリーズ、胸騒ぐ第3巻。


今回ヴィクトリアは風邪で寝込んでしまうので、冒険は一弥一人です。だから二人の絡みは途中からほとんど困った一弥がヴィクトリカにかける電話になってしまいます。だからちょっと物足りなかったのかなとも思うんですが、ヴィクトリカが風邪をひいてしまう理由がかわいいんです。常に冷静でちょっと人間らしい感情にかけているヴィクトリカですが、一弥と出会ってから変わりましたねー。その変化に自分でも戸惑っているのもかわいくって・・。もはやかわいいツンデレって感じです。
そしてだんだんたくましくなっているとはいえ、一弥はあいかわらずヴィクトリカには弱くて気づいたら振り回されているのですが、そんな一弥も電話だとヴィクトリカに強気に出ちゃうのです。そういうのって、かわいいなぁって思います。ほんと、一弥もヴィクトリカもかわいいったらありません。
なんか完全にキャラ読みしてますが、富士見ミステリー文庫の表紙を見てからもうそんなふうにしか読めなくって・・。

ところで今回ブロワ警部の変な髪形(ドリル頭?)やら、彼の部下の二人が手をつないでいる理由がわかりました。そうだったんですねぇ。それにしてもずいぶん律義ですけど。

2010年09月12日

「スロウハイツの神様」辻村深月



スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
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スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
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辻村さんの作品に出てくる女の子や女の人は苦手なことが多いのですが、今回もことごとく苦手でした。そのうえ前半はちょっとだらだらした印象で、設定のおもしろさとちょっとしたひっかかりにひかれて読み進んだ感じです。
でもそれが、下巻の途中、ピースがはまりだしてからは怒涛の展開。ちょっとしたひっかかりや小さなエピソードがこんなふうにつながってくるなんてー。そしてそれ以上にこんなに素敵で温かなお話だったなんてー。読み終えたときにはキャラの好き嫌いもすっかり吹き飛んで、おもしろかった!と幸せな気分になっていました。

内容(「BOOK」データベースより)
人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ―あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。

内容(「BOOK」データベースより)
莉々亜が新たな居住者として加わり、コーキに急接近を始める。少しずつ変わっていく「スロウハイツ」の人間関係。そんな中、あの事件の直後に百二十八通もの手紙で、潰れそうだったコーキを救った一人の少女に注目が集まる。彼女は誰なのか。そして環が受け取った一つの荷物が彼らの時間を動かし始める。


以前辻村さんが「冷たい校舎の時は止まる」の登場人物のひとり、まさに辻村深月をご自分のペンネームにされているのに驚いたのです。なぜなら登場人物の深月をあまり好きになれなかったから。辻村さんの小説に出てくる女の人はなんだか苦手なんです。今回の莉々亜はもちろん環やスーもやっぱり苦手で・・。
でも今回は読み終えて環に対する印象がガラッと変わりました。そして辻村さんご本人の印象も。
環という人は私にとって、こんな人は嫌だけれど、こんな風になれるものならなってみたいと思える人です。辻村さんが職業的にも自分とかぶるような環を主人公に設定して、こういうキャラにしてしまうってところが不思議でもあったんですけど、何だか読み終えてみて主人公が環だというのがしみじみわかる気がしました。作者と主人公をごっちゃにするこういう読み方はいけないのかもしれませんけど・・。

環が成功に対するどん欲さだとかそのための武装だとか、そういうことを前面に出しながらも、心に隠していたのはこういう純粋な気持ちだったというのが、何だかいじらしくて痛々しくてやられました。
スロウハイツという舞台設定、コーちゃんの昔の事件、環の生い立ち、狩野の使い方・・色々とうまいなぁと思うことはありました。伏線の回収は見事です。でもそういう物語としての完成よりも、結局は環がなぜ書くのか?ということと、それを知っている人物がしてきた優しさに最後ぐっと心をつかまれて、思わず涙が出ました。

2010年09月05日

「エデン」近藤史恵

エデン
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「サクリファイス」がよかったので、その続編ということで迷わず読みました。
舞台となったツール・ド・フランスで展開されるレースの描写もおもしろかったし、「サクリファイス」のような驚きのあるミステリーではなかったけれど、じっくりと読み応えのある小説でした。

