2006年06月19日

「夏のロケット」川端裕人

夏のロケット


よかったですー。こういう話ってすごく好きなのです。サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞と帯にありましたが、これはミステリーというよりも青春小説です。それも、大人になった宇宙少年たちのちょっと苦くて爽快な青春小説。ロケットのことなど何も知らないし、理系青春小説と帯にあったので、私にわかるだろうか・・と少し躊躇しましたが、ロケットの歴史や成り立ちなど、ものすごく基本的なことからわかりやすく書いてあったので、理系の知識が全くない私でも(ロケットとミサイルの裏表の部分に初めて気づいたというレベルです)すんなり楽しむことができました。宇宙って、あまりに大きすぎてわくわくする以前に恐ろしさを感じてしまうのだけれど、こういう本を読むと、改めてその魅力を感じます。こういう夢を持つっていいなぁと思うし、本気で実現させようとするロケッティアたちが、すごく楽しそうで幸せそうで、まぶしかったです。

合言葉は「火星へ!」スーツを脱ぎ捨て、ぼくらは再び宇宙をめざす。 〜帯より

高校時代ロケット班で、火星へ行くためのロケットを本気で造ろうと思っていたぼくたち5人。ぼく(高野)は、卒業後新聞社に就職し、体育会系の北見は一流商社に入社した。教授こと日高は宇宙開発事業団で研究を続けており、職人肌の剛太は大手特殊金属メーカーの研究者になった。そして氷川は高校卒業後ロックシンガーとして成功した。それぞれの目的と打算を抱きながらも再び集まり、非合法ロケットを作り出したぼくたちは、テロリストのミサイルとの関連から警察に追われることになる。

「核弾頭を運べばミサイルになるし、人間や人工衛星を運べばロケットになる」いわれて見ればそうですよね。そんな基本的なことにいまさら気づきました。だいたいロケットは国家で作る莫大なお金のかかるものだと思っていたし、ロケットを作ろうと思う人がいるなんて、考えたこともありませんでした。大空を飛びたかったらパイロット、宇宙に行きたかったら宇宙飛行士と思い込んでいたので、こういう夢が存在して、個人でロケットを作って火星をめざすという設定に驚いたのです。でも、はじめは子供の思い描くようなとてつもなく無謀な夢に思えた火星計画が、読み終わる頃にはもしかしたら・・という気がしてきました。何だかぞくぞくするような感じでした。

それぞれの道に進んで、それぞれ目的が違ったり、打算があったとしても「火星へ!」という合言葉のもとに集まった仲間が高校時代のロケット班だったというのがいいんです。ロケットにも、ロケットとミサイルという陰と日向の部分があるように、大人になった彼らにも陰の部分と日向の部分があります。宇宙に対する情熱や憧れは、それぞれ熱く燃えている、でもそれぞれが高校時代とは違うものも抱えてしまっている、それがまたほろ苦くていいのです。川端さんの作品は「川の名前」もとてもよかったのですが、これもおすすめです!
soleil1 at 20:23│Comments(6)TrackBack(6) 川端裕人 

