2005年05月10日

アメリカンなコイサンマンの話

1925年、生物教師のジョン・スコープス氏は、テネシー州法に違反して公立高校で進化論を教えたとして有罪になった。
その後、進化論は全米の理科教育で教えられるようになったが、聖書が合法的に進化論をうち負かした歴史的な裁判から80年後、スコープス氏逮捕の日と同じ先週から、カンザス州で教育委員会の公聴会が開かれ、再び、進化論は批判に晒されるようになった。

進化論批判派は、大多数の科学者が聖書の創造説を宴曲に表現したに過ぎないと一蹴している「インテリジェント・デザイン」説(知的設計論)を、進化論の対抗概念として進化論と併せて州の公立学校で教えることができるようにすべきだと主張している。

「インテリジェント・デザイン」説を推進する勢力は、映画「コイサンマン」を引用して「飛行機から捨てられたコーラの瓶を拾ったアフリカ人でも、何で瓶がそこにあるかは知らないが知的な存在によって造られたことはわかる」ようなものだと説明している。

それに対して原則維持派は、スコープス裁判を描いたスタンリー・クレイマー監督の映画「聖書への反逆 (Inherit the Wind)」から、被告側弁護人クラレンス・ダロー役のスペンサー・トレーシーのセリフで反論する、すなわち「考える権利こそ重要だと思う」と。

教育委員会は夏に採決を行う予定で、委員会が期待しているとおりに基準が改正されれば、早ければ秋の新学年から「インテリジェント・デザイン」説が教えられることになるそうです。


これは、NHK・BS1で見たアメリカのABCニュース「ナイトライン」のレポートです。


ジム・ウーテン記者は、「疑問がある度に天地創造説を持ち出すようでは学問の進歩が止まってしまう」「問題は教室の中に神を持ち込もうとしているところにある。政教分離には賛成だ」という原則維持派、「神の意志は信じたいが、真実だと教えることは出来ない。実証されていないからだ」という熱心なカソリック教徒の生物教師に続けて、私立高校で授業として行われた生徒同士の討論などをレポートします。

続けてレポートでは、問題となっている学習指導のガイドラインを見たことがないと認める教育委員会のメンバーの一人が「改正に賛成するつもりなので、(公聴会で)他の人がどう言おうと気にならない」と話す一方で、公聴会で改正に反対の意見を述べた弁護士が「文化的に優位に立つために超自然的な考え方を科学的なプロセスに吹き込もうとしている。とても危険なことであり、許すべきではない」と話していました。


一方、イラク人射殺事件のレポートと同様、アンカーマン氏は腰が完全に引けてました。

記者のレポートのあとに2人の識者が登場しましたが、

10年後「インテリジェント・デザイン」説は多くの学校で教えられるようになっているだろうかという問いに対して、「ブッシュ大統領が自分好みの判事を、あと数人最高裁に送り込めば」と反対派が皮肉混じりに答えて「今何も行動していない人たちは、自分たちの子どもがその種のくだらない宗教の教えを受け怒りを感じるでしょう」と言うと、推進派が「若い高校生が博士号をとって研究者になるのにそのくらいかかりますから10年後なら」と答えたのですが、

アンカーマン氏は「ようやく意見が一致しましたね」と締めくくってました。。。。


【関連記事として】世俗的なモノに意味を与えようとする人たち(2005/06/28)

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