「サクリファイス」同様「エデン」にも辛く重いものがありました。それでも彼らはちゃんと前に進んでいくんだろう・・そう思えたのがせめてもの救いでした。「サクリファイス」で背負いきれないくらい重いものを背負ってしまったチカですが、彼が悩みながらも真摯にレースに向き合い、選手としても人間としてもたくましく成長している姿を読むことができたのはうれしかったです。

内容(「BOOK」データベースより)
あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた惨劇が…。ここは本当に「楽園」なのだろうか?過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。


舞台はツール・ド・フランスという自転車ロードレースの中では最も華やかなレースです。ヨーロッパの町やアルプスやピレネーといった山岳をゆくレースの描写も、日本人として唯一その舞台に立ったチカの展開するレースもとても興味深くて楽しく読みました。けれどもそこにはチーム存続の危機、チカにしてみたらヨーロッパで戦い続けることができなくなるかもしれないという事情があります。そしてそこからチーム存続に係わるチーム内の不協和音もあり、さらに本の帯に惨劇がにおわされているものだから、レースの展開を楽しみながらも、暗雲が広がっていくような不安を感じてしまうのです。

でもその中にあってチカには救われました。チカは迷ったりもしますが、ぶれずに自分の考えを貫いていくのです。彼のそういう行動は日本人的気質だとか生来の真面目さもあるのかもしれませんが、彼が背負ってしまったあの出来事も決して無関係ではないのだろうと思うのです。そう思うとそれはそれで切ないのですが、それでも厳しいヨーロッパのプロチームに入った彼が一回りもふた回りも大きくなったようでまぶしかったです。チカの成長をこれからも見ていきたくなりました。

今回の惨劇はこういうことだったんですね。プロスポーツの世界にはこういう面もあるのでしょうが、何だか悲しかったです。厳しい世界なだけに、ふとした瞬間に覗きこんだ闇に魅入られてしまうのでしょうけど・・・。
そしてちょっとしたこと、しかも悪意からしたことではないことがこんなふうな結果を引き起こしてしまうことがあって、それを背負って生き続けなければならないというのは、どんなに辛いことかと思います。

2010年08月31日

「さびしい女神―僕僕先生」仁木英之


さびしい女神―僕僕先生
さびしい女神―僕僕先生
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このシリーズは楽しみにしているんですが、今回もおもしろかったです。
2巻と3巻のような行く先々で色々な人と出会って色々なことに巻き込まれる短編は、テンポがよくてキャラがそれぞれ楽しいし、ユーモラスな空気があって好きです。でもこういう壮大なものはやっぱり好きです。今回はおなじみの登場人物が少しづつ変わっていくところや、厳しさのある別の面を見ることができたのもおもしろかったです。

助けなきゃ! たとえ誰も振り向かなくても。あの子が最凶の神だとしても――。

苗族の国を襲う謎の旱魃。どうやら原因は、峰で出会ったちょっと変わり者の女神らしい。彼女のさびしさを癒せれば、この災いも解決する? なぜか引き止める僕僕先生を振り切って、解決策を探る王弁くん。彼が見るのは神仙が争う太古の幻、そして……。シリーズ第四弾は時空を超えるメガ・スケール、さらに感動度アップの最高傑作!


今回は王弁くんと僕僕のからみは少なかったのが残念でしたが、僕僕の過去がわかってきました。そのかわり吉良との絡みが多くて、吉良の今まで見えなかった面が見えてきました。こういうのもおもしろいものです。

王弁くんが信頼する人たちに反対されても自分の見たものを信じてさびしい女神魃の力になろうとするところ、そして僕僕の力を借りずに自分でがんばってみようとするところに、王弁くんの成長を感じました。吉良だけでなく司馬承禎や他の人の力は借りますが、時空をも超える王弁くんの冒険にはドキドキしたし、行く先々で必死にがんばる姿はなかなかかっこよかったです。
薄妃も少しずつ感情を取り戻しつつあるし、劉欣がこの巻でもどんどん人間らしくなっていくのもうれしかったです。

