2007年04月27日

「きつねのはなし」森見登美彦

きつねのはなし


何となく梨木香歩さんの「家守奇譚」をホラーにしたような感じがしました。時代は違うし、雰囲気も全然違うんですが、不思議な出来事や生き物があたりまえのように存在しているところとか、あとは単純に琵琶湖と水のイメージです。こちらはホラー仕立て。でもそんなに怖くはなくて、怖いというよりも気味が悪いというか、ぞわっと不安になる感じでした。4つの短編がゆるやかにつながりあっているのだけれど、それぞれ微妙に世界がずれていて、それがデジャビュを見るような、何とも不安な気持ちにさせるのです。
既読の「太陽の塔」と「夜は短し歩けよ乙女」とは違う雰囲気でしたが、これはこれで好きです。森見さんのこういう世界もいいなと思いました。

内容(「BOOK」データベースより)
京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々起こる怪異の結末は―。端整な筆致で紡がれ、妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。

薄闇の古都でみた悪い夢。目覚めても夢の続きにいるような。 〜帯より

「きつねのはなし」は、京大生と思しき学生が主人公なので、今まで読んだ森見さんの世界を想像したんですが、「夜は短し〜」にある笑いはありません。京都だからこそ成立するファンタジックな世界が、ここではファンタジーではなくてホラーになっているのです。これはそんなに怖くはないです。でも天城さんと天城さんの住む屋敷だとか、古道具屋の「芳蓮堂」だとか、狐の面だとか、こういう世界には無条件でひかれてしまいます。
「果実の中の龍」は、「きつねのはなし」とかぶる部分が多くて、読んでいてデジャビュを見ているような不思議な感じになりました。いったいどんなふうにつながっているんだろう?と訝しく思いながら読んでいたら、最後にあっと言わされました。不安な気持ちでぐらぐらしていたところを、あっけなく押されて転んでしまった感じです。古本屋の「緑雨堂」が出てきますが、「夜は短し〜」の古本市に出店してた「緑雨堂」なのでしょうか。
「魔」は、話としてはそんなにおもしろいというわけではないです。でも「果実の中の龍」で語られた話の詳細のようでいて、でもあの話は・・でした。そういうのもあって、読んでいてとても落着きが悪かったです。それがよかったんですけど。
「水神」まで読んで、全体像が見えました。だからといってなるほどと納得できるわけではなく、きつねにつままれたような気分で読み終えました。このもどかしさが逆によかったです。謎は謎のまま、不思議は不思議のままがいいこともあるのです。

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1. 「きつねのはなし」森見登美彦  [ しんちゃんの買い物帳 ]   2007年04月28日 13:36
きつねのはなし森見 登美彦 (2006/10/28)新潮社 この商品の詳細を見る 京都を舞台にした、幻想的で耽美、そしてちょっぴり怖い4つの短編集です。 「きつねのはなし」 京都にある小さな古道具屋「芳蓮堂」で、バイトをすむb i
2. きつねのはなし 〔森見登美彦〕  [ まったり読書日記 ]   2007年05月03日 21:34
3 きつねのはなし森見 登美彦 新潮社 2006-10-28売り上げランキング : 9692おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ 京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。 注目の俊英が放つ驚愕の新作。 細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。 闇と夜の狭間の....
3. きつねのはなし/森見登美彦  [ サラリーマンの読書エッセイ ]   2007年06月09日 18:43
ちょっと奇妙な、夢の中のようなおはなし4編です。連作短編集と言えるでしょうか。 幻想的なのに、表題作『きつねのはなし』は現実にもありそうな感覚を覚えます。 『太陽の塔』や『夜は短し歩けよ乙女』とは違った趣き。ゆっくり味わいたいお話でした。
4. 「きつねのはなし」森見登美彦  [ AOCHAN-Blog ]   2007年06月13日 21:17
タイトル:きつねのはなし 著者  :森見登美彦 出版社 :新潮社 読書期間:2007/04/30 - 2007/05/06 お勧め度:★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む...
5. 102:きつねのはなし  [ プリン@BOOK CAFE ]   2007年06月22日 08:57
きつねのはなし 途中で検屍官ケイシリーズにはまったりして、読むのに異常に時間がかかってしまいました。。。 もりとみーの、今のところ一番の最新作『きつねのはなし』です。 といってももう最新作と呼ぶには遅く、そろそろ次作、たぬきのはなしも出るそうですね。....
6. きつねのはなし⇔森見登美彦  [ らぶほん−本に埋もれて ]   2007年08月19日 23:24
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7. きつねのはなし (森見 登美彦 )  [ 花ごよみ ]   2008年01月31日 10:57
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8. 『きつねのはなし』/森見登美彦 ○  [ 蒼のほとりで書に溺れ。 ]   2008年05月18日 22:17
これは・・・判断が難しいな??。たぶんね、この物語を最初に読んだら、森見登美彦さんにはハマらなかったような気がします。私的には、愛と笑いとツッコミ処にあふれる、モリミーワールドが好きなので・・・。 良くも悪くも京都な物語、って印象ですねぇ。魑魅魍魎・・・し...

