2005年09月12日

花まんま

花まんま

朱川湊人

芥川賞受賞作というのは、あれ?と思うことが多いのだけれど、直木賞はわりとはずれなく楽しむことができるので、ついつい期待して手にとってしまいます。これは読みやすいし、読後感もいいので、たぶん本をあまり手にとらない人でも充分楽しめる1冊だと思います。そして昭和の郷愁にどっぷり浸ることもできるので、年代によってはたまらない1冊かもしれません。

6編の短編が、全て大人になってから、大阪での子供時代の出来事を回想するという形で語られています。貧しい環境にありながら、たくましく遊びまわる子供たちの姿が描かれていて、時代的に自分とだぶるものもあり、何だか妙に懐かしい気持ちになりました。大阪という舞台もいいのでしょう、どこかで読んだことがあるような題材も大阪を舞台にするとまた違った表情で生き生きと現れるような気がしました。そして、私にしてみると子供が大阪弁を使うというのは、ませているけれどかわいいという感じに聞こえるのですが、それもこの小説の雰囲気にとても合っていると思いました。貧しさや差別問題など、宮本輝の泥の河の世界を思い出しました。
ところで読む前はホラーだと思っていたのですが、全体的にホラーという感じの怖さではないような気がします。怖いといっても親しみのある恐ろしさというか、温かみすらあるものでした。

6編の中では「摩訶不思議」が好きです。幼いながら、大阪の下町の男の血が流れる主人公がいい。葬式とその後の場面が悲しい場面なのにユーモラスで、大阪の力強さを感じました。摩訶不思議なのは葬式で起こったことよりも別のことだったのですね。
「妖精生物」は、わりとよくあるテーマなのに、妖精生物という発想と、ラストの恐ろしさにやられた!という感じでした。
soleil1 at 23:47│Comments(18)TrackBack(12) 朱川湊人 

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◆直木賞受賞の傑作短篇集表\題の「花まんま」を筆頭にモダンホラーの短篇集。

この記事へのコメント

1. Posted by なな   2005年09月13日 17:41
「摩訶不思議」たしかに、摩訶不思議なのはお葬式に車が止まったことじゃなく、ラストなんですね。
「妖精生物」のおばあさんの顔を今でも思い浮かべます。忘れられない物語です。
2. Posted by Roko   2005年09月13日 22:46
5 juneさん☆コメント&トラバありがとうございます。

>芥川賞受賞作というのは、あれ?と思うことが多いのだけれど、直木賞はわりとはずれなく楽しむことができるので

ほんと、その通りです。直木賞はそれ1冊だけでなく、総合点で選んでいるような節もあるので、ハズレはほとんどないですね。

それにしても、この作品は素晴らしい!
子供の頃の不思議さをテーマにしてるんだけど、大人になった今だからこそ「そうだったんだ」と思えるっていうところが、とても好きだなぁ。

摩訶不思議のおっちゃん、爪楊枝2本って言ってたのに、実は3本じゃないかって思わず突っ込み入れながら読んじゃいました。
3. Posted by 七生子   2005年09月14日 02:12
コメント&TBありがとうございました♪

ホラーでデヴューされた方ですが、この作品集はホラーというよりも人情話の部分で読ませるお話ばかりだったような気がします。
昭和の風景が、子供の視線で描かれるのもいいし、確かに私にもあった(はずの)「子供ゆえに感じる不可思議さ」を描いているところもいいな、と思います。

「摩訶不思議」ではたこやきの楊枝の使い方を教えて貰ったし、「妖精生物」は!もうインパクトありすぎで、一生もう忘れることはないと思います(笑)。

現在、最新作である『かたみ歌』を借り出し中なんです。
『花まんま』と同列の作風だと聞いてますが、どんな物語なのか、読むのを楽しみにしています。

4. Posted by ゆこりん   2005年09月14日 08:50
おはようございます。
心に残る作品でした。この作品なら直木賞受賞も
納得ですよね♪
5. Posted by june   2005年09月14日 21:24
>ななさん
どれも読みやすいのに、ちゃんと心にインパクトを残しますよね。「妖精生物」は、インパクトありすぎて私も忘れられないと思います。
6. Posted by june   2005年09月14日 21:40
>ROKOさん
懐かしくてあたたかい気持ちになって、じわっとして、ほんとよかったです。大人になってから読む方が、心に響くような気がします。