人間くさくておおらかな神々、善と悪などで分けることのできない混沌とした世界、この壮大なスケール、こういう世界観はとても好きです。僕僕の見せた厳しさにもドキッとしてしまったし・・。
それにしても王弁くんは鈍感過ぎます。僕僕の気持ちにも、魃の気持ちも。せっかくかっこよくみえてきたのに・・。でもたとえ仙骨がなくても僕僕が王弁くんとともにいるのがわかる気もした一冊でした。命に限りのある王弁くん、これからどうなるんでしょうか。命に限りがあるからこそ・・というのもあってほしいと命に限りのある身としてはついつい考えてしまいます。

ところでこの作品、表紙のかわいらしいイラストのイメージで読んでますが、これが劇画っぽいものだったら受ける印象は全然違うんだろうな。

2010年08月16日

「星間商事株式会社社史編纂室」三浦しをん

星間商事株式会社社史編纂室
星間商事株式会社社史編纂室
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史編纂室の面々が会社の過去の秘密に気づいてそれを暴く。
というと、何やら堅い企業小説のようですけど、そこはしをんさん。まさかそれがこういうお話になるとは・・。BL好きのしをんさんが楽しんで書いた!って感じがひしひしと伝わってきました。おもしろかったです。

内容紹介
川田幸代。29歳。独身。腐女子(自称したことはない)。社史編纂室勤務。彼氏あり(たぶん)。仕事をきっちり定時内にこなし、趣味のサークル活動に邁進する日々を送っていた彼女は、ある日、気づいてしまった。この会社の過去には、なにか大きな秘密がある!……気づいてしまったんだからしょうがない。走り出してしまったオタク魂は止まらない。この秘密、暴かずにはおくものか。社史編纂室の不思議な面々、高校時代からのサークル仲間、そして彼氏との関係など、すべてが絡まり合って、怒濤の物語が進行する。涙と笑いの、著者渾身のエンターテインメント小説。幸代作の小説内小説も、楽しめます!


本当にいるのか?と思われている幽霊部長とか、本間課長。だんだん本当はエリートだったらしいとわかってくるものの、社史編纂室にいる時はかなり変な矢田先輩やミッコちゃんと、社史編纂室のメンバーがおもしろくて最高でした。
幸代が同人誌を書いているサークルの活動(同人誌の作成とかコミケでの出店とか)については、へぇ〜そうなんだと、かなり興味津津で読みました。仕事よりも同人誌の活動に生きがいを見出してそのために働いているような幸代ですが、そういう働き方もありだし、いいなぁなんて思ったりして。

社史編纂室のメンバーが課長の小説さながらの活躍で、社史の中にある高度成長期の穴に迫っていくのもおもしろかったですが、幸代が自分の小説を会社のコピー機でコピーしていて、上司に読まれてしまうところとか、上司がそれをきっかけに同人誌を作ってコミケに出店すると言い出すところ、読んでいておかしくておかしくて・・。確かにあの小説を会社の人に読まれたら辛いだろうし、それだけじゃなく幸代のテリトリーの同人誌やコミケにも参戦してくるんですから(笑)。でも結局社史編纂室のメンバーには普通に受け入れられているからよかったのかな。他にもところどころ笑えるところがあって、突っ込んだり笑ったりかなり楽しかったです。

幸代の昔からの仲間が、結婚相手に腐女子だということを知られたくなくて、サークルを辞めるのですが、自分が好きなものを捨ててまでってどうなんだろう。かといってお互いやりたいことをやっているから口を出さないという幸代と彼は、いい感じではいあるのだけれど、辛いかなぁ・とも。だって「タコの切れた糸」になると宣言する彼ですからね・・。私も思わず突っ込みました(笑)。

途中幸代の書いている小説や、課長の書くへんてこな時代小説、裏社史の小説まで読むことができて、なんだかお得な気分になりました。

2010年08月12日

「6TEEN 」石田衣良

6TEEN
6TEEN
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この間息子が「4TEEN」を読んでいて、その時にパラパラと読み返したので彼らのことは結構覚えていました。高校生になったのねぇ・・と、ちょっと感慨深い。それぞれ進路は違うけれど変わらず仲の良い4人にまた会えたのはうれしかったです。

