2005年11月04日

犬はどこだ

犬はどこだ

米澤穂信

25歳の紺屋は順調に思い描いたとおり、大学卒業後東京で銀行員となったものの、どうしてもその生活を捨てなければならなかった。故郷に戻り、犬探し専門(希望)の「紺屋S&R」を開業したところ、初めてきた依頼は失踪人探しと、古文書の解読だった。

紺屋は事務所に押しかけてきた高校時代の後輩ハンペーを雇うことになり、それぞれの依頼を調査しはじめるのですが、この二つの依頼は、読んでいると早い段階でクロスしてくるのがわかります。なのに失踪した女性・桐子探しを担当する紺屋と、古文書の解読を担当するハンペーは情報を共有しないので、それに気づかないのです。読んでいるこちらはそれがわかるので、もどかしくて仕方ありませんでした。ハンペー、ちゃんと報告しろ!とか、紺屋も一人で抱えないでハンペーに相談してもいいんじゃないかといってやりたいくらいでした。
それにこの2人、紺屋は失意の中から復活しようとしている最中でもがいているし、ハンペーは滑稽なまでにハードボイルドな探偵に憧れていて、読んでいるこちらがちょっと心配になるくらいなのです。だいたいトレンチコートを着てサングラスなんて目立ってしょうがないと思うし、喫茶店でマティーニ頼むか・・と。でも調査が進展するに従って、紺屋もハンペーも変わっていくというか、別の部分を見せてきます。このあたり読んでいておもしろいしいいのですが、ハンペーはともかく、主人公の紺屋自体がどうもつかみきれませんでした。話としては失踪人探しも古文書の解読も、どちらもおもしろかったし、その二つがクロスする後半は読むのが止められませんでした。なので紺屋がもっと自分を見せてくるところが読みたいし、妹夫婦やGENなど、使えそうな脇役もいることだし、シリーズにしてほしいなぁと思います。

桐子の失踪については、現実にもこういうことはありそうだなと思うだけに、怖かったです。地方ののんびりした雰囲気が漂っているためか、古文書などというものが出てくるせいか、主人公がチャットをしている場面すら唐突に感じられたのですが、現代の日本である限りどんなに牧歌的なところであろうとこれが現実なんですよね・・。

このダークなラストの怖さは結構好きなのだけれど、やっぱりすっきりしません。ほかに方法がなかったのか・・・と、ついつい考えてしまいます。「重力ピエロ」の読後感と似ているかも。
soleil1 at 01:00│Comments(16)TrackBack(14) 米澤穂信 

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1. 「犬はどこだ」米澤穂信  [ 読書計画+ ]   2005年11月05日 00:58
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この記事へのコメント

1. Posted by やまを   2005年11月05日 01:04
juneさんこんばんは。
紺屋とハンペーのずれたやり取りは面白かったです。
私もGENが気になる存在です。彼はいったい何者なんでしょうね。
2. Posted by ゆら   2005年11月05日 05:39
こんにちは!
紺屋とハンペーのそれぞれちぐはぐに行動している様子は、ほんと開設したばかりの探偵事務所、と言った感じで素人臭さが漂っていましたよね。大丈夫なのか?君たち?と心配でした。…でもそれがまた妙に面白かったりもしたんですけどね。(笑)
3. Posted by EKKO   2005年11月05日 11:22
こんにちは。私も読み終えたところです。
とても面白かったです〜
脇役陣が個性的で、シリーズ化したら楽しそうですよね。是非続編望みます〜
4. Posted by ゆこりん   2005年11月05日 15:16
こんにちは。
この作品の登場人物、まだまだ深く知りたいと思います。
私もGENが気になります(^^;
ラスト、怖かったですね〜{{ (>_<) }}
こういうこと、現実にもありそうです・・・。
5. Posted by june   2005年11月05日 22:38
>やまをさん
紺屋とハンペーの会話はおもしろかったですよね。「そっちかよ。」とか、くすっと笑わせてもらいました。
私もGENの正体気になります!
6. Posted by june   2005年11月05日 22:43
>ゆらさん
こんばんわ!
私もゆらさんと同じように都合よく進むなぁ・・と思ったのです。
でも、偶然が重ならなければ、この依頼はだめだったでしょうね(笑)。
おもしろかったので、いいことにします(笑)。
7. Posted by june   2005年11月05日 22:58
>EKKOさん
ほぼ同じ時期に読んでいたのですね!
おもしろくてラスト100ページは、読むのが止められませんでした。
続編でも梓の運転やGENの知識が生かされるんでしょうか。パワーアップした紺屋さんも見てみたい。
8. Posted by june   2005年11月05日 23:10
>ゆこりんさん
登場人物については、魅力的なさわりだけという感じだったので、続編でどんな風になっていくのか、楽しみですー。
GENの正体も気になります。(ずっと正体不明でいくかも?)
9. Posted by なな   2006年01月14日 10:36
田舎町で古文書だの、手紙の転送だの出てくるから、すこし前の設定なのかとおもったら、主人公はチャットしてそれで失踪の原因もわかってしまう。あぁ、今の小説には携帯、ネットは絶対必需品なんだって思いました。

