2006年12月27日

「ブラバン」津原泰水

ブラバン


津原さんはホラーから恋愛小説、近未来SFまでジャンルを軽々と飛び越えて、色々書く人だとは思ってました。一番好きなのは恋愛小説の「赤い竪琴」ですが、基本的に血がドバーとか耽美ってイメージを持ってたところに、今回はなんと青春小説です。驚きました。「ブラバン」のことはよく知らないし、楽器はもちろんジャズとかロックなどの音楽のこともよくわからない。しかも登場人物がやたらと多い(34人の群像劇なのです。登場人物の冊子がついていたのですが、図書館本なので、本にくっついていて見にくかった・・)ので、ちょっと不安になったのですが、読んでみたら大丈夫!なじみのないブラバンの世界も、主人公の目を通した仲間の姿もしっかり目に浮かんできて楽しかったです。それに私よりちょっと年上の人たちの物語だったので、時代背景とか色々懐かしかったし、以前はそんなことなかったのに、この頃妙に過去を懐かしく思い出したりするようになったので、そういう意味でも40才を過ぎた主人公の心境も、回想される高校時代への思いや距離もすごくわかる気がして引き込まれました。でもこの頃ブラバンやバンドをやっていた人が読むと、もっと楽しいんだろうなとも思います。なんだかうらやましいです。

つぶれそうなバーの店主をしている40過ぎの主人公他片(たひら)。彼のもとに高校時代のブラバンの先輩桜井から、自分の結婚式で当時のブラバンのメンバーに演奏をしてほしいという連絡が入る。それをきっかけに他片は四半世紀の時を経てバンドの再結成に動く。

青春小説といっても、40才を過ぎた主人公が高校時代を振り返るという形だからか、津原さんだからか、熱い青春小説というより静かで落ち着いたものでした。青春のまぶしい感じとか、ばかなことに一生懸命になれた頃のエピソードが散りばめられていて、そのひとつひとつのエピソードやら会話はいかにもありそうで楽しいものなのです。でも25年経って亡くなった仲間もいれば、昔の仲間と顔を合わせたくない事情のあるものもいて、そこには歳月の残酷さがしっかりと横たわっています。ほろ苦さとともに振り返っているのです。だから高校時代の何気ないエピソードはすごくまぶしかったし、仲間が集結していくのはすごくうれしいものだったのです。あのエピソードもよかったなぁ、あの再会はよかったなぁとかじーんとしたなぁ・・というのがたくさんありました。