内容(「BOOK」データベースより)
『4TEEN』続編ついに刊行!ぎこちない恋。初めての裏切り。そして、少しだけリアルさを増してきた未来…。超高層マンションを見上げる月島の路地で、ぼくたちはこの世界の仕組みを考える。ダイ、ジュン、ナオト、テツロー―永遠の青春小説。


10の短編が入っているので一つ一つが短くてテンポよくさらりと読むことができます。そしてその中にも石田さんらしく今がしっかりと押さえられています。高校1年生にこんなに盛りだくさんの出来事が起こるんだろうか・・と突っ込みたくもなりましたが、この4人は好きだし、重いテーマのものもあるのに読後感は爽やかだし、石田さんはやっぱり巧いと思います。IWGPのシリーズは必ず読んでいますが、この4人の物語が続くとしたら、これからも追いかけるんだろうなと思います。彼らはこれからどんなふうになっていくのかなぁ。

「16歳の別れ」のユズルくんは、あの空を飛んだ子だったのですね。うちの息子は最後のこの話が一番よかったと言ってました。年齢の近い子の悲しい話だったから胸に迫ったのかも。


以下は備忘録続きを読む

2010年08月10日

「赤×ピンク 」桜庭一樹

赤×ピンク (ファミ通文庫)
赤×ピンク (ファミ通文庫)
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角川文庫の方を読んだのですが、「ファミ通文庫」の画像しかなかったので、とりあえずこちらを。「ファミ通文庫」の表紙を見ると若い子向けのラノベのイメージですが、読んでみると大人が読むものとしても充分通用するというどころか、すごいと思えるものでした。

内容(「BOOK」データベースより)
東京・六本木、廃校になった小学校で夜毎繰り広げられる非合法ガールファイト、集う奇妙な客たち、どこか壊れた、でも真摯で純な女の子たち。体の痛みを心の筋肉に変えて、どこよりも高く跳び、誰よりも速い拳を、何もかも粉砕する一撃を―彷徨のはて、都会の異空間に迷い込んだ3人の女性たち、そのサバイバルと成長と、恋を描いた、最も挑発的でロマンティックな青春小説。


毎夜廃校になった小学校で繰り広げられるガールファイトだとか、出てくる少女たちだとか設定はラノベっぽいです。ショーとはいえ暴力的な場面もあるしSMの女王様だとかそんな少女も出てきます。わたしにとっては全然なじみのない世界だし、怖くて近づけないような世界です。でも読んでいて全然嫌な感じはしないし、むしろ不思議なくらい透明でひりひりするような痛みと美しさを感じました。

3人の少女が出てきますが、それぞれの抱える歪みに苦しんでもがきながら、彼女たちはガールファイトで戦うことで、生きていることを実感できるような生活を送っています。
桜庭さんはこういう少女を描くのが本当にうまいと思います。普通に行きあったら絶対に理解できないような少女なのに、こうして読むと彼女たちの痛みをすぐそばに感じてしまうのですから。何度も切なさに胸がきゅうっと痛くなりました。
まゆの話から始まり、ミーコ、皐月と続いていくのも、少女たちそれぞれの姿がどんどん鮮明になっていくようでよかったです。彼女たちがそれぞれこれからも強く生き抜いていってほしい、ラストにはそう思わずにはいられませんでした。

「赤×ピンク」というと女の子らしくもちょっとどぎつい配色のイメージですが、女の子はみんな弱くてかわいくてファンシーなピンクであり、強くて鮮やかな赤でもあるって感じでしょうか。なんかすごいここに出てくる女の子たちにぴったりな感じがします。

男の人はあまり出てきませんが、師範代とか高校生の武史、皐月のアルバイト先の店長とか、なかなかいいキャラでした。

以下は備忘録(ネタバレしてます)


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2010年08月02日

「Heart Beat」芦原すなお他

Heart Beat
Heart Beat
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青春音楽小説のアンソロジーです。藤谷治さんの「再会」目当てで読みました。だって「船に乗れ!」のスピンオフだっていうんですもん。これは絶対読まねば!です。「再会」はやっぱりよかったです。もう色々思いだして涙がじわじわこみ上げてきてしまって大変でした。
そしてうれしいことに、他の作品もどれもそれぞれよかったです。青春音楽小説って好きなジャンルなんですけど、アンソロジーの短編でさらりと色々な作家さんの作品を楽しむことができたのもよかったです。

