2006年01月25日
権力と富の闇の深さと
1983年に4階建ての住宅を1万5千ドルで家主から購入したメリー・オーバートンさんは、昨年自宅をリフォームするための資金をアメリクエスト・モーゲージ(Ameriquest Mortgage)社から借りた。
74歳という高齢にも関わらず、仕事の収入に加えて家賃収入があり、毎月の収入は4,600ドル。401K制度適用の退職者で、貯金も5万4千ドルある。
借りた金は28万5千ドル、金利は年8.99-15.00%の変動金利で30年返済。
毎月の返済額として2,300ドル近くが求められたが、唯一の問題は、この融資の申請内容が、どれも真実ではないことだった。
メリーさんに収入はなく、政府から毎月支給される800ドルだけで孫と暮らしているのだ。
ブルックリン支店の担当者がローンを申請する際に添付された書類は、どれも見たことも署名したこともない。401K、賃貸契約書、所得税の還付申告書、雇用主の給与証明など、書類はすべて偽物だった。
「母親のように思っている」と言っていた担当者に「働いていたことはあるか?」と訊かれたメリーさんは、1970年代に最後に働いていたときの会社名を伝えたが、収入があると言ったことはなく、「毎月299ドル11セントを4年間支払えばいい」と聞かされていた。
ローンを組む際の手数料は2万3千ドル。メリーさんが承諾もしていないのに、ローン会社が選んだ工事請負業者が作業を始めたが、許可をとっていなかったために工事を中断するしかなかった。
工事を中断した時には既に裏の壁が取り壊されていたので、メリーさんと孫は数週間、柱の間をビニールシートで覆って生活していたという。
74歳という高齢にも関わらず、仕事の収入に加えて家賃収入があり、毎月の収入は4,600ドル。401K制度適用の退職者で、貯金も5万4千ドルある。
借りた金は28万5千ドル、金利は年8.99-15.00%の変動金利で30年返済。
毎月の返済額として2,300ドル近くが求められたが、唯一の問題は、この融資の申請内容が、どれも真実ではないことだった。
メリーさんに収入はなく、政府から毎月支給される800ドルだけで孫と暮らしているのだ。
ブルックリン支店の担当者がローンを申請する際に添付された書類は、どれも見たことも署名したこともない。401K、賃貸契約書、所得税の還付申告書、雇用主の給与証明など、書類はすべて偽物だった。
「母親のように思っている」と言っていた担当者に「働いていたことはあるか?」と訊かれたメリーさんは、1970年代に最後に働いていたときの会社名を伝えたが、収入があると言ったことはなく、「毎月299ドル11セントを4年間支払えばいい」と聞かされていた。
ローンを組む際の手数料は2万3千ドル。メリーさんが承諾もしていないのに、ローン会社が選んだ工事請負業者が作業を始めたが、許可をとっていなかったために工事を中断するしかなかった。
工事を中断した時には既に裏の壁が取り壊されていたので、メリーさんと孫は数週間、柱の間をビニールシートで覆って生活していたという。
工事請負業者は、ローン会社の担当者に数千ドルを支払っていた。
「あの人、お母さんと、どんな関係なのかしらねえ」と語るメリーさんは、訴訟を起こしている。
「言語道断の由々しき不正だ」と語るコネチカット州検事総長のリチャード・ブルーメンソール氏は、コネチカット州だけでも2年間で200件近くの苦情が寄せられたことを明らかにしている。
コネチカット州における手口はパターン化していて、どれも所得を水増しして、資産をでっち上げ、虚偽の記録を元に貸し出しを膨らませている。その結果、ローンが払えなくなった借り手は、家を手放すしかなくなるという。
1月23日、48の州及びコロンビア特別区とアメリクエスト社の親会社であるACCキャピタル・ホールディングズ社との間に和解が成立し、会社側は3億2,500万ドルを払うことに合意した。
また、この和解によってアメリクエスト社及びそのすべての子会社は、今後は標準的なマニュアルに沿った営業を行うことになった。すなわち、顧客の支払額はいくらになるのか、顧客はどんな義務を負うことになるのか、他のプランにはどんな利点があるのかなどを説明しなければいけなくなったのである。
これは、事実上、営業担当者に対する当局の命令に等しい。違反がないかどうかは独立したモニターが監督し、州に対して会社側は定期的に報告する義務を課せられた。
さらに、会社側は州に罰金を支払うだけでなく、今後何万人もの被害者が損害賠償を求めれば、和解によって賠償義務が課せられた会社側は、何億ドルもの賠償金を支払わなければならなくなる可能性があるという。