ところで津原さんって学生時代ブラバンでコントラバスを弾いていたのですね。ブラバンのことやら楽器や音楽のことにすごく詳しいんで、そうじゃないかと思っていたんですが、最後のプロフィールを見て納得しました。主要な曲目の紹介も親切でうれしかったです。だからあんなエピソードやこんなエピソードは実話だったのだろうか、過去を振り返る他片の視線は津原さんのそれなのだろうかなんて考えてしまいました。
ところで広島弁っていいですね。しみじみそう思いました。
soleil1 at 23:58│Comments(14)TrackBack(10) 津原泰水 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. ブラバン [津原泰水]  [ + ChiekoaLibrary + ]   2006年12月29日 16:32
ブラバン津原 泰水 バジリコ 2006-09-20 「結婚式の披露宴で高校時代の吹奏楽部のバンドに演奏してほしい」―当時の先輩・桜井からそんな依頼をされた他片。四十代になり、今はそれぞれの生活を送っている総勢三十四名のメンバーたち。「再結成」のために動きだした彼らと...
2. 「ブラバン」 津原泰水  [ 今日何読んだ?どうだった?? ]   2006年12月30日 22:32
ブラバンposted with 簡単リンクくん at 2006.11. 3津原 泰水著バジリコ (2006.10)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る
3. ブラバン 津原泰水  [ 粋な提案 ]   2006年12月31日 13:20
装画・挿画は福山庸治。装丁は松本美紀。 大学卒業後、八年間、少女小説作家として活動。1997年「妖都」を上梓。主な作品「少年トレチア」「綺譚集」「赤い竪琴」など。 語り手の他片等(たひらひとし)は、赤字続きの酒堀
4. 「ブラバン」津原泰水  [ 宙の本棚 ]   2007年01月01日 09:42
ハードカバーは図書館で…を心がけているのですが、その表紙を見ると手に取らずにはいられませんでした。トランペットを吹く制服姿の少女の横顔。「ブラバン」というタイトル。吹奏楽関係なら娘たちは絶対に読む。手元に置いておきたいと思うはず。他の文庫や雑誌と一緒にレ....
5. 「ブラバン」津原泰水  [ AOCHAN-Blog ]   2007年01月18日 20:40
タイトル:ブラバン 著者  :津原泰水 出版社 :バジリコ 読書期間:2006/12/29 - 2007/01/03 お勧め度:★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 大麻を隠し持って来日したポール・マッカートニーが一曲も演奏することなく母国に送還され、ビル・エヴァンスがジ...
6. 「ブラバン」津原泰水  [ 図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜 ]   2007年03月10日 20:06
「ブラバン」津原泰水(2006)☆☆☆★★ ※[913]、現代、国内、小説、青春、高校、ブラバン、部活 広島の片田舎、赤字続きの小さな酒場をただ漫然と経営している40を過ぎた他片等。彼は高校時代、ひょんなきっかけで声をかけられ、それが自分がやっていきたいバンド活動...
7. 「ブラバン」津原泰水  [ しんちゃんの買い物帳 ]   2007年03月18日 18:05
ブラバン津原 泰水 (2006/09/20)バジリコ この商品の詳細を見る つぶれそうなバーの店主をしている他片。彼がこの物語の語り手。 他片に高校時代のブラスバンド部の先輩から、当時の仲間で再結成したい。 それも自分の結婚
8. ブラバン/津原泰水  [ ディックの本棚 ]   2007年05月20日 11:54
4 ブラバン  他片(たひら)という四十過ぎのバーの店主が、高校時代からのブラバンについて語る。 「高校時代からの」というのは、高校の吹奏楽部のメンバーが、ある事情でもう一度集まって、ブラバンを再結成しようとするからだ。  この小説の主人公他片は、絶妙な人物....
9. ブラバン  [ T-SAITO 読書日記 ]   2007年05月28日 20:22
『ブラバン』 著者/訳者名 津原泰水/著 出版社名 バジリコ (ISBN:4-8
10. 苦く輝く記憶  [ 活字の砂漠で溺れたい ]   2007年06月01日 22:46
1980年、もう27年も昔のことだ。 その年、山口百恵は引退をし、松田聖子がデビューした。 作家「村上龍」は傑作「コインロッカー・ベイビーズ」を上梓し、 ニューヨークではジョン・レノンが、 熱狂的なファンを自称する男に射殺された。 そんな1980年、僕は高校三....

この記事へのコメント

1. Posted by chiekoa   2006年12月29日 16:36
私も広島弁っていいなぁって思いました。というか方言というものが全体的にうらやましい…横浜生まれ横浜育ち。「じゃん」なんて誰でも言うし!!
2. Posted by 藍色   2006年12月31日 13:40
こんにちは。
登場人物の多さを上手く出し入れしながら、ひとつひとつのエピソードを盛り込む離れ業、お見事でした。
広島弁も、いい味を出してましたね。

今年は大変お世話になりました。
juneさんは、いつも私が言えなかったことを書いてくださるので、一方的に心強く思っています。
「風が強くー」では、すいませんでした。みなさんのコメント、トラバが一通り済んだ後で、こっそりお伝えすればよかったと書いた翌日、気づいて激しく後悔しました。気分を害されたのでは、と不安な気持ちでいました・・・。
いろんな本のお話ができて、うれしかったです。 ありがとうございます。
ベスト本の記事もありますので、もし書かれたら、お気軽にどうぞ。
来年も引き続きよろしくお願いいたします。
箱根駅伝、どんな展開になるのか楽しみですね。
では、良いお年をお迎えください。
3. Posted by 小葉   2007年01月01日 09:46
明けましておめでとうございます。今年もよろしく。

広島は海を挟んだお向かいの県で、方言も結構似ていて、とても懐かしい気持ちで読みました。
地元の温泉が出てきたのも嬉しかったです。そこで働いている彼のエピソードはちょっと悲しかったけれど。
4. Posted by june   2007年01月01日 14:46
>chiekoaさん
広島弁いいですよねー。男の子がしゃべっても女の子がしゃべっても味があってうらやましいです。
横浜弁ならまだいいじゃないですか。こちらは「そうだらー」(注 そうでしょ)とか、やたらしまりがないので、県外の人と話す時は出ないように気をつけています。
5. Posted by june   2007年01月01日 14:52
>藍色さん
明けましておめでとうございます。去年は本のこと、色々話すことができて楽しかったです。
「風が強く吹いている」の時は、教えてくださって本当にありがたかったです。TBが送られていないどころか、変なTBを送っているのもあったし助かりました。なのにまさか藍色さんがそのことを気になさっていたとは・・。申し訳なかったです。これに懲りずに今年もどうぞよろしくお願いします。

「ブラバン」はたくさんの人の過去のエピソードと現在の組み合わせ方がすごいなぁとも思いました。津原さんの作品なだけにわりとテンションは低めでしたけどよかったです。

それにしてもいよいよ箱根駅伝明日ですね!本も買って備えているんですが、家族に振り回されてゆっくり見ることができないかも(涙)。
6. Posted by june   2007年01月01日 14:54
>小葉さん
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします!