内容(「BOOK」データベースより)
ビートルズも四人、ベンチャーズも四人。なら、アーゴノーツも四人でなくちゃならない。(「アルゴー号の勇者たち~短い叙事詩~」)。実質的には文化祭の打ち上げっていうより、50ccの解散パーティーになる(「シャンディは、おやすみを言わない」)。エレキギターのフレーズが聞こえてきた。吹奏楽部の新しいレパートリーだ(「peacemaker」)。おれはあんまり気乗りしないまま、生まれて初めてライブハウスってところに行った(「おれがはじめて生んだ、まっさらな音」)。指定されたとおりの場所を押さえて弾くと、ちゃんとブルースに聞こえるではないか(「フランソワ」)。そのとき僕は、自信過剰で感傷的な、チェロ専攻の高校二年生だった(「再会」)。


青春小説には大きくわけてまっただ中系と後から振り返り系があると思うのですが、まっただ中系の爽やかさ苦さ痛さあり、振り返り系の苦さ温かさありで、バランスも良かったと思います。

小路さんの「peacemaker」は、放送部の二人の中学生男子がかわいくて、なんだかほのぼのとしてしまう作品でした。中学を二分する先生の対立と、その娘と息子のロミオとジュリエットのような恋。放送部の二人は一体どうやってpeacemakerになるのか?

伊藤たかみさんの「シャンディは、おやすみを言わない」は、高校最後の学園祭のステージを終えたその日のバンドの女の子のお話。バンド内で内緒で付き合っている彼のこと、それぞれの進路とかバンドの解散とか、遠距離恋愛とか、なんか切なくてほろ苦いのだけど、いいなぁって思いました。

「おれがはじめて生んだ、まっさらな音」の楡井亜木子さんは初読みです。お父さんと息子の関係が、一緒にライブにいったことから少しづつ変わっていったり、大人の世界を覗くことで将来について考えるようになったり、明るくてさわやかなお話でした。体育会系の男の子が初めてライブに出かけてとまどったりするのもかわいらしかったです。

芦原すなおさんの「アルゴー号の勇者たち~短い叙事詩~」は、大好きな「青春デンデケデケデケ」の空気そのままのお話だったんですけど、これって別のお話?それとも「青春〜」の一部?
ちょっと昔の田舎の中学生が、ビートルズの音楽に出会ってから音楽に夢中になっていくというお話なのですが、中学生が結成したバンドの編成にリコーダーとタンバリンが入っていたり、高校生がギターを手作りしてしまったりと、その熱さがすごく楽しいんです。こういうお話はすごく好きです。

「船に乗れ!」の続編ともいえる藤谷さんの「再会」は、心にじわっと沁みました。伊藤くんから彼のフルートリサイタルへの招待の手紙を受け取った翌日、サトルはしまいっぱなしだったチェロの修理を頼みます。
文化祭や合宿のキラキラとした場面が次々に浮かんできました。その傲慢さすら全てくらくらするくらいまぶしくて読んでいて苦しくなってしまうくらいでした。彼らは時を経てもちゃんとつながっていてそこにはやっぱり音楽があって・・というのに、心をわしづかみにされました。懐かしい人たちが出てきたのもうれしかったし、「船に乗れ!」でやっと向き合った高校時代の自分を、ラストでサトル自身がこんなふうに思えたことが本当に本当にうれしかった。サトルと伊藤くん、ゆるゆると二人で飲みながらどんな話をするんだろう。

花村さんも初読みです。「フランソワ」って猿のフランソワルトンからとった男の子のニックネームなのですが、サルの名前がフランソワルトンってすごいなぁ。不登校の高校生の男の子と女の子のお話です。女の子がちょっと過激ですが、それが痛々しくもあって・・。

2010年07月30日

「蝦蟇倉市事件2」秋月涼介他


蝦蟇倉市事件2 (ミステリ・フロンティア)
蝦蟇倉市事件2 (ミステリ・フロンティア)
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伊坂さんと道尾さんの作品目当てで読んだ第1弾がおもしろかったのでこちらも読んでみました。楽しみにしていたのは越谷さんと米澤さんの作品です。
こちらもそれぞれどの作品もおもしろくて一気に読んでしまいました。第1弾での設定をうまく生かして使っているのもおもしろかったです。でも、オチだったり登場人物の年齢だったり組み合わせだったり、ちょっと印象が似た雰囲気の作品が多かったかなという気もします。