しかし、この和解によってアメリクエスト社は違法行為を認めたわけではない。
会社側は、「従業員の不正行為は禁止している。これまでローンを受けられなかった多くの人にローンを提供してきた」と主張している。
コネチカット州のブルーメンソール検事総長は、「これは非常に顕著で広域に渡る不正行為です。このような不正で利益を上げた企業は、司法の場で追及していくしかありません。そして、法律に従わないということであれば、免許を取り上げるしかありません」と言い、和解に応じていなければ裁判になった可能性があると指摘している。
以上、NHK・BS1で見たアメリカのABCニュース「ナイトライン」からヴィッキー・メイブリー記者のリポートでした。
放送後、アメリクエスト社は、メリー・オーバートンさんのケースについて、関係者の一人は当時従業員ではなく1年前に解雇した人物であり、ローンを担当した責任者も後に解雇したと述べたそうです。
さらに、その翌日、現地時間1月24日の「ナイトライン」は、アメリクエスト社の経営者について続報を伝えていました。
カリフォルニア州オレンジ郡に本拠を置くアメリクエスト社は、信用格付けの低い貧しい人たちを対象とした住宅ローン貸付の分野で全米一の企業だ。
大々的に広告を行い、大リーグのテキサス・レンジャー・スタジアムに社名を付けるのに7,500万ドルを投じたほか、2005年のスーパーボウルのハーフタイムショーのスポンサーを務め、ローリングストーンズのツアーコンサートを後援している。
アメリクエスト社の創業者であり筆頭株主のローランド・アーナル(Roland Arnall)氏(66)は、ブッシュ大統領やアーノルド・シュワルツェネッガー知事をはじめ、民主党の政治家に対しても、献金を熱心に行ってきた。
また、ブッシュ陣営にとってはトップクラスの資金調達者の一人で、2002年の大統領選挙以降これまでに1,200万ドル以上を集めている。
アーナル氏は公の場に姿を見せることはほとんどなかったが、ブッシュ大統領から駐オランダ大使に指名され、2005年10月、上院外交委員会の承認公聴会に出席。同じ時期に、アーナル氏は持ち株会社ACCキャピタル・ホールディングズ社の共同会長職を退いた(しかし、妻のドーン・アーナル氏は会長職に留まった)。
上院の公聴会では、「強い指導力がすばらしい結果を生む。正しい行いをすることがモットーだ」と述べたアーナル氏だったが、民主党議員がアメリクエスト社の活動に懸念を表明し、承認は遅れている。
アーナル氏は慈善団体に対しても何百万ドルもの寄付を行っているが、何万ドルもの寄付を受けている公民権擁護団体の幹部は「会社の問題はなんとかしなくてはならないが、アーナル氏本人は、立派な人物だと思う」と語った。
一方、企業からの寄付金を受け取らない方針の消費者団体は、アメリクエスト社を訴えている人々や非営利で活動する弁護士たちを代表して、「あのような会社の経営者が『アメリカの顔』となるなど、とんでもない」と言う。
メイブリー記者たちの取材によると、上院外交委員会の議員たちは、和解成立を受けてアーナル氏の大使承認に向けた「最後の障害が取り除かれた」と言っているという。
以上、2日に渡るABCのリポートでしたが、細切れにいくつものニュースを伝える「新方式」の悪いところが出たように思いましたね。
昔の「ナイトライン」のように、一つの題材を集中して取り上げれば、もっとよかったのですが。
なお、和解で州当局が得た3億2,500万ドルの使い道ですが、APとロサンゼルスタイムズは次のように伝えていました。
3,000万ドルは法律経費で、被害者の救済に充てられるのは2億9,500万ドル。
被害者は2つのグループに分けられて、1999年から2003年3月までの間に貸付を受けた第1グループには1億7,500万ドルが、2003年4月から現在までの間に貸付を受けた第2グループには1億2,000万ドルが、それぞれ割り当てられる。
政府が記録している第1グループの借り手は約23万5千人。全員が今回の合意内容を受理すれば、各々平均にして750ドル弱を分け合うことになる。
第2グループのための1億2,000万ドルは、州が借り手に払い戻し又は再貸付を行うために、留め置かれる。
もしも、借り手が和解に同意すれば、文字どおり期待していた「最低限のもの」が通知され、和解金を受け取れば、アメリクエスト社を訴える権利を放棄しなければならないそうです。
