2006年11月27日

「クローズド・ノート」雫井脩介

クローズド・ノート


ミステリーを書く方だと思っていたので、直球の恋愛小説に驚きました。そしてそれがまたよかったのです。ベタで展開が読めるんですが、それでもいいんです。胸の中がじわじわと暖かさで満たされました。

教育大に通い、マンドリンクラブの練習や文具店のアルバイトにいそしむごく普通の女子学生香恵は、ある日一人暮らしの部屋で前の住人が置いていったノートと手紙の束を見つけます。そのノートは伊吹という小学校の教員をしている女性のものでした。マンションの自分の部屋を見上げていた石飛との、バイト先の万年筆売り場での出会い。そして香恵は、教え子のこと、恋のことなどが綴られた伊吹のノートに励まされ少しずつ成長していく。

「パパとムスメの7日間」に続いてベタとか書いてますが、ベタって決して悪いものじゃないんですよね。楽しめたり、読後にあたたかな気持や爽やかな気持が残るものって、展開が読めようがありきたりな設定だろうがいいものはいいって思います。
この場合はやっぱり香恵と伊吹先生の力なんだろうと思います。2人のキャラクターのよさに尽きると思います。香恵は天然とか面白いとか言われながらも、自然に共感できるキャラクターです。そしてとにかく伊吹先生がいいのです。伊吹先生の仕事に対する姿勢、恋に悩む姿のひたむきさ、いたずらっぽい部分・・読んでいるうちに伊吹先生に引かれていく香恵と一緒に、私も自然に伊吹先生にひかれていきました。香恵もいいけれど、やっぱり伊吹先生に引っ張られた気がします。
香恵と伊吹先生、それぞれの恋が重なりあいつつ進みますが、気づかないのは香恵だけなので読んでいてもどかしくて切なくて・・。でも、そのもどかしさもまたよかったです。(でもあんなに生徒のことを思っていた伊吹先生が、大切な教え子たちからの手紙を何故取りに来ないのかは不思議に思ってほしかったです・・)

あとがきを読んで驚きました。伊吹先生にひかれたのは、こういうしっかりとした想いが底に流れていたからなのかもしれません。途中切なくて哀しくてほろっとしてしまいましたが、ラストはもっと大きなものに包まれたような優しい気持になりました。

ところで、大学時代の親しい友達がマンドリンクラブだったのです。コンサートを聴きに行ったのを思い出して懐かしくなりました。そして再び万年筆を手にしたくなりました。大学時代は全部万年筆でノートをとってたんです。お祝いでもらったモンブランだったのだけれど、10年ほど前に落としてしまったのです。気に入ってたのに・・。いまさら思い出して悲しくなりました。

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この記事へのコメント

1. Posted by chiekoa   2006年11月28日 13:24
万年筆!使ってらっしゃったんですか。なんかステキ…うらやましいです。まだにぎったことすらない私…。
2. Posted by モンガ   2006年11月28日 19:06
こんばんは、juneさん。
万年筆の部分がエラク長いなーと思ったりしたんですが、読み手に取っては、そこが気にいったりするんですね。(違和感はないんですが)
ノートが効いていて、本当に読んで、アーァ良かったなーと思いました。
3. Posted by すの   2006年11月28日 21:25
べたべたのべたな作品でしたね。小説として客観的に評価すると、決して高い評価はできないのですが、大好きな作品と言いたい作品です。
「真実の力」と、それを伝えきれる作家の腕があればこその作品だったということは、あとから気づきました。最初は「真実の力」だけだと思っていたのですが、。
さだまさしや、灰谷健次郎という、ぼくの心を育んでくれた人と作品が触れられていて、とても嬉しかった。「太陽の子」を近く再読したいと思っています。
4. Posted by june   2006年11月28日 21:55
>chiekoaさん
万年筆は、筆圧が弱くてもすらすらと書けるので手も疲れないし楽なんですよ。字も濃くて見やすいし、オススメです。でも私が使うとミミズがのたくったみたいになっちゃうんで、解読できるのは自分だけなんですけど・・。
5. Posted by june   2006年11月28日 21:59
>モンガさん
確かに万年筆の部分は、あんなに長くなくてもよかった気がしてきました。でも文具好きなので、私は読んでいて楽しかったです。
ノートよかったですよね。書いている伊吹先生も読んでいる香恵も等身大で、共感できました。
6. Posted by june   2006年11月28日 22:10
>すのさん
おお!辛口のすのさんもこの作品は好きなのですね。ベタでもいいものはいいんです!「あとがき」を読んでいっそうよさが増したのは事実ですが、物語自体もよかったと思います。
さだまさしの「案山子」に、灰谷健次郎と、女子大生が主人公なのにずいぶんと渋い・・と思ったのですが、それも教育大に通う学生らしくてなんだか微笑ましかったです。
7. Posted by なな   2006年11月28日 22:47
juneさん、こんばんは。