米澤さんの作品には、以前の作品の登場人物で印象深くて気になっていた人が出ていてびっくり。彼女にまた会えたのが思いがけずうれしかったです。

内容(「BOOK」データベースより)
海と山に囲まれた、風光明媚な街、蝦蟇倉。この街ではなぜか年間平均十五件もの不可能犯罪が起こるという。マンション、レストラン、港に神社、美術館。卒業間近の大学生、春休みを迎えた高校生、会食中の社会人、休日を過ごす教師。舞台も人も選ばずに、事件はいつでも起こっている―。様々な不可思議に包まれた街・蝦蟇倉へようこそ!今注目の作家たちが、全員で作り上げた架空の街を舞台に描く、超豪華競作アンソロジー第二弾。


読んだことがあるのは、越谷さんと米澤さんだけだったのですが、一番好きだったのはやっぱり米澤さんの「ナイフを失われた思い出の中に」でした。「さよなら妖精」の続編というかその後を描いた短編という色が濃くて、アンソロジーの中では少し異質な感じもしましたが、それでもよかったです。血刀を引っ提げたイメージで私の中では常に痛々しかった大刀洗さんが、今も真摯に懸命に誇りを持って生きている、それがわかったのが何よりうれしくて・・。ほろ苦くて切ないお話なのですが、それでも穏やかな気持ちで本を閉じることができました。
越谷さんの「観客席からの眺め」も期待通りのおもしろさでした。
初めて読んだのですが北山さんの「さくら炎上」もよかったです。二人の少女の互いに対する思いが切なくて痛々しくて・・。

以下は備忘録続きを読む

2010年07月27日

「オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン」小路幸也

オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン
オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン
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東京バンドワゴンのシリーズは、こんなに何もかもがうまくまわっている大家族なんてないよなぁ・・と突っ込みつつも、それでも温かな雰囲気が好きで読んでしまいます。サチさんの温かな語り口も好きです。
それぞれの章にちりばめられた謎に温かなドラマ、そして旅立ちにふさわしい希望に満ちた胸の熱くなるようなラスト。よかったです。やっぱり好きです。

内容紹介
下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」に舞い込む謎を、ワケあり大家族・堀田家が家訓に従い解決する、大人気シリーズ最新作。今回も、ページが増える百物語の和とじ本や、店の前に置き去りにされた捨て猫ならぬ猫の本など…次々と不可思議な事件が起きる。

意外なあの人の一世一代の恋や、紺と恩師の知られざる過去、イケメン社長・藤島の新たな決意など、堀田家とその仲間たちのドラマからも目が離せない!

季節が巡り、それぞれが確かな一歩を踏み出すころ、なんとあの人も海の向こうへ飛び立つことに!?

おせっかいで温かな堀田家の1年を綴る、「旅立ち」がテーマの第5弾!出会いと別れの季節に、あなたの背中を押してくれる、とっておきの愛の歌を贈ります。


赤ちゃんたちは日々成長し1歳の誕生日を迎え、隣に完成した「藤島ハウス」には家族同然のかずみちゃんも引っ越してきて、堀田家はますますにぎやかです。花陽も研人もぐぐっと成長しています。でもサザエさんと違って誕生し成長するということは、老いていくというのもあるわけで、勘一はもちろん、我南人に元気がないのが気になりつつ読みました。伝説のロッカーとはいえ、4人の孫のいるおじいちゃんでもあるのですから。シリーズに愛着がわくとこういう心配もあるんですね・・。

どの章もそれぞれよかったけれど、やっぱり最終章がよかったです。小学校を卒業する研人がたくましくなっていて、この時期の男子っていいなぁって思いました。おじいちゃんである我南人に歌ってほしいという気持ちとその言葉が、すごくかっこいいんですもん。成長が楽しみです♪
本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

なお、当ブログでは記事に関連がないと思われるトラックバックやコメントは削除させていただきます。予めご了承ください。


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