2006年04月22日

「GO」金城一紀

GO


ひたすら爽快で楽しかったゾンビーズシリーズと比べると、在日韓国人に対する差別の問題が色濃く中心にあるためか、少し重いです。とても考えさせられました。でも重いテーマを扱っているのに不思議な軽やかさがあって、スピード感があって爽やかで、やっぱりおもしろかったのです。

在日韓国人の高校3年生杉原。いつでも彼は尖がっていて差別に対しては、力で闘っています。そして常に差別をされる立場のせいで、国籍だとか人種について、そして自分は何者なのか考えずにはいられないのです。
彼が魅力的な女の子と出会い、恋をするところから始まるので、恋愛小説のようですが、家族の話や友人の話もよくて、どちらかというと私はそちらの方が好きです。でも、恋をすることで初めて抱く恐れが、このテーマをより切実にしているので、やはり恋愛小説でなければならなかったのでしょう。
恋愛部分については、出会いの場面の唐突さとかちょっと苦手だったし、杉原が在日韓国人だと知った時の彼女の反応に、正直意外な感じがしてがっかりしてしまいました。いまどきもこうなの?と。でも自分は・・と思うと、特に気にしないとは思うのですが、理解があって差別しないとかそういうのとは違うのかもしれないと思い当たったのです。こちらが在日コリアンの少ない土地だったためか、差別について実感したことがなかったのいうのもありますが、実はこれを読むまで在日朝鮮人と在日韓国人の違いも意識したことがなかったのです。関東大震災の頃、彼らが混乱に乗じて虐殺されたという話などは聞いたことがありますが、現在もこんなふうに差別が存在しているとは思っていなかったのです。そう思うと、私が差別をしないとしたらそれは無知で無関心だからなのかもしれないと思ったのです。言われてみると在日って言葉も変なんですよね。考えてみたらわかるのに、考えようとしたことすらありませんでした。そんなだから現実は恋愛とか就職とか結婚とか・・そういう場面でいきなり問題を突きつけられて、判断を迫られた時に間違った差別をしてしまうのかもしれません。

