2004年12月04日

国銅


国銅〈上〉

他のサイトさんで見て気になっていた本です。学生時代、美術史の仏像が専攻だったので、仏像を見るのは好きだし、作り方もだいたいのことはわかっているつもりだったので興味を持ったのです。古代物の小説も井上靖さんや黒岩重吾さんなど読んできましたが、この小説の視点にはびっくりしました。天平時代、奈良の大仏造立にたずさわった人足が主人公なのです。大仏は誰が作った?という問いには「聖武天皇の発願」と答えたものですが、実際作ったのは、大勢の人足たちだったのですよね。その人足たちの生活が地味に淡々と綴られています。彼らの苦役の日々、その中で肉親や親しい人を失う希望の見えない過酷な生活は読んでいて本当に辛くなります。けれども主人公の国人はその環境にありながら学ぶ気持ちや、目に映る風景の美しさを感じる気持ちを忘れません。師と仰ぐ景信から教えられた仏の教えについて、考え悩みながらも、蟻のように使い捨ての人足として必死に生きる主人公の姿には胸を打たれます。私たちが今見る大仏には、こんなふうに名もなき大勢の人足がかかわっていた、そして今私たちがここにいるその歴史のひとつらなりの根元のほうに、彼らの存在があるということに力を与えてもらった気がします。ところどころに出てくる言葉や、詩も胸に響きます。ラストは涙がとまりませんでした。


国銅〈下〉

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1. 国銅(帚木蓬生)  [ のほ本♪ ]   2004年12月05日 08:50
奈良の大仏建立。その大事業に遠く長門の国からも、国人を含め15人の男たちが都に...
2. 国銅  [ 本読み日記 ]   2004年12月10日 13:32
国銅〈上〉国銅〈下〉 帚木 蓬生 奈良の大仏建立のために、長門(今の山口県)から銅を採掘し精錬し棹銅とし奈良に運ばれた。 その堀場で働く人足国人は暗い穴の中で、毎日休みもなく働いていた。 しかし、同じ堀場で働く兄広国を事故で亡くしてしまう。その折、僧景

この記事へのコメント

1. Posted by なつぼん   2004年12月04日 22:56
juneさんも読まれたんですねー。
地味だけど、ホントいい作品ですよね。
大仏が造られるのにこんなに苦労があったなんて、私も知らなかった。
これを読んでぜひとも大仏が見たくなりました。
国人もいいやつだけど、まわりの人たちもいいですよね。
ただ最後が…ちょっと残念でした。
時間がたつとまた読み返したくなってくる本です。

今は同じ帚木さんの「ヒトラーの防具」を読んでます。
ちょうど真ん中のあたりなのでこれからどうなるか気になってます。
帚木さんはこれからも追いかけていきたい作家さんなのですー。
2. Posted by ゆこりん   2004年12月05日 08:54
おはようございます。
TBありがとうございました。私もTBさせてもらいました。
この作品は本当に読み応えがありました。昔の人は
こんな苦労をしてあの大仏を造ったんですね・・・。
それと旅の大変さ、今の時代からすれば信じられない
話です。
昨日帚木さんの「アフリカの瞳」を読了しました。
こちらもとてもいい作品でした♪
3. Posted by june   2004年12月05日 20:53
なつぼんさん、ゆこりんさんこんばんわ。
他のサイトさんで見て・・って、お二人のサイトのことでした(笑)。
ほんと、読んでよかったです!
大仏は、本当に国人たち人足の手で、こうやって造られたんだろうなあと思うと、また違う目で大仏を見ることができそうです。見に行きたいなあ。

>なつぼんさん
国人のまわりの人は、いい人が多くてそれでだいぶ救われました。
でも最後は、国人のこれからの生き方を上手く表現していたけれど、やはり辛すぎますよね・・。

>ゆこりんさん いつもTBありがとうございます。
読み応えのある本でした。
旅や、日常生活のひとつひとつをとっても、今の時代からすれば、信じられないくらい、過酷な時代だったのですね。
こういう視点から古代を見たのは目からウロコでした。

帚木さんの本は初めて読んだのですが、他にも読んでみたくなりました。
また参考にさせていただきます♪
4. Posted by さつき   2004年12月05日 23:39
とても興味を持ちました。
最近軽めの本ばかり読んでいたので、来年1作目にこの重厚な物語を読んでみようかな、と思いました。
5. Posted by june   2004年12月06日 23:00
さつきさんこんばんわ。
国銅は、久々にずっしりと心に響くものを読んだーという感じです。
でも、本当にひたすら地味ですよ(笑)。
劇的な事件が起こるわけでもなく、悲劇も喜びも日々の苦役の中にあるのです。

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本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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