そう、これはあとがきを読んでさらに納得の物語でした。
香恵も伊吹先生も素敵な女性でしたね。
8. Posted by エビノート   2006年11月28日 23:49
こんばんは!
確かにベタ、ありがちな物語なのかもしれませんが、それ以上に読者の心を揺さぶる力がありましたよね。
伊吹先生のノートにあふれるひたむきさが素晴らしい作品でした。
9. Posted by june   2006年11月29日 21:21
>ななさん
こんばんわ。思いもかけないあとがきにおどろいて、再びじーんとしてしまいました。
香恵も伊吹先生も、等身大ですごく好感がもてました。
10. Posted by june   2006年11月29日 21:24
>エビノートさん
伊吹先生のノートよかったですよね。ひたむきさに心をうたれました。
伊吹先生みたいな先生が担任の先生だったらいいでしょうね。私が生徒だったら、やっぱり伊吹賞を狙ってがんばっちゃうんだろうななんて思いました。
11. Posted by じゅん   2006年11月30日 11:22
どうもー
2人の女性がステキでしたよね〜
にしても、リアルに描かれてるのであれば雫井さんてスゴイ!
オレもちょっとはわかるようになりたいものです(笑)
万年筆使ってたんですか!
ノートまでとってたとは、ステキですねー
それなら、もっと話に入りこめそうですね。
12. Posted by Spica   2006年11月30日 21:23
こんにちは!
万年筆でノートをとるなんて素敵ですね。きっと尚更この作品が楽しめたのではないでしょうか?!
本当に心の温まる良い作品でしたね(^^)
13. Posted by june   2006年12月01日 14:53
>じゅんさん
2人の女性には共感もできたし、好感ももちました。等身大って感じです。こういう女性を描くって、雫井さんすごいと思います。
私が大学生の頃って、まわりもわりと万年筆を使っていた気がします。卒論も万年筆で書きましたから。って時代がわかりますね・・。当時はワープロも持っていない人がほとんどだったのです。もってても画面が1〜3行くらいだったし、今思うと信じられないような話です。
14. Posted by june   2006年12月01日 14:55
>Spicaさん
はい、万年筆の部分は、かなりマニアックでわからないものばかりでしたが、読んでいて楽しかったです。文具一般好きなのです。
こういう作品を読むと、心が温まりますよね。素敵な小説でした。
15. Posted by まみみ   2006年12月06日 19:14
母親が‘赤ペン先生’をやってて、確か採点に使ってたのが万年筆でした。わたしもあの書き心地とか握った感じが好きで…いつか欲しいと思いつつ、値段が高くて諦めてます。
親にねだって買ってもらうか?!(←この年にして…)
16. Posted by june   2006年12月06日 23:21
>まみみさん
万年筆は一本お気に入りを買ってしまえば、ずっと使い続けられるんでしょうし、買えない値段じゃないのに、どうして後回しになっちゃうんでしょう。
でも、この本をきっかけに文具のサイトとか見ているとムクムクとほしい気持がわいてきます。この際どこかに入学してお祝いをもらおうかしらん。って、いまさらどこが入れてくれるんでしょう(涙)。
17. Posted by 苗坊   2007年01月10日 13:45
こんにちは〜^^
私はベタって言われている作品が結構好きだったりします。
悪いもんじゃないですよね〜。
この作品も本当に素敵な作品でしたね。
またあとがきが素敵で。
感動しました。
香恵も可愛らしいし、伊吹先生がどれほど熱心に仕事をしていたのかが伝わってきました。
私も一生徒になってましたね。
18. Posted by june   2007年01月12日 15:59
>苗坊さん
あとがきが良かったですよね。あれで伊吹先生の魅力の秘密がわかったような気がしました。
ベタでもいいんです。優しくてあたたかな気持ちになれました!

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本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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