それにしても杉原の父親がいいのです。もうめちゃくちゃで、息子に「いつか俺がこの手で殺してやる -」なんて思われてますが、いいんですよ。警察に息子を引き取りに行く場面とか、うそっ!という感じだし、奥さんに家出されてしょぼくれるところはかわいいし、息子に言う言葉もよかったりするんです。スペイン語のセリフの意味がわかったときはじーんとしてしまいました。とにかくかっこいい。
そして彼の友人たちもいいのです。みんな自分が何者かいつも突きつけられて、群れたり勉強したり、それぞれの方法で差別と闘っているのです。今も韓国、北朝鮮とは国レベルで問題が山積してますが、韓流ブームとか、戦争の歴史を引きずらない世代になったことで、個人レベルの意識がどんどん変わっていって、差別がなくなるといい、心からそう思いました。愛国心を教科書に載せなければ教えることのできない国なのに、何でここで生まれてここで育った人をそんなふうに差別するのか?そんな当たり前のおかしさにあらためて気づかされました。
と、色々考えてしまいましたが、それも含めて魅力的な作品です。読んでよかったです!
soleil1 at 08:41│Comments(17)TrackBack(12) 金城一紀 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. チャット会開催します。  [ 活字中毒日記! ]   2006年04月22日 18:22
みなさん、こんばんは♪ 本日チャット会を開催します。 開始時間は本日22日(土)午後10時30分です。 チャットルーム()は、こちらからお入りください。 初めてのかたも是非お気軽にご参加いただけたら嬉しく思います。 是非、お時間許す限りお顔をお...
2. 「GO」(金城一紀著)  [ たりぃの読書三昧な日々 ]   2006年04月22日 21:26
 今回は 「GO」 金城 一紀著 です。この本は平成12年度第123回直木賞受賞作ですね。
3. 被差別部落のわが半生  [ ディックの本棚 ]   2006年04月22日 22:44
被差別部落のわが半生  著者の山下力(つとむ)氏は1941年生まれ、部落解放運動の初期の頃から、激しい差別糾弾闘争を実行してきた方で、現在は奈良県部落解放同盟支部連合会理事長、県議会議員6期目だそうである。  本書は、上の肩書きから感じるような堅苦しさ....
4. 金城 一紀の「GO」読了  [ Grave of memory ]   2006年04月23日 00:30
GO 金城 一紀 著 「GO」 ★★★ 僕は何者?日本で生まれ,日本で育ったけれど,僕は《在日》と呼ばれる。元ボクサーの親父に鍛えられ,これまで喧嘩二十三戦無敗。ある日僕は恋に落ちた。彼女はムチャクチャ可愛らしい《日本人》だった―――。軽快なテンポとさわや....
5. 「GO」金城一紀  [ 本を読む女。改訂版 ]   2006年04月23日 01:48
GO発売元: 講談社価格: ¥ 470発売日: 2003/03売上ランキング: 4,739おすすめ度 posted with Socialtunes at 2006/02/09 以前、在日韓国人(か朝鮮人か知らない、聞いてもない)の知り合いがいた。 こてこての大阪弁で、明るくて面白くて人気者だった。 私は一回約束...
6. 「GO」金城一紀  [ Ciel Bleu ]   2006年04月23日 11:03
 [amazon] [bk1] 都内の私立高校に通う在日コリアンの「杉原」。中学3年の時に北朝鮮籍から韓国に籍を移したのをきっかけに、一念発起して日本人の通う高...
7. 「GO」金城一紀  [ AOCHAN-Blog ]   2006年04月24日 01:10
タイトル:GO 著者  :金城一紀 出版社 :講談社文庫 読書期間:2005/09/29 - 2005/09/30 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 僕は何者?日本で生まれ、日本で育ったけれど、僕は"在日"と呼ばれる。元ボクサーのオヤジに鍛えられ、こ...
8. GO 金城一紀  [ 苗坊の読書日記 ]   2006年06月21日 16:26
4 GO 杉原は私立高校に通う高校生。他の人と違うのは、日本人ではなく、韓国籍であること。 そのせいで、日本人からひどい差別を受ける。 ヤクザの父をもつ加藤以外は高校では誰も話しかけてこない。 その加藤の誕生パーティに呼ばれ、しぶしぶ出かけた杉原の前に一人の女....
9. 「GO」金城一紀  [ しんちゃんの買い物帳 ]   2007年10月12日 17:00
GO (講談社文庫)金城 一紀 (2003/03)講談社 この商品の詳細を見る 日本で生まれ、日本で育ったけれど、朝鮮籍を持つ在日朝鮮人である杉原は、韓国籍に変えると共に、民族学校ではなく日本の高校へ行くことを決めた。そして、元ダ (Fz @
10. GO 金城一紀  [ "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! ]   2008年02月09日 21:54
3 GO ■やぎっちょ書評 会社の人に貸してもらった本です。念のためもう一度宣言しておきますが、やぎっちょは「本を貸してくれる人」なら誰でも好きです。愛です。ピースです。 で、この本。 実はちょっと避けてたんですよねぇー。個人的には在日とか国籍とか、そんなのど....
11. 金城一紀「GO」  [ ご本といえばblog ]   2010年11月23日 09:19
金城一紀著 「GO」を読む。 このフレーズにシビれた。  でもな、もしキム・ベイシンガーが俺に向かって、ねえお願い、国籍を変えて、なんて頼んだら、俺はいますぐにでも変更の申請に行くよ。俺にとって、国籍なんてそんなもんなんだ。 恋愛小説である.恋愛は障害があるほ....
12. GO/金城一紀  [ tom's garden ]   2010年12月07日 23:23
その昔、窪塚洋介と柴崎コウの映画は観たけど、今回は原作を。 「ゾンビシリーズ」を読んだ時にはそんなに感じなかったけど、重い。 ストーリーは軽快で、主人公は友だちとはしゃぎ彼女と恋愛し、青春を謳歌しているんだけど、その底にはいつも「在日」という言葉があ...