爪楊枝2本の話は、ちょうどテレビの雑学番組で見たので知っていたのです。(この小説の方が先かとも思うのですが)でも、2本じゃなかったじゃないですか!突っ込みたくなる気持ちわかります!
7. Posted by june   2005年09月14日 21:46
>七生子さん
「妖精生物」はインパクトありましたよね。まさかそんな生物とは思いもよらなかったし、それをそこまで書くというのもびっくりでした。視覚的にも頭にこびりついちゃって・・・。私も忘れないと思います。

爪楊枝2本は、ずっとおすそ分け用だと思っていました。3本あったらさぞ、しっかり固定できることでしょう(笑)。

「花まんま」と同系列とは、読んでみたいです。七生子さんの感想楽しみにしてます!
8. Posted by june   2005年09月14日 21:52
>ゆこりんさん
直木賞は個人的には「逃亡・・・」か「ユージニア」だといいなと思っていたのです。でもこれを読んで納得しました。
これは読者をあまり選ばないというか、誰もが楽しめるような気がします。
9. Posted by bon   2005年09月14日 23:03
juneさん こんばんは。
朱川さんいいですよね。
どこか懐かしくホロっとさせられてしまいますよね。
直木賞をとられたときは、驚いたんですが、ちょっと淋しいなぁという気持ちでした。
次作の「かたみ歌」も楽しみですね。
10. Posted by june   2005年09月15日 21:50
>bonさん こんばんわ。
朱川さん、巧いですよね。
巧いなあと思いながらも、ほろっとさせられちゃいました。
直木賞は、これなら納得です。
初朱川さんだったので、他の作品も読んでみたいです!
11. Posted by ahaha   2005年09月16日 08:34
おはようございます。コメントとトラバをいただいていましたのに、パソトラブルとそれに続くなんじゃかじゃで、すごくこちらに伺うのが遅くなってしまいました。すみません!
>全体的にホラーという感じの怖さではないような気がします。怖いといっても親しみのある恐ろしさというか、温かみすらあるものでした。
 私もそう思いました。宮本輝を連想したのと同様に。
「摩訶不思議」、すごく大阪風のいい味出してましたよねぇ。
こちらからもトラバさせてください。
12. Posted by june   2005年09月16日 13:51
>ahahaさん
パソトラブルとは大変でしたね!もう大丈夫なのでしょうか。こちらは気にしないでください。というかかえって気を使わせてしまって申し訳ないです。

「摩訶不思議」は好きですねぇ。でもahahaさんイチオシの「妖精生物」もインパクトがあって好きです。
それにしても宮本輝さんには、「泥の川」の頃のような作品をまた書いてほしいな・・と思います。
13. Posted by nico   2005年09月16日 22:43
はじめましてnicoと申します。私も『花まんま』の中では<摩訶不思議>と<妖精生物>が面白いと思いました。(個人的には直木賞は『ベルカ…』を応援していたのですけどね)

それでですね…
私がやっている読書ブログで、juneさんのブログをリンクに登録させていただきたいのですがよろしいでしょうか?
14. Posted by june   2005年09月17日 21:13
>nicoさん
はじめまして。コメントありがとうございますnicoさんは「ベルカ・・」を応援なさっていたのですね。「ベルカ・・」は、今ちょうど積んであります(笑)。読むのがいっそう楽しみになりました!

リンクの登録の件は、全然構いません。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。
15. Posted by 鉄人ママ   2005年10月18日 10:23
花まんま」私も昨日記事にしました。トラバさせていただきます。「花まんま」の舞台になる町の町名がわかります。
(想像だけど、多分あってると思います。)あと朱川さんのサイン見れます。よろしくお願いします。
よかったら、トラバ返してください。
いろんな方の感想が集まるととてもうれしいで
16. Posted by june   2005年10月18日 13:34
>鉄人ママさん
TB&コメントありがとうございます。鉄人ママさんの記事、読んできました。
花まんまの、まさに世界にいらしたとは、うらやましいです。
17. Posted by ほっぺちゅぱ子   2007年11月01日 18:01
「凍蝶」は、大阪市西成区にある飛田新地という遊郭が立ち並ぶ地域がでてきます。
主人公とおねえさんが待ち合わせる墓地は、飛田新地の隣にある大阪市営南霊園なんですよ。
18. Posted by june   2007年11月04日 15:42
>ほっぺちゅぱ子さん
こんにちわ。
実在する場所なのかなとは思っていたのですが、地理的にもここだと特定できるのですね。「凍蝶」を読んでから訪れたら不思議なきもちになりそうです。

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本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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