2009年09月28日

「不思議の足跡 最新ベスト・ミステリー 」伊坂幸太郎ほか

不思議の足跡  最新ベスト・ミステリー (カッパ・ノベルス)
不思議の足跡 最新ベスト・ミステリー (カッパ・ノベルス)
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複数作家によるアンソロジーは敬遠されがちと、裏表紙にあったのですが、こういう豪華な執筆陣なら大歓迎です。最新ベストミステリーとありますが、「不思議の足跡」とあるとおり、色々な不思議な世界が広がっています。ミステリー、ホラー、SF、不思議としかいいようのないものetc。バラエティに富んだ世界を楽しむことができました。探偵役が人ではないという作品もいくつかあるのですが、作家さんによってカラーの違いがずいぶん出ていました。そういう部分も楽しく、どの作品もそれぞれおもしろくて、不思議な話がこれだけ並んでいても全く飽きませんでした。

内容(「BOOK」データベースより)
小説短編集は売れないと言われる。複数作家によるアンソロジーとなると、さらに敬遠されがちになるのが実情だ。かく言う筆者も、どうせ読むならドシンと重たい長編を、と思ってしまう。が、ご存じだろうか?世に傑作と謳われる映画の多くは、短編小説を原作としている事実を。発想と構成という点において、作り手が投入するエネルギーは長編も短編も変わらないのだということを。本書に収録された玉編の中に、十年後の伝説が潜んでいる可能性は十分にある。決めるのは時間、確かめるのはあなただ。


「吹雪に死神」伊坂幸太郎
これは「死神の精度」で読んでました。このときは他の短編のほうに目が行ってしまって、伊坂さんは吹雪の山荘といういかにもな設定で遊びたかったのかなと思いながら読んだことくらいしか覚えていませんでした。でも読み返してみると、死神だからこそありえるなぞ解きに、改めておもしろいなぁと思いました。
すっかり結末を忘れてたので、新鮮な気持ちで読むことができました。記憶力が悪いのもたまにはいいものです。

「酬い」石持浅海
人間ではないムーちゃんが探偵役のお話ですが、不思議なムーちゃんの存在がお話をとぼけた味わいのものにしてます。シリーズだったら読んでみたいと思う作品でした。

「あなたの善良なる教え子より」恩田陸
途中で読んだことがあることに気付きました。恐ろしいほどの歪みにぞぞっとしました。かなりブラックです。

「ナスカの地上絵の不思議」鯨統一郎
ナスカの地上絵の不思議について、東京の片隅のバーで語り合う3人とバーテンダーの話。
4人のとりとめのない会話から、ナスカの地上絵の不思議が少しずつ解きほぐされていくのがおもしろかったです。

「暴君」桜庭一樹
すごく桜庭さんらしい世界!少女たちの生きる世界はハードなんだと、気付かされます。
読み終えてから編纂序文を読んで、ピンクの霧の正体に気づいてハッとしました。なんとなくもやっとしてたのですが、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」のあれでした。それにしてもオバケヤシキなんですねぇ・・・。

「隠されていたもの」柴田よしき
今あちこちで話題のごみ屋敷を題材にしたお話。フリーライターが取材で訪れたごみ屋敷で見つけたものは・・・。
これはホラーです。怖かったけれどうまくまとまっていておもしろかったです。

「東京しあわせクラブ」朱川奏人
犯罪や事故で亡くなった人にかかわるものを蒐集して品評しあう「東京しあわせクラブ」。とにかくグロテスクで悪趣味で嫌だな・・・と思いながら読んだのですが、最後の強烈なオチにやられました。怖い!

