2006年06月26日

「ひなた」吉田修一

ひなた


よっしゅう(伊坂さんの真似です♪)の本は、何気ない日常を描いたものだと思っていると、思いもしないところで闇を覗くことになったり、軽やかなのにどこか不安な気持ちにさせられます。そして、その不安さや、ざらりと残る感覚がまた妙に気になるのです。これもその感覚はしっかりありました。でも登場する女性の職業が編集者に海外ブランドの広報という華やかさのせいか(「JJ」の連載と知って納得)、軽やかで読みやすくなっています。

一組のカップル、一組の夫婦、そして1人の男の物語 さらけださない、人間関係 〜帯より

海外ブランドHの広報として働き始めた新堂レイと大学生の大路尚純のカップル。尚純の兄で信用金庫に勤める大路浩一とファッション誌の副編集長を務める大路桂子の夫婦の、それぞれの立場から春夏秋冬が描かれます。恋愛小説でもないし、何かぐちゃぐちゃなことが実際に起こるわけでもありません(いや、起こったといえば起こったか・・)。どちらかというと淡々と進んでいきます。でも一見平穏で安定してみえるそれぞれの関係も、一人の語りで簡単にぐらりと不安定になったり、暗転したりするのです。視点を変えて連作にすることで、へぇーあの人はあの時こんなことを考えていたんだという楽しみではなくて、この人ってこんなこと抱えてたんだ・・と、陰の部分がだんだん見えてくるのです。だから「ひなた」というタイトルにしたんでしょうか。表から見てるだけだとわかりませんが、みんな結構ハードなことを抱えていて、そしてそれは時折現実に現れそうになるけれども、それぞれどうにかやりすごしていくのです。そういう日常のあやうさとか、カップルや夫婦の間の微妙な距離感がすごくリアルに感じられました。
新堂レイが元レディースだったとか、出だしがおもしろくて読みやすかったのですが、このラストはだまされたような感じです。釈然としないまま置き去りにされました。でもそういう読後感が好きだったりもします。

soleil1 at 23:23│Comments(15)TrackBack(7) 吉田修一 

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1. 「ひなた」吉田修一  [ ナナメモ ]   2006年06月27日 00:10
ひなた吉田 修一新堂レイ。大路尚純。大路桂子。大路浩一。それぞれが一人称で語る春・夏・秋・冬の出来事。元ヤンキー、新卒で有名ファッションブランドHの広報に採用された進藤レイ。レイの恋人で大学生の大路尚純。彼の兄で信用金庫で働き演劇サークルに所属する大路浩一...
2. ひなた、吉田修一  [ 粋な提案 ]   2006年06月27日 14:46
カバー写真は安村祟。 1996年「Water」で文学界新人賞最終候補。1997年「最後の息子」で、第117回芥川賞候補。2002年「パレード」で第15回山本周五郎賞受賞。「パーク・ライフ」で第127回芥川賞受賞。??@
3. <面白い>『ひなた』 吉田修一 (光文社)  [ 活字中毒日記! ]   2006年06月28日 20:12
ひなた吉田 修一 / 光文社(2006/01/21)Amazonランキング:位Amazonおすすめ度:Amazonで詳細を見るBooklogでレビューを見る by Booklog “都会人の持つ空虚感”を的確に描写。 この作品は雑誌“JJ”に連載されていたものを大幅改稿したもの。 やはり女性読者を強く意...
4. ひなた [吉田修一]  [ + ChiekoaLibrary + ]   2006年06月29日 17:44
ひなた吉田 修一 光文社 2006-01-21 新堂レイは、誰もが知っているブランド、Hの広報に就職したばかりの新卒。昨年、元同級生の大路尚純と偶然再会して付き合い始めた。尚純は一浪でまだ学生、文京区小日向の実家に家族と暮らしている。その実家に兄浩一と兄嫁の桂子が引...
5. 最近の主な仕事。  [ § sarasouju.com § ]   2006年06月30日 10:14
■ Men's JOKER (メンズ ジョーカー) 2006年 07月号 ・巻頭ほかファッションページ。 ■ MEN'S CLUB(メンズクラブ)2006年 07月号 ・カタログページ、連載「達人の履歴書」。 ■ All About「forM」 ・「小物で魅せる、エレガント・プレッピー」ほか etc. ....
6. 「ひなた」 吉田修一  [ 今日何読んだ?どうだった?? ]   2006年07月09日 09:14
ひなたposted with 簡単リンクくん at 2006. 3.18吉田 修一著光文社 (2006.1)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る
7. ひなた    〜吉田 修一〜  [ My Favorite Books ]   2006年09月09日 23:14
男女4人がそれぞれ話しを進めていく。 春夏秋冬で1年間をそれぞれがそれぞれの立場で 他の3人と周りを取り囲む人々の現状も踏まえながら話を続けていく。 それぞれが何かしら不安や悩みを抱えながら、 日々の生活 

