2008年06月10日

「夜明けの縁をさ迷う人々」小川洋子

夜明けの縁をさ迷う人々


有川さんの作品で熱くなりすぎたんで、クールダウンしなくちゃ・・ってことで選んだんですが、クールダウンを通り越してずぶずぶと小川さんの世界にはまりってしまいました。帯に「『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ」ってあるんですが、ちょっと違う気がします。どれもどこか世界と少しづつずれていて、読んでいて不安になるのだけれど、囚われてしまうのです。どうにもさみしくて冷たくて、静かな狂気をたたえていながら、美しくてエロティックな世界。小川さんの作り出す世界は危うくて、タイトルの「夜明けの縁」のイメージともぴったりでした。

内容説明
風変わりな曲芸師と野球少年の友情、放浪の涙売りの恋、エレベーターで生まれたE.B.の生涯、作家だった祖父の形見をめぐる老嬢の話…。世界の片隅に息づく人々に灯りをともす9つの物語。『野生時代』掲載を単行本化。


この中では、エレベーターの中で暮らすエレベーターボーイの話「イービーのかなわぬ望み」、すりこむと楽器の音が良くなる涙を流す涙売りの話「涙売り」、一人でチェスをするシッターさんに預けられる姉弟の話「パラソルチョコレート」が特に好きでした。他の作品どれもそれぞれとても雰囲気があって、グロテスクだったりブラックだったりもするんですが、あっという間に非現実の世界にひきずりこまれます。小川さんはあたたかい作品も好きですが、こういうのも好きです。
soleil1 at 16:23│Comments(8)TrackBack(3) 小川洋子 

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この記事へのトラックバック

1. 夜明けの縁をさ迷う人々 小川洋子  [ 粋な提案 ]   2008年06月11日 01:41
装画・挿画は磯良一。装丁は片岡忠彦。「野性時代」掲載。 曲芸師と野球少年の友情、エレベーターで生まれたE.Bの生涯、放浪の涙売りの恋、??.
2. 「夜明けの縁をさ迷う人々」感想 小川洋子  [ ポコアポコヤ ]   2008年06月12日 08:50
最近の小川さんの小説は、あたたかい話が多かったように思いますが、今回は初期の小川さんの作風に戻った感じのする、少しグロテスクなお話が多かったです。 私は、暖かい話しも、こういうひんやりしたお話も両方好きです。
3. 『夜明けの縁をさまよう人々』/小川洋子 ◎  [ 蒼のほとりで書に溺れ。 ]   2008年10月15日 22:09
小川洋子さんの描く不思議な世界。一見、普通に私たちがいる現実世界のことのようなのに、いつの間にか、何かがズレてる。物語の登場人物たちは、夢の世界と現(うつつ)の世界のあわいを漂っているかのような・・・。 まさにタイトル道理の世界を感じさせる『夜明けの縁を...

この記事へのコメント

1. Posted by 藍色   2008年06月11日 01:47
「別冊〜」からのクールダウンのつもりが、小川さんの世界にずぶずぶに納得です。
短編集でも侮れませんね、小川さん。
主人公たちが体験する不思議な出来事。
結末まで目が離せない面白さでした。
2. Posted by june   2008年06月11日 20:23
>藍色さん
そうなんです。クールダウンを通り越して、完全に小川さんの世界に行っちゃいました。ほんと短編なのに、完璧な世界が完結してます。小川さんすごいですよね・・。改めて思いました。
3. Posted by latifa   2008年06月12日 08:53
juneさん、こんにちは!
私も、こういう小川さんも好きです。
別冊〜、すごく良かったのですね?^^
クールダウンするために・・って、面白いです♪

実は、、ここだけの話し(って堂々と書いてる・・) 図書館戦争、何度トライしても、入り込んで読めず、今だ読めてないんです。
みなさん絶賛されているのに、とても悲しいんですよ・・・。
4. Posted by june   2008年06月13日 15:26
>latifaさん
こんにちわ!
あたたかい系の小川さんもいいけれど、こういう小川さんもいいですよね。こういう作品こそ小川さんらしいって思ってしまいます。

別冊〜すごくよかったですよ!読んだらたぶん乙女度がアップして、血行がよくなるかも?!よくなりすぎてクールダウンが必要でした^^;
有川さんの本、私は完全にキャラ読みしてるせいか、分厚くてもすらすら読めてしまうんですが、SFですかって感じの突飛な設定とか、ラノベっぽい書き方が嫌な人は苦手かも・・。でも、べた甘のラブコメってだけじゃなくて、本や言葉についての問題なんかも真面目に書いてあるんで、考えさせられるし読み応えもあるんですよ。機会があったらぜひ!
5. Posted by 水無月・R   2008年10月15日 22:28
juneさん、こんばんは(^^)。
いつの間にか微妙に幻想世界へ流れ込む現実、という感じの物語展開のスムーズさ、とても素敵でした。
私もこういうの、大好きです。
「イービーのかなわぬ望み」、本当に美しくて、悲しくて、でもなんだか暖かかったです。
6. Posted by june   2008年10月17日 12:57
>水無月・Rさん
熱い話も好きですが、こういうお話もいいですよね。
>いつの間にか微妙に幻想世界へ流れ込む現実
小川さんの小説はこの、微妙なずれにひかれます。
「イービーのかなわぬ望み」いいですよね。今思い出してもなんだか切ない気持になってしまいます。
7. Posted by かなかな   2009年06月16日 11:11
「猫を抱いて象と泳ぐ」がすごくよくて、ちょっと不思議な小川ワールドをもっと覗いてみたいと思い読みました。
不思議な世界ですね。「世にも奇妙な物語」みたい(笑)でも、小川さんの文章は詩のようですよね。「美しい」です。
それは、小川さんの美への哲学みたいなのがきっちりとあるからかなあ。
私も「イービーのかなわぬ望み」が良かったです。
8. Posted by june   2009年06月17日 21:40
>かなかなさん
「猫を抱いて象と泳ぐ」読んだんですね!いいな〜。図書館の予約がすごいことになってるので、読めるのはいつになることか・・という感じなんです。でも、かなかなさんがいいというならいつまででも待つことにします。
小川さんの文章、言われてみると詩のような美しさがありますよね。どんな作品を書いてもきちんとそこに美しさがあるというのは、きちんとした芯があるんでしょうね。
「イービーのかなわぬ望み」、読んでから一年経った今でもしっかりと覚えてます。短編なのにこんなに記憶が鮮明って、よほど印象的だったのだと思います。

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本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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