2005年11月20日

日常的な死の記録

2004年10月5日、ガザ地区南部ラファ(Rafah)でイスラエル防衛軍 (IDF) によって、13才のパレスチナ人少女イマム・アルハムズ(Iman al-Hams)は射殺された。
BBCのジェームズ・レイノルズ記者によれば、パレスチナの民間人が殺される事件は、イスラエルでは必ずしもニュースの種になるとは限らず、軍がそのような出来事の調査に乗り出すのは、さらに珍しいことだという。

IDFが射殺事件の調査を始めたのは、この出来事がイスラエルのカメラマンによって撮影され、イスラエルのチャンネル2によって全国放送されたからである。
調査では、その「過剰な武力行使」が問題になった。

アルジャージーラBBC英紙ガーディアンによれば、イマムは、学生用カバンを持って学校に行く途中だった。
近くに住むパレスチナ人の目撃者ウマル・アブカリファ(Umar Abu Khalifa)氏(25)は、「イスラエル兵は、そこを襲撃した。少女はバッグを捨てて、走ろうとした。弾丸がバッグに当たり、次に兵士は少女へ発砲を始めた」と言う。

IDF情報筋は、「兵士は空へ警告射撃をした。その人物はバッグを落として逃げた。兵士は、それが少女だったことを知る方法がなかった。その後、兵士は発砲し、その人物を撃った。結果は重大で遺憾である」と説明していた。
しかし、イスラエルのメディアは、その場面で匿名の兵士の証言を引用し、前哨部隊の指揮官に少女は近距離から撃たれ、動けなくなった彼女は「とどめ」をさされたと伝えた。

イスラエルのテレビで放送されたビデオテープには、軍の監視塔、陸軍基地の作戦室、名前も公表されず顔の撮影も許されていない前哨部隊の指揮官「R大尉」の無線通信の内容が録音されていた。

最初、イマムは、どの兵士からも100ヤード(約90m)は離れていた。

監視塔:「それは小さな少女です。彼女は防衛的に東方に(陸軍基地から遠ざかって難民キャンプの方へ)走っています」
作戦室:「我々は、10歳以下の少女について話しているのか?」
監視塔:「およそ10才の少女、築堤の後ろ、死ぬほど脅えています」

数分後、イマムは、歩哨のうちの一人に脚を撃たれる。

監視塔:「私は、配置されていた一人が彼女を連れ出したと思います」

傷ついて横たわっていたイマムに、R大尉が近づく。

R大尉:「私ともう一人の兵士が・・・・殺したか確認するため、もう少し近づこうと前方に動いて・・・・状況報告を受け取ってください。私たちは彼女を撃ち、殺しました・・・さらに私は殺したことを確認しました。以上」

その兵士は、「私たちは70mの距離から彼女を見た。彼女は逃げて、前哨部隊に撃たれて負傷した。負傷したか死んで横たわっていた彼女に小隊長は接近し、彼女の頭に近距離から2発撃った」「その後、彼は再び戻って、無線機の彼らの異議を無視して、自動小銃をセットすると、弾倉の全弾を彼女に撃ち込んだ」と言う。

R大尉:「明確にしたい」「自分は指揮官だ。このゾーンを移動する者は誰であれ、たとえそれが3歳であっても、すべて殺す必要がある。以上」

ラファの病院の医者は、彼女が少なくとも17発撃たれていたと言う。

ガザ地区のダン・アレル少将を責任者とする後の調査は、R大尉について「倫理に反する行動はなかった」と結論を下したが、憲兵隊は調査を始めた。


しかし、その後、R大尉は起訴されたが、2005年11月15日、イスラエルの軍事法廷は、すべての罪状について無罪と評決した。

NHK・BS1で見たイギリスのITNニュースやBBCによれば、R大尉は2発撃ったことだけを認め、「弾倉がカラになるまで撃った」と当初証言していた兵士2人も証言を撤回したという。
また、イマムの身体やカバンからは爆発物や武器は見つかっていないが、イスラエル軍は、爆発物を持っていた可能性があるだけでなく、パレスチナ・ゲリラによる狙撃を可能にするためにイスラエル兵をおびき寄せることを試みていたかもしれないと主張していた。

現在、ガザ撤退に伴って、かつて「死の塔」と呼ばれた監視塔は撤去され、自由に出入りが出来るようになった。
しかし、イマムの父サミールさんは、「子どもの殺害を認める司法制度などが、どこにあるでしょう。どんな法の下でも、どんな宗教でも、そんなことは許されません」と言い、娘のベッドを祭壇として、正義の裁きを待っているという。


【関連記事として】稀にみる大事件と日常茶飯事の出来事と・・・(2005/08/20)

soliton_xyz at 14:45│Comments(0)TrackBack(0)イラクと中東 

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