「とまどい」高橋克彦
人の思い出の中の自分が、自分ではないように思える・・。不思議でちょっとぞっとするようなお話でした。

「八百万」畠中恵
畠中さんといったら妖のお話?と思ったら今度は神様でした。
子供は亡くなるし、大人の汚い世界もある切ない話でしたが、
神様と神様の使い3人(?)のかけあいのテンポがよくて、微笑ましかったです。
これはシリーズになってるのでしょうか。他にもあったら読んでみたいと思いました。

「オペラントの肖像」平山夢明
なんとも不思議な世界。でも気付かぬうちに入り込んでしまっていました。
ここでは芸術を愛することは犯罪なのです。こんな世界私は絶対いやだなぁ・・。

「ロボットと俳句の問題」松尾由美
日常の謎、暗号文、なぞ解きをする幽霊のおばあちゃん。そして編集者の私の淡い想い。
ちょっとさみしくてあたたかい世界が心地いいお話でした。シリーズだったらこれも読んでみたい。

「箱詰めの文字」道尾秀介
二転三転するお話に翻弄されました。もう何を信じたらいいかわからない感じ。ブラックでおもしろかったです。

「チヨ子」宮部みゆき
わりとブラックなものが多かったんで、ドキドキしながら読んだのですが、思いもかけず心があたたまるようなお話に出会えてほっとしました。ピンクのうさぎのきぐるみからは私は何に見えるんだろう?子供達は?などとつい考えてしまいました。

「悪魔の辞典」山田正紀
ハードボイルドで不思議な世界。

「Do you love me」米澤穂信
幽霊が出てくる話なんですが、その幽霊が不思議なほどちっとも怖くないのです。幽霊が自分が殺された理由を知るためにやってくるのですが、すっとぼけた?幽霊のたたずまいからは思いもよらない理由が隠れていて驚きました。ある意味幽霊よりもずっと怖いです。

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1. 不思議の足跡  [ 苗坊の徒然日記 ]   2009年09月28日 21:58
不思議の足跡 最新ベスト・ミステリー (カッパ・ノベルス) 小説短編集は売れないと言われる。 複数作家によるアンソロジーとなると、さらに敬遠されがちになるのが実情だ。 かく言う筆者も、どうせ読むならドシンと重たい長編を、と思ってしまう。 が、ご存じだろうか?...
2. 【日本推理作家協会編】不思議の足跡  [ higeruの大活字読書録 ]   2009年09月29日 01:35
 『名探偵の奇跡』、『事件の痕跡』とともに3年に一度の推協編アンソロジー三部作の一冊。もともとこれが読みたくて予約して、一度順番が回ってきたのだが、よんどころない事情で借りに行くことができず。期限切れとなった後に再予約して、待つこと3ヶ月。 カッパ・ノベ....
3. 伊坂幸太郎著 ラッシュライフからの名言  [ 名言格言ことわざそして感動 ]   2009年10月10日 23:30
人生については、誰もがアマチュアなんだよ。誰だって初参加なんだ。はじめて試合に出た新人が、失敗して落ち込むなよ。<コメント>伊坂幸太郎著書 ラッシュライフからの名言です。うまい!!こんな励ましかたもあるんですね。でも、ある意味真実ですよね。この世...

この記事へのコメント

1. Posted by 苗坊   2009年09月28日 22:01
こんばんわ。TBさせていただきました。
内容が濃くて、大満足のアンソロジーですよね!
「酬い」のムーちゃんが登場する作品、ありますよ。
連作短編集なのですが「温かな手」という作品です。
お兄ちゃんも登場します^^
いろんなジャンルの作品があって面白いですよね^^
2. Posted by june   2009年09月30日 20:46
>苗坊さん
こんばんわ!「温かな手」というタイトルは見覚えがあります。教えてくださってありがとう^^
今度読んでみます(*^_^*)

執筆陣も豪華だし、内容も濃かったですよね。読み応え満点で大満足でした。

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本を読むことが大好きです。家事や仕事の合間にちょこちょこと読んでいます。
このごろは中学生になった子供たちと同じ本を読んで、感想をあーでもないこーでもないと話すことができるようになりました。

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