読後感は気分が重くなったり、楽しくなったり複雑ですよね。

10. Posted by june   2006年01月14日 21:44
>ななさん
私も地方ののんびりした感じや古文書と、ネットの組み合わせに最初は戸惑ったのですが、今の私の生活がまさにそんな感じでした(笑)。
ほんと今の小説には携帯とかネットが出てくるのは当たり前ですよね。逆に出てこないと不自然かもしれません。私自身も、携帯やネットのない生活は考えられないのですが、便利になった反面怖いこともあるのだと、今更ながら思いました。
11. Posted by coutaca   2006年02月26日 22:31
こんばんは。トラックバックさせていただきました。
「愚者のエンドロール」でもチャットが出てきましたが、それよりも話の本筋に絡んでくる重要な役割ですね。
個人的には、紺屋がGENにだけは完全に警戒心を解きまくっているのが恐ろしくてなりませんでした。
12. Posted by june   2006年02月26日 22:41
>coutacaさん
言われてみれば、GENに対する無条件の信頼は恐ろしいですよね。今更気づきました。チャットって、お互い全くの他人という前提があるから、警戒もするけれど、知らない相手だからと現実にはいえないことが言えてしまったりという部分もあります。
これを読んだ時、ものすごくグレーというイメージだったのですが、いっそうその感が強くなりました。
13. Posted by 藍色   2006年07月10日 16:13
こんにちは。
苦い味わいの真相でしたね。
紺屋とハンペーのキャラが立っていた作品でした。
舞台が地方都市でもネットでここまでできる、わかってしまうことの怖さもありました。
続編ケースブック2が楽しみです。
14. Posted by june   2006年07月11日 22:39
>藍色さん
こんばんわ。紺屋もハンペーも、そして脇役たちもいいですよね。ここまで地味なキャラクターで魅力的というのは、すごく不思議ですが・・。
私も日頃はあまり考えずに使ってますが、ネットの怖さをあらためて感じました。そう思うと紺屋がチャット仲間に心を開くのも危ないんじゃないか・・と思えてしまいます。ケースブック2楽しみですね!
15. Posted by 苗坊   2010年03月08日 22:55
こんばんわ。
TBさせていただきました。
とても今更ながら読みました。面白かったですね。
紺屋とハンペーの調査はもどかしさを感じました。2人がタッグを組んでいたらもっと早く解決したのでは・・・と思ったり。
続編って出ているんでしょうか・・・。
16. Posted by june   2010年03月10日 09:16
>苗坊さん
こんにちわ!
二人の調査は確かにもどかしかったですよね。でもその感じがまたいいのかなとも思いました。
ケース1って書いてあったんで、続編が出ると思い込んでいたのですが、そういえば出てないですねぇ・・・。古典部シリーズや小市民シリーズもあって忙しいんでしょうか。忘れてるってことないですよね!?

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