小葉さんは、そちらにお住まいだったのですね。「〜じゃけ」なんて話しているのでしょうか。なんかいいなぁ。うらやましくなってしまいます。
道後温泉の彼のエピソードは哀しかったです。彼の高校時代のエピソードが大好きだっただけに読んでいて辛かったです。
7. Posted by すの   2007年03月11日 09:18
すごく期待していたせいか、ちょっとがっかりしたというのが正直なところです。登場人物たちとまさに同時代に生きてきたので、この作品の匂いは、とても懐かしく、ぴったりきたのですが・・。そういう意味では、自分のレビューにも書いたのですが、ブラバンに居たchiekoaさんが途方に暮れていたような感じに比べて、「ブラバン」より「同時代」がキーなのかもしれません。作品の主人公のようにぼくも三年生の男の先輩たちに可愛がってもらった口(といってもあっちのほうじゃありませんよ)なので、懐かしかったです。
ただ、同じくたびれた中年となった身としては、明日とか希望を見せてほしかったというところですね。
8. Posted by june   2007年03月11日 15:34
>すのさん
青春小説というよりも、青春を振り返るほろ苦い話だったなぁという印象です。やっぱり津原さんだと、バンドもののストレートな青春ものは考えられないので、こんな感じというのはわかる気がします。もうちょっと希望があっても良かった気がしますが。
それにしても男の先輩たちにかわいがられてたってびっくりしましたよー!?見る目が変わるところでした。
9. Posted by ディック   2007年05月20日 11:53
津原さんて音楽大好きなんだなと、それが伝わってくる小説でした。主人公の性格設定が絶妙で、だからこそ成り立っている小説だ、と感じました。その辺はまた、ぼくのブログの感想で。
息子が小学校の頃、ブラバンでユーフォニウムを吹いてました。地味な楽器なんですが、ときどき「またやりたい」というようなことを言います。
この小説のテーマそのものですが、「合奏する」ということそのものに、言うに言われぬ悦楽があるようです。
10. Posted by june   2007年05月20日 22:03
>ディックさん
私も最後に津原さんのプロフィールを見て、やっぱり!と納得しました。音楽が好きでブラバンだったのですね。そしてこの苦味・・。世代が近いせいかリアルに感じてしまいました。
ディックさんの息子さんはブラバンだったのですね。こういうみんなで合わせるというのは、学生のうちでないとなかなかできないと思うので、すごくいいなぁと思います。
11. Posted by t-saito   2007年05月28日 20:29
こんばんは。
今日読み終えました。
言ってみればバンドメンバーのその後という、週刊誌でやりそうないわば「ゴシップ」なのに、すごく高いところに作り上げていて、作者の力量と(この本に対する)思いの熱さに感心させられました。
トラックバックも送らせていただきました。
良い本を紹介していただいてありがとうございました。
12. Posted by june   2007年05月28日 22:08
>t-saitoさん
こんばんわ。
言われてみると、あの人は今って感じのゴシップになりそうなものでもありますよね。高校を卒業して25年経っていれば、成功したり幸せだったりすればかまわないわけですが、そうでなかったら昔の仲間と会うのは複雑なものがあると思います。そのあたりを描いても、ほろ苦くてもいやらしくはならないのは、作者の思いがあるからでしょうね。
13. Posted by yori   2007年06月01日 22:50
juneさんの記事を読んで図書館に予約して、漸く廻って来ました 笑
同じ時代を生き、同じ時代に音楽をやっていた僕としては、
もう涙なしでは読めませんでした 笑
御紹介をいただいた、こちらの記事に感謝です!!
14. Posted by june   2007年06月01日 23:22
>yoriさん
この作品はどうも、賛否両論分かれているようなんで、勧めている身としては不安だったんですが、どんぴしゃだったのですね!
同じ時代に音楽をやっていた方が読んだらどうなんだろうと思っていたのですが、涙でしたか・・・。すみません、ちょっとうれしくなってしまいました^^;

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

なお、当ブログでは記事に関連がないと思われるトラックバックやコメントは削除させていただきます。予めご了承ください。


【ほんぶろ】さんで特集ページを作っていただきました。本について、自分について語ってます・・。
こちらからどうぞ

本以外の日々のこと

+日々のこと+

Categories
Archives
livedoor プロフィール

june