この記事へのコメント

1. Posted by ディック   2006年04月22日 22:28
june さん、ぼくはこちらを読んだのが最初でした。もうかなり以前になります。差別の問題の扱い方も含め、強い印象が残っています。
『レヴォリューションNo.3』は本日、『フライ、ダディ、フライ』は24日に『ディックの本棚』に感想を掲載します。
差別問題については、もしよろしければ下記を読んでください。
http://blog.livedoor.jp/dick21/archives/17436060.html
2. Posted by june   2006年04月22日 23:51
>ディックさん
ゾンビーズシリーズから読んだので、この重さが意外でした。でもスピード感と軽快な文章のせいか、すんなりと世界に入ってしまって、素直に色々考えることが出来た気がします。確かにこれは強烈な印象があります。

差別問題についての記事読みました。無知でしたが、この本をきっかけに少しづつでも知っていこうと思います。
3. Posted by シリウス   2006年04月23日 00:29
ゾンビシリーズは面白いようですね。
本書では良い印象が持てなかったんですけどね。
直木賞=面白いに決まっている という図式に囚われていたのかもしれません。
4. Posted by ざれこ   2006年04月23日 01:52
確かに恋人の言動は意外でした。がっかりでした、いやもう確かに。
でも私、大阪にずっと住んでるのに、この自分の無知っぷりは・・・。と唖然としてしまいました。いろいろ考えましたねえ。
ゾンビーズシリーズはさらに明るくなってますけど、この頃から一本筋の通ったメッセージを金城さんは伝え続けてると思います。それをしっかり感じて読みたいな、といつも思ってます。
次は対話篇読まれてるんですね。いい本ですよ、一番重いですけど。
5. Posted by りりこ   2006年04月23日 06:16
私は映画から観たのですが、映画も原作も大好きです。桜井のあの態度は私もかなりがっくりきたけれど。映画の方だと桜井の家の感じがよく出ていて、桜井が奔放に生きてるようでいて、実は両親をすごく愛して信じている結果(という言い方は適切じゃないかもしれませんが)なんだろうなって。だから杉原に会って初めて考えたであろう桜井の胸中をいろいろと考えてしまいました。私もこれで在日の言葉の意味とか初めて知りましたよー。いろんな意味でガツンとくるお話でした。
6. Posted by 四季   2006年04月23日 11:06
私も映画を観たんですが、本が先だったせいか、映画には原作の軽やかさが少し足りないかなーって気もしました。もっと真面目に問題に向かってるという感じだったような。問題意識を持つ以前に「楽しかった!」だったんですけど、映画はもっと考えさせられちゃうというか。
でも映画も良かったですよ。窪塚くん、かっこよかったし、両親役の山崎努さん&大竹しのぶさんもいい味出してます〜。
7. Posted by 四季   2006年04月23日 11:07
あ、言葉足らずですみません。
「問題意識を持つ以前に」というのは原作の方です。言葉が抜けちゃいました。
8. Posted by june   2006年04月23日 22:54
>シリウスさん
ゾンビーズシリーズは、爽快なくらい突き抜けていて、おもしろいですよ。「GO」ほど重くはないけれど、おもしろい中にも一本筋の通ったものがあって、考えさせられたりもします。おすすめです。
9. Posted by june   2006年04月23日 23:06
>ざれこさん
奔放な雰囲気の彼女が、ああいう反応をしたというのに驚いたし、がっかりもしたんですよね。
金城さんの小説って、読みやすくておもしろくて、楽しんで読んでいるうちに、元気をもらったり色々考えさせられたり・・。いいですよね。
対話篇読み終わりました。静かな世界でした。こういうのもいいんですねぇ(しみじみ)。
10. Posted by june   2006年04月23日 23:16
>りりこさん
ああ、そうかぁ・・。桜井の家庭の様子から想像すれば彼女の反応というのも、納得できるものだったのですね。彼女は自分が当然と思っていた価値観を、杉原との出会いを通して、ちゃんと考え直したんですよね。その過程での彼女の胸中を考えると、これを読んで色々考えた自分にも重なるかもしれません。いえ、もっと切実だったはず。
ほんとこの小説にはガツンとやられました。
11. Posted by june   2006年04月23日 23:28
>四季さん
映画は見ていないのですが、窪塚くんの杉原だけは知っていたので、読んでいる間中窪塚くんが頭の中で動き回ってました。映画の方が重いのですね。あえてそうしたのか、文章の軽快さがうまくでなかったのか・・。
実はこの週末「フライ・ダディ・フライ」のDVDを見ました。小説に比べると物足りない気もしましたが、期待以上でした。堤さんも岡田君もよかったですー。山下くんにはもうちょっとはじけてほしかったけど(笑)。やっぱりこれも映画を見てみます!山崎努さん&大竹しのぶさんの両親も、見てみたいです。
12. Posted by 苗坊   2006年06月21日 16:28
こんにちは^^
TBさせていただきました。
やっぱり金城さんはいいですね〜。
在日韓国人という言葉は、ゾンビーズの舜臣を思い出しました。
舜臣と違うのは、恋愛をしていることでしょうか^^;
杉原の家庭はいいですね。
遠慮しないし、本気でケンカするし、父がカッコよかったです^^
13. Posted by june   2006年06月21日 22:51
>苗坊さん
ゾンビーズシリーズに比べるとだいぶ重いですが、これもいいですよね〜。楽しんだけれど色々考えさせられました。