この記事へのコメント

1. Posted by しんちゃん   2007年04月28日 13:39
京都の異世界が楽しめましたね。
あまり得意なジャンルじゃ無いけど、すらすら読めました。
「走れメロス」にもこんな作風の作品があったよ。
2. Posted by ディック   2007年04月28日 20:12
ホラーですか。楽しみだな。図書館であと12人ですから、再来週の土日あたりに入手できそうです。
3. Posted by june   2007年04月29日 21:17
>しんちゃん
京都だと、こんな不思議なこともさもありなんと、なぜか思えてしまいます。この世界好きです。たまりませんでした。
「走れメロス」積んであります。楽しみ〜♪
4. Posted by june   2007年04月29日 21:19
>ディックさん
森見さんは、妄想ファンタジーだけじゃなくて、ホラーもよかったです。京都ならではの不思議の世界、楽しんでください♪
5. Posted by 木曽のあばら屋   2007年04月30日 22:01
こんにちは。
私もこれ読んで「家守綺譚」を連想しました。
森見さんの次の本は「たぬき」が出てくるそうです!

「果実の中の龍」は、ある意味この連作の要になる話かもしれなくて、
この話だけ、超自然現象なしの普通小説として読めます。
そこに何らかの鍵が隠されているのか・・・
としばらく考えてみますが、
結局良くわかりません(なーんだ)。
6. Posted by june   2007年05月01日 23:51
>木曽のあばら家さん
こんばんわ。
梨木さんと森見さんでは全然カラーも違うし、こんなことを感じるのは私だけ?と不安だったので、なんだかほっとしました。

そういえば「果実の中の龍」には超自然現象がでてきませんでしたね。他の短編とセットのようにとらえてホラーと思ってましたが、言われてみるとホラーではなくて普通の小説です。あの生き物も、人たちも直接出てきてないのに、小道具にすっかり惑わされてました。なんだか謎がいっそう深まった気がします・・。
7. Posted by エビノート   2007年05月03日 21:38
ついつい笑ってしまう妄想ファンタジーもいいですけど、こういう妖しげで幻想的な作風もなかなか良いですよね。
この作品私も、きつねにつままれた感じでした(笑)
8. Posted by june   2007年05月04日 22:52
>エビノートさん
てっきり妄想ファンタジーだと思ってたんですけど、ホラーだったのですね。
でも森見さんの描く京都は、やっぱり好きです。これも京都ならではのホラーで、よかったですー。
9. Posted by the salaryman   2007年06月09日 21:05
僕は「妄想ファンタジー」の方が近いと思いました。
次は『走れメロス』読みます。楽しみです。
10. Posted by june   2007年06月12日 08:58
>the salarymanさん
うーん、この場合の妄想ファンタジーは「夜は短し〜」のようなファンタジックさとはちょっと違って、恐さが勝っている分、幻想ホラーという感じがしました。
私も「走れメロス」積んであります。いつ読もうかな〜♪と考えると、にやにやしてしまいます。
11. Posted by らぶほん   2007年08月19日 23:10
京都は闇がよく似合う!と言った人がいましたが、まさに京都に似合った作品だったように感じました。
しばらくは薄暗い時間帯にはお稲荷さんには近づきたくない気分です。
12. Posted by june   2007年08月21日 14:32
>らぶほんさん
ほんと、この作品は京都の闇に似合う作品ですよね。なんか京都って魑魅魍魎が跋扈していても不思議ではないというイメージがあります。(住んでる人からしたら、何を言ってるんだって感じなのかもしれませんが・・)
お稲荷さん怖くなりますねぇ・・。お祭りできつねのお面を見たら後ずさってしまいそうです。
13. Posted by kazu   2008年01月31日 11:02
こんにちは〜!

妖しい物語ですね。
こわいので忘れてしまいたいのに
結構後を引きます。
きつねはきらいです!!(笑)
14. Posted by june   2008年02月01日 22:09
>kazuさん
こんばんわ!
こういう怖さって、後を引きますよね。でもじわじわ効いてくるこういう怖さ、結構好きだったりします。
きつねは怖いですが、森見さんのたぬきの話の方は、ひたすらおもしろかったですよ。やっぱりキャラの違いでしょうか。
15. Posted by 水無月・R   2008年05月18日 23:27
juneさん、こんばんは(^^)。
いろんな意味で「京都」らしい物語でしたね。ただ・・・京都にシンクロできないと、入れない、と感じました。
あの独特の風土というのでしょうか、一見さんには敷居が高い感じ・・・。
確かに、悪夢ですね。目覚めても…か。ケモノの生臭い息遣いが、すぐ後ろから聞こえるかのような感じがしましたね。
16. Posted by june   2008年05月21日 15:34
>水無月・Rさん
こんにちわ!水無月・Rさんは、この世界、今一つ入り込めなかったんでしょうか。
確かに同じ京都を舞台にしていても、これは他のモリミー作品より、一見さんには敷居の高い京都という感じがするというの、わかります。
でも私は、その閉じたというか、敷居の高い世界って、完全な一見さんなのでどうにも覗いてみたくなっちゃいます。ファンタジックホラーの雰囲気が好きなんで、この悪夢の雰囲気は大好きなのです。

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このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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