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Naked Glow (20th Anniv. Mix)の制作エピソードをひとつ。

このご依頼を頂いたときに、自分の中でハマってた音楽ジャンルは、
Synthwav、80年代リバイバルサウンドでした。
生楽器を極力排除して、オールシンセで世界観を創ることにハマっていました。

Funkacity2の"One Thing"はその最新形で、
ここ最近のディスコ、ブギーリバイバルの音と、初期Hiphopなbeatに
4オペレータのFM音源とPSGを中心にした音を堂々と乗っけてみたものです。

そういう感じで、いわゆるチップ音源を忍ばせつつも、いわゆるチップチューンにならないように、
各時代各カルチャーの音楽を結びつけてみるスタイルを
しばらくは追求してやっていこうかと思ってました。

そんな中、今回(この記事は制作直後に書いています)、R4のRemixのご依頼。
曲目は決まってるものの、方向性はおまかせということでした。

Naked Glowは生楽器中心の構成なのですが、今の自分の音楽モードから順当に考えると、
Funkacity2 "One Thing"のように生楽器スタイルと縁を切った音楽性、
80'sシンセやチップ音源中心のエレクトロファンクの路線、というのが最適解であり、最有力候補でした。

また、セルフRemixということで、遠慮する要素がまったくなく、
たとえば原型を留めないほどに刻むことも許される状況でした。

なので、もし80'sエレクトロ・ファンクが失敗しても、原曲をサンプリングして刻みまくった
インストのアブストラクトHiphopトラック、という路線も考えられました。

普通、2つも面白そうな路線のアイデアが見い出せたら、制作スタートのゴーサインは出ます。

ただ、ゲーム音楽ファンとしての自分含め、オリジナルへ愛着ある人達の想いをリサーチしていくと、
Naked Glowは、生演奏的な荒い質感と、ピアノやサビなどメロウな展開が混ざってるところが好まれている様子で、
「そういった曲の個性が大事な要素なんじゃないかな」
「切り捨ててしまってはいけないかもな」
と思うようになりました。

先の2つのアレンジのアイデアは両方とも、大事な要素を消してしまうことになります。

原曲の雰囲気を保ちながら磨きをかける方向にする、
ということになると、原曲の生楽器中心の構成を活かすことになるので、
オーダーがおまかせという中でも、シンセやチップ音源がメインの、
今の自分が進んでいる道を一旦降りなくてはいけなくなります。

実際、今の自分のスタイルでは生楽器に対してアレンジしていく手法や手順がなく、
「今自分がやってるスタイルではNaked Glowに手出しできないぞ…」
という状態に気づきました。

普段、自分の過去の曲を真剣に分析する機会はないですが、
今回、作者本人として作り変えるチャンスを頂いた、ということは、
ただRemixという形を作るのではなく、
「Naked Glowにもう一度真剣に向き合って、今のお前が思う最高のバージョンを作ってみてはどうかな?」
と、どこかから告げられてるような、課題というか、使命のようなもんじゃないか、と思うようになりました。

とはいえ今の段階ではノーアイデア。
打つ手なし。

でも何か前に進めないといけない。

そのためにまずは、Naked Glowの原曲の中を見つめ直し、
自分で改善したいなと思っていたポイントを洗い出すことから始めました。

まず気になっていたのが、当時思ったように弾けなかったギターパートを
MIDIの打ち込みで代用していた部分。
そこは弾き直そうと思ってトライしたら、当時と同じようにしか弾けなくて。
悪い癖もまったく同じ。
理由は本人だから、というのもあるし、もともと苦手だから打ち込んでいたわけであって。

ここがセルフRemixの難儀なところで。
同じ作り直すなら全パートそれぞれ専任の人が各々解釈して
アレンジ・演奏したほうが遥かにクオリティを上げられるわけですが、
今回も同じ人間が一人でやるということで、
そうした他者の力によるマジックの可能性がありませんでした。

それに、R4の20周年という重みある機会に、
同じ人間が20年も経って同じ課題を乗り越えられてないってマズいっしょ、っていう。
やはり自分でちゃんと弾きたい、過去出来なかったことを乗り越え、ちゃんと弾ける自分になっていたい、
という色気も出てきました。

ということで、ギターカッティングの特訓を始めることにしました。

20年間出来てなかったものが、いまさら急に出来るようになるわけはありません。
なんというか、要は、この20年間、生演奏系の特にギターカッティングのスタイルから
離れていく方向で来たので、ギターに関しては、まったく進歩してないんですよね。
だから宿題は山のようにありました。

「こんなことしててホントに締切までに間に合うのか?」
という不安を振り払いつつ、ソウル、ファンク、ジャズ、ボサ・ノヴァ、ブルースロックなど
Naked Glowに合いそうなジャンルのギターを手当たり次第に研究、練習に集中していきました。

(余談ですが、慣れない演奏をぎこちない姿勢でやり続けることで頚椎を痛めてしまったようで、
夜、寝ようと横になると首と肩甲骨に激痛が走って飛び起きてしまって眠れなかったり、
ギターを弾いてると肘や手先が痺れてきたりと、悪条件の中、特訓を続けました。
まだ後遺症が続いてますが、結果的にはフォームも矯正できて良かったです。)

6週間以上過ぎた頃、ようやく納得行くテイクをレコーディングすることが出来ました。

20年前は、ぎこちないカッティングしか出来ず、
そのアラをごまかすために、歪みをかけていたんですが、
歪みを外し、ごまかしのきかないレコーディングをすることでニュアンスに気を配ることになり、
粗さの代わりに色気が立ち上ってくる感じになりました。
ギターのサウンドもなめらかになったと思います。

採れたてのギターのフレーズに合わせて、
それまでにあらかた打ち込んでおいた他の楽器を
ちょちょいとアレンジし直して、完成しました。

Naked Glow (20th Anniv. Mix)は、お聴きになった方はおわかりの通り、
チップ音源要素、ゼロになってます。
そればかりか、むしろNaked Glowの原曲にあったシンセ要素まで排除して、
ほぼ生楽器系の音色だけになってます。

この最終型のアレンジは、新しくレコーディングすることが出来たギターによって、
他の楽器が刺激を受けて変化していったことで、はじめて成立出来たことなのかな、と思います。

なんて偉そうに書いてますが、ギターだけに6週間かかってしまっていて。
レコーディングは締切二日前とギリギリで。
どんだけ待たせんねん、と。

あと今回のRemixでは後半に新しく、ジャズっぽいベースの動きを伴った展開を作ったのですが、
そこでのギター以外のフレーズも、ギターの特訓が活きてます。
Jazzのコンピングの練習のお遊びをやるうちに出てきたラインを、
Jazz文脈を無視してさらにドラマチックにデフォルメして出来たラインです。

また、今回のようにハードロック・ヘヴィメタル以外のジャンルのギターを楽しく演奏できるようになったことで、
今後作る曲の幅も大きく広がっていくことと思います。

20年経って、親元に帰ってきて、親を成長させてくれたNaked Glow。
また自分の中に特別な曲が出来ました。

追記:
今は勢い余って、ギターの歪みどころかエレキギター自体を封印し、アコギに集中してます。
アコギの世界の広さ深さ…これも今後の曲に活かします。