そういえば舜臣はかっこいいのに(すみません、私の頭の中ではV6の岡田君なのです)恋愛はなかったですね。ここでは差別を前面に出すために、わかりやすく恋愛小説にしたような気もします。

杉原の父いいですよねー。めちゃくちゃなんだけど、かっこいいと思いました。
14. Posted by しんちゃん   2007年10月12日 17:07
こんにちは。
在日コリアンの多い土地に住んでるので、自分のブログにどこまで書いていいやら迷いました。
彼らのいろんな側面を知ってるだけに、差別発言にならないように注意しました。
こういうのは単純に面白かった、で済ませられないから難しい。
15. Posted by june   2007年10月14日 19:48
>しんちゃん
色々と知っていると、それはそれで読んで思うことがあるんですね。これから読みにいきます。

今思い出すと、おもしろかったという印象よりも、考えてしまったという印象がより強く残ってます。でも歴史とか事実を知らないというのは、やっぱりだめだって思いました。
16. Posted by かなかな   2008年03月16日 18:05
『レヴォリューションNo.3』がすごく良くて、
私もちょっと重く感じました。
「在日」という言葉は金城さんの中ではとても
意味のある言葉なんでしょうね。同年代ではありますが、私の今までの人生の中で、この言葉を
意識して考えたことはありませんでした。
歴史的な背景とか、現代においての諸問題とか、
全く知らなかったです。金城さんの小説を読んだ後って、面白い!というだけでなく、何か一つ心に石を置かれるような感じがします。重しというのでしょうか。軽いだけではなく、ずしっと残るものを。次は「SPEED」行きます!
17. Posted by june   2008年03月16日 21:50
>かなかなさん
これ、やっぱりテーマがテーマなんでちょっと重いですよね。でもだからといって、やっぱり読んでよかったと思うわけで、かなかなさんが
>何か一つ心に石を置かれるような感じ
ってコメントしてくださいましたが、ほんとそんな感じです。
金城さんにとって「在日」というのは、いつでも自分から離れることはない感覚なのかなって思います。作品を通して投げかけられたテーマ、しっかり胸に刻まなくちゃって思います。
「SPEED」は楽しいですよー。また語りましょう!

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

なお、当ブログでは記事に関連がないと思われるトラックバックやコメントは削除させていただきます。予めご了承ください。


【ほんぶろ】さんで特集ページを作っていただきました。本について、自分について語ってます・・。
こちらからどうぞ

本以外の日々のこと

+日々のこと+

Categories
Archives
livedoor プロフィール