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1. 「夏のロケット」 川端裕人  [ 今日何読んだ?どうだった?? ]   2006年06月21日 21:14
夏のロケットposted with 簡単リンクくん at 2005.10.25川端 裕人著文芸春秋 (2002.5)通常2-3日以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る
2. 「夏のロケット」川端裕人  [ ナナメモ ]   2006年06月22日 00:05
夏のロケット 川端 裕人 高校時代、火星に憧れ、「天文部ロケット班」でロケットの打ち上げ実験に熱中していた主人公の高野。 社会人となった今は新聞社で科学記事などを書いている。過激派のミサイル爆発事件の取材で同期の女性記者芦川純子を手伝う事になり、現場...
3. 「夏のロケット」川端 裕人  [ 図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜 ]   2006年06月24日 05:31
「夏のロケット」川端 裕人 ★★★★☆ *国内・ミステリー(?)・ファンタジー・青春・小説 川端裕人が好きだ、と言っている割に読んでなかった大事な一冊。氏の代表作ともいえる、サントリーミステリー大賞優秀作受賞作。 えっと、これもミステリー?というくらい...
4. 「夏のロケット」川端裕人  [ AOCHAN-Blog ]   2006年08月18日 17:27
タイトル:夏のロケット 著者  :川端裕人 出版社 :文春文庫 読書期間:2006/07/21 - 2006/07/25 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 火星に憧れる高校生だったぼくは、現在は新聞社の科学部担当記者。過激派のミサイル爆発事件の取材で同期の...
5. ロケッティア  [ Star Gazer`s Cafe ]   2006年09月20日 18:53
夏のロケット 川端 裕人 先日書いた記事でも少し触れましたが、「夏のロケット」の紹介です。 主人公は30代前半の新聞社の科学部担当記者。 過激派のミサイル爆発事件の取材で同期の女性記者を手伝ううちに高校時代の天文部ロケット班のカゲに気づく。 以下、若...
6. 「夏のロケット」(川端裕人著)  [ たりぃの読書三昧な日々 ]   2006年12月20日 23:17
 今回は 「夏のロケット」 川端 裕人著 です。この本は平成10年度の第15回サントリーミステリー大賞の優秀作品賞受賞作ですね。

この記事へのコメント

1. Posted by まみみっくす   2006年06月21日 21:15
4 この作品よいですよね。文庫版の表紙もかわいくていいなと思いました。文系男子が宇宙を目指す「2005年のロケットボーイズ」(五十嵐貴久著)もかなりおもしろかったので,よかったら読んでみてください!
2. Posted by june   2006年06月21日 23:08
>まみみっくすさん
これよかったですー。川端さんの描く少年と昔の少年に、すっかりやられてる今日この頃です。「2005年のロケットボーイズ」も気になっていたんですが、そちらもおもしろいんですね。この勢いでいってみます!
3. Posted by なな   2006年06月22日 00:05
川端さんの描く少年いいですよね。
その後図書館で「銀河のワールドカップ」と出会いましたか?
「2005年のロケットボーイズ」もいいのですが、なんだかこの本とごちゃ混ぜになっている私。juneさんと私、似たタイプなので、混乱しないようどうぞ気をつけてください。
4. Posted by june   2006年06月22日 15:23
>ななさん
今図書館から帰ってきたのですが、「銀河のワールドカップ」ありませんでした。私の予約枠は、今いっぱいで予約できないんで、こうなったらしつこく通ってでも手に入れます!
おまけに「2005年のロケットボーイズ」もありませんでした。いつも書架にあったのに・・。チェックだけはしてたんですが、こんなことなら早く借りていればよかったです。

私もこの2作、きっとごちゃ混ぜになりますね。気をつけます!
5. Posted by すの   2006年06月24日 05:36
タイトルは似てますが、「2005年のロケットボーイズ」と「夏のロケット」は違います。絶対、違います!(笑)
「夏のロケット」って、大人のくせに男の子の青春小説、「2005年〜」高校生のドタバタ青春コメディーという感じ。
「銀河のワールドカップ」は、すごくおもしろいけど、他の男の子を描く川端作品と比べると、ちょっと異質かも。他の作品ほどは、きっと残らないですね。
いや、すっげぇおもしろいのですが・・。
6. Posted by june   2006年06月25日 12:04
>すのさん
まぁサザエさんズの会話なので、許してください(笑)。なるほど、「夏のロケット」が大人になった少年の青春小説で、「2005年〜」は現役の青春小説なんですね。頭に入れました!たぶん大丈夫です。
「銀河のワールドカップ」はすごく楽しみにしてるんですが、すっげぇおもしろいのに残らないって?おもしろいけれど、さらっとしてるんでしょうか。とりあえず読まないと気がすまないので、確かめてみます。

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本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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