この記事へのコメント

1. Posted by なな   2006年06月27日 00:12
juneさん、こんばんは。

なんとも男の人たちが情けない物語でした。
ラストの不安感。普段は突き詰めずにさらりと流している部分だったりしてドキリとしました。
2. Posted by 藍色   2006年06月27日 14:45
juneさん、こんにちは。
新堂レイや大路桂子の仕事内容って、やっぱり掲載誌の関係があったのですね(雑誌をほとんど読まない私、汗)。
軽快な会話の裏にある陰の部分や、距離感がリアルでした。
3. Posted by 藍色   2006年06月27日 17:20
juneさん、すいません。
反映されなかったので、再度送ったらダブってしまいました。(汗)。
お手数ですが、余分は削除してくださいますようお願い致します。
4. Posted by june   2006年06月27日 21:51
>ななさん
こんばんわ。男の人の方はさえませんでしたねぇ・・というか、女の人が華やかでできすぎという気もしました。JJだからでしょうか(笑)。
ラストのこういうあやうさって、見ないふりですよね。突き詰めたらとてもやっていけないような気がします。
5. Posted by june   2006年06月27日 21:53
>藍色さん
こんばんわ。
やっぱり女性の職業はJJだからこういう設定なんだろうなーなんて思ってしまいました。あ、もちろんJJは読んでませんが雰囲気です雰囲気(笑)。
ほんとリアルでした。吉田さんは、こういう日常の不安とかあやうさをさらりと書くのがうまいなぁと思います。

TBの件は、きっとライブドアのせいです。こちらこそお手数をかけてすみませんでした。
6. Posted by トラキチ   2006年06月28日 20:17
4 juneさん、こんばんは♪
TBさせていただきました。
よっしゅうさん、結構好きだったりします。

確かに、掲載雑誌の影響も含めて田辺さんを筆頭に男性陣情けないですね(笑)

桂子さんは、不倫の是非は別として魅力的に感じました。
さりげなく不倫を許容するのもよっしゅうさんの特徴だと思います。

でも、JJ読まれてる方って、結婚意欲そがれないかな?
7. Posted by june   2006年06月29日 10:18
>トラキチさん
よっしゅうさんの作品って、軽やかなのに、ざらっとしたひっかかりが隠れていて、妙に気になります。結構好きです。

私は小説でも不倫には否定的な見方をしてしまうんですが、桂子さんには不思議と嫌悪感を感じませんでした。彼女の全てのものに対する距離感のせいでしょうか。
これ、結婚意欲そがれますよ。結局仕事にうちこむレイだけが前に向っていくような感じですもん。
8. Posted by chiekoa   2006年06月29日 17:45
ほんと、独特の読後感でしたよね…それがまたよく。でもすっきりもせず(笑)。
9. Posted by june   2006年06月29日 22:09
>chiekoaさん
吉田さんの作品って、どれもすっきりしない気がします。読むと不安になるし・・。
でもそれがまたよくって、ひかれてしまいます♪
10. Posted by まみみっくす   2006年07月09日 09:16
3 タイトルの「ひなた」ってそういう意味かぁ。とjuneさんの文章を読んで納得しました。もやもやっとした話に奇妙な表紙,そして題名の意味は??ともやもやしまくってたので,ひとつわかってすっきりしました♪(笑)
11. Posted by june   2006年07月09日 22:12
>まみみっくすさん
「ひなた」の意味は、勝手に私がこじつけたような気がします^^;
妙な表紙とこのタイトルは、どうもすっきりしなくて気になりますよね。
何で人形ケース?日本の平均的な家屋や家族の象徴?とか色々考えましたが、よくわかりませんでした。
12. Posted by す〜さん   2006年09月09日 23:07
置いてけぼりにされた一人です・・。
で、帯にあったもう一人の男って誰なんだろう?って
ずっと思ってるんですけどね。
誰なんでしょう?
それぞれに関係してくる男なんでしょうかね?
13. Posted by june   2006年09月10日 19:59
>す〜さんさん
もう1人の男って、何も考えずにお兄さんの友達のあの人だと思ってました。あらためて考えると、誰のことかわからなくなってきました・・。
14. Posted by うー   2006年10月20日 23:42
夫婦間の微妙な距離感、わかるような気がします。
もともとは他人だったのに、ある日突然新しい家族ができあがってしまうんですもんね。
確かにリアル、吉田修一の飾らないリアルさや危うさが好きでつい手に取ってしまいます。
15. Posted by june   2006年10月21日 21:31
>うーさん
吉田さんはこういう微妙な距離感をうまく書きますよね。確かに危うさ感じます。日常生活の中にある危うさをふと覗き込んでしまった・・そんな不安さがあるのについ手にとってしまいます。これって好きってことなんでしょうね。

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このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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