冒頭のメリー・オーバートンさんのケースでは、すでに個別に訴訟を提起しているので、和解には参加しないだろうとメイブリー記者は伝えていましたが、たしかに750ドル弱では少ない感じがしますね。工事が適切に行われ、額も少なければ別でしょうけど。。。
また、アメリカには業界を指導監督するような役所はなく、日本であれば法令で義務付けているような「適切な契約手続き」の標準化は、事後処理的に司法手続きで行うしかないという事後規制型のシステムの特徴がよく出てました。
こういうシステムだと、行政職の人数は少なくてすみますが、検事や弁護士が大量に必要となるだけでなく、法令に定められている手順・形式を怠ったという形式犯で検挙できないので、被害は拡大するということでしょうか。
もちろん、事業者に悪意がなければ、規制などないほうが良いに決まってますけど。。。
それから、経営者に対する刑事処分、会社に対する免許取消しなどの行政処分、被害者に対する民事賠償が一緒くたになって進行しているように見えますが、こうした点も興味深いですね。
この事件では、なにか会社も経営者も罪を免れているみたいで気分的にはすっきりしませんが、一般論で言えば、被害者に対する迅速な救済という点は評価できそうです。
もっとも、救済に充てられる「賠償金」が妥当かどうかも含めて、被害者の代理人である地方政府がきちんと機能すればの話ですが。。。
ちなみに、2002年にはハウスホールド・インターナショナル社と50州の間で4億8400万ドルという合意があり、ローン会社の分野では、今回の和解は2番目の規模だそうです。
【関連記事として】立法を官僚任せにしてきた結果? (2005/06/15)
「あの人、お母さんと、どんな関係なのかしらねえ」と語るメリーさんは、訴訟を起こしている。
「言語道断の由々しき不正だ」と語るコネチカット州検事総長のリチャード・ブルーメンソール氏は、コネチカット州だけでも2年間で200件近くの苦情が寄せられたことを明らかにしている。
コネチカット州における手口はパターン化していて、どれも所得を水増しして、資産をでっち上げ、虚偽の記録を元に貸し出しを膨らませている。その結果、ローンが払えなくなった借り手は、家を手放すしかなくなるという。
1月23日、48の州及びコロンビア特別区とアメリクエスト社の親会社であるACCキャピタル・ホールディングズ社との間に和解が成立し、会社側は3億2,500万ドルを払うことに合意した。
また、この和解によってアメリクエスト社及びそのすべての子会社は、今後は標準的なマニュアルに沿った営業を行うことになった。すなわち、顧客の支払額はいくらになるのか、顧客はどんな義務を負うことになるのか、他のプランにはどんな利点があるのかなどを説明しなければいけなくなったのである。
これは、事実上、営業担当者に対する当局の命令に等しい。違反がないかどうかは独立したモニターが監督し、州に対して会社側は定期的に報告する義務を課せられた。
さらに、会社側は州に罰金を支払うだけでなく、今後何万人もの被害者が損害賠償を求めれば、和解によって賠償義務が課せられた会社側は、何億ドルもの賠償金を支払わなければならなくなる可能性があるという。
しかし、この和解によってアメリクエスト社は違法行為を認めたわけではない。
会社側は、「従業員の不正行為は禁止している。これまでローンを受けられなかった多くの人にローンを提供してきた」と主張している。
コネチカット州のブルーメンソール検事総長は、「これは非常に顕著で広域に渡る不正行為です。このような不正で利益を上げた企業は、司法の場で追及していくしかありません。そして、法律に従わないということであれば、免許を取り上げるしかありません」と言い、和解に応じていなければ裁判になった可能性があると指摘している。
以上、NHK・BS1で見たアメリカのABCニュース「ナイトライン」からヴィッキー・メイブリー記者のリポートでした。
放送後、アメリクエスト社は、メリー・オーバートンさんのケースについて、関係者の一人は当時従業員ではなく1年前に解雇した人物であり、ローンを担当した責任者も後に解雇したと述べたそうです。
さらに、その翌日、現地時間1月24日の「ナイトライン」は、アメリクエスト社の経営者について続報を伝えていました。
カリフォルニア州オレンジ郡に本拠を置くアメリクエスト社は、信用格付けの低い貧しい人たちを対象とした住宅ローン貸付の分野で全米一の企業だ。
大々的に広告を行い、大リーグのテキサス・レンジャー・スタジアムに社名を付けるのに7,500万ドルを投じたほか、2005年のスーパーボウルのハーフタイムショーのスポンサーを務め、ローリングストーンズのツアーコンサートを後援している。
アメリクエスト社の創業者であり筆頭株主のローランド・アーナル(Roland Arnall)氏(66)は、ブッシュ大統領やアーノルド・シュワルツェネッガー知事をはじめ、民主党の政治家に対しても、献金を熱心に行ってきた。
また、ブッシュ陣営にとってはトップクラスの資金調達者の一人で、2002年の大統領選挙以降これまでに1,200万ドル以上を集めている。
アーナル氏は公の場に姿を見せることはほとんどなかったが、ブッシュ大統領から駐オランダ大使に指名され、2005年10月、上院外交委員会の承認公聴会に出席。同じ時期に、アーナル氏は持ち株会社ACCキャピタル・ホールディングズ社の共同会長職を退いた(しかし、妻のドーン・アーナル氏は会長職に留まった)。
上院の公聴会では、「強い指導力がすばらしい結果を生む。正しい行いをすることがモットーだ」と述べたアーナル氏だったが、民主党議員がアメリクエスト社の活動に懸念を表明し、承認は遅れている。
アーナル氏は慈善団体に対しても何百万ドルもの寄付を行っているが、何万ドルもの寄付を受けている公民権擁護団体の幹部は「会社の問題はなんとかしなくてはならないが、アーナル氏本人は、立派な人物だと思う」と語った。
一方、企業からの寄付金を受け取らない方針の消費者団体は、アメリクエスト社を訴えている人々や非営利で活動する弁護士たちを代表して、「あのような会社の経営者が『アメリカの顔』となるなど、とんでもない」と言う。
メイブリー記者たちの取材によると、上院外交委員会の議員たちは、和解成立を受けてアーナル氏の大使承認に向けた「最後の障害が取り除かれた」と言っているという。
以上、2日に渡るABCのリポートでしたが、細切れにいくつものニュースを伝える「新方式」の悪いところが出たように思いましたね。
昔の「ナイトライン」のように、一つの題材を集中して取り上げれば、もっとよかったのですが。
なお、和解で州当局が得た3億2,500万ドルの使い道ですが、APとロサンゼルスタイムズは次のように伝えていました。
3,000万ドルは法律経費で、被害者の救済に充てられるのは2億9,500万ドル。
被害者は2つのグループに分けられて、1999年から2003年3月までの間に貸付を受けた第1グループには1億7,500万ドルが、2003年4月から現在までの間に貸付を受けた第2グループには1億2,000万ドルが、それぞれ割り当てられる。
政府が記録している第1グループの借り手は約23万5千人。全員が今回の合意内容を受理すれば、各々平均にして750ドル弱を分け合うことになる。
第2グループのための1億2,000万ドルは、州が借り手に払い戻し又は再貸付を行うために、留め置かれる。
もしも、借り手が和解に同意すれば、文字どおり期待していた「最低限のもの」が通知され、和解金を受け取れば、アメリクエスト社を訴える権利を放棄しなければならないそうです。
冒頭のメリー・オーバートンさんのケースでは、すでに個別に訴訟を提起しているので、和解には参加しないだろうとメイブリー記者は伝えていましたが、たしかに750ドル弱では少ない感じがしますね。工事が適切に行われ、額も少なければ別でしょうけど。。。
また、アメリカには業界を指導監督するような役所はなく、日本であれば法令で義務付けているような「適切な契約手続き」の標準化は、事後処理的に司法手続きで行うしかないという事後規制型のシステムの特徴がよく出てました。
こういうシステムだと、行政職の人数は少なくてすみますが、検事や弁護士が大量に必要となるだけでなく、法令に定められている手順・形式を怠ったという形式犯で検挙できないので、被害は拡大するということでしょうか。
もちろん、事業者に悪意がなければ、規制などないほうが良いに決まってますけど。。。
それから、経営者に対する刑事処分、会社に対する免許取消しなどの行政処分、被害者に対する民事賠償が一緒くたになって進行しているように見えますが、こうした点も興味深いですね。
この事件では、なにか会社も経営者も罪を免れているみたいで気分的にはすっきりしませんが、一般論で言えば、被害者に対する迅速な救済という点は評価できそうです。
もっとも、救済に充てられる「賠償金」が妥当かどうかも含めて、被害者の代理人である地方政府がきちんと機能すればの話ですが。。。
ちなみに、2002年にはハウスホールド・インターナショナル社と50州の間で4億8400万ドルという合意があり、ローン会社の分野では、今回の和解は2番目の規模だそうです。
【関連記事として】立法を官僚任せにしてきた結果? (2005/06/15)

