2006年06月24日

「罪作りなことをする」という日本語をアメリカにも広めたい

2005年12月16日、マイアミで左官及び石工事の建設業を営むナジール・バティスト(Narseal Batiste)氏(32)は、ホテルの一室で、国際的テロ組織「アルカイダ」(al Qaeda)の代理人と面会した。
このとき、バティスト氏は、聖戦を戦うイスラム軍創設を計画していると言い、アルカイダの代理人に対して、機関銃、ブーツ、制服及び車両を含むイスラム軍の創設に必要な物資・装備のリストを示した。

同月22日のアルカイダの代理人との会合では、バティスト氏はシカゴのシアーズ・タワー(110階建て)への攻撃を含む彼の作戦の概略を示して、兵士のブーツのサイズを書いたリストを提供し、29日にアルカイダの代理人からブーツを入手すると、新たに、ラジオ、双眼鏡、防弾チョッキ、武器、乗り物、車両及び現金5万ドルを含む必要な物資・装備のリストを示した。
翌2006年1月28日、バティスト氏のほかにアブラハム(26)、ヘレーラ(22)、Rオーガスティン(22)、ファノール(31)の4人がフロリダ州イスラモラダ(Islamorada)で車を交換する際にアルカイダの代理人と会って、バティスト氏と会合した。

2月19日、マイアミデード(Miami-Dade)郡のアパートで、バティスト氏とアブラハム氏は、アルカイダの代理人と会合した。
バティスト氏が、4月第2週に彼の5人の兵士にアルカイダの訓練を行いたいと述べ、「できるだけ多くの悪魔を殺す」合衆国に対する「全面的な地上戦」は「9.11とちょうど同じか大きいぐらいの」シアトル・タワーの破壊で開始されるという彼の作戦の詳細を語って、シカゴまでの旅行に一緒に来るかどうかを尋ねて、ビデオカメラが必要だと述べた。

3月10日、バティスト氏とレモーリン(31)氏がアルカイダの代理人と会い、このときにバティスト氏はアルカイダに忠誠を誓う宣誓を行った。
同月16日、バティスト氏ら7人は、マイアミデード郡の倉庫でアルカイダの代理人と会合し、先に宣誓したバティスト氏を除く6人がアルカイダに忠誠を誓う宣誓を行い、5都市のFBIビルを爆破する筋書きについて討議するとともに、アルカイダの代理人からデジタルビデオカメラを入手すると、バティスト氏は今週中にマイアミのFBIビルを撮すのに「ちょうど良い尺の長さだ」と語った。

23日、バティスト氏は、共謀者に写真とビデオでFBIビルを偵察させるために彼が使うバンを借りるよう、アルカイダの代理人に依頼した。
翌24日、バティスト氏とアブラハム氏は、アルカイダの代理人とともにFBIビルを撮すデジタルカメラ用のメモリーチップを購入するためにマイアミデード郡の店に行き、車を運転して、FBIビルと州兵兵器庫を通り過ぎた。

26日、バティスト氏とBオーガスティン(21)氏は、アルカイダの代理人に対して、FBIビルの写真を提供したが、それと同様に、マイアミデード郡内にある連邦司法省ビル、連邦裁判所ビル、連邦拘置センター、マイアミ警察本部を撮影した写真とビデオを提供した。
このときに、FBIビルを爆破する筋書きについて討議したが、4月6日にも、バティスト氏のほかBオーガスティン、ファノールの2人が、アルカイダの代理人と会合して、同様の討議を行った。

5月24日、バティスト氏はアルカイダの代理人と会合し、彼の組織にある様々な問題のために遅れているが、彼としては、自分の作戦を継続し、アルカイダとの連携を維持したいと望んでいると述べた。

以上、起訴状からの一部抜粋ですが、6月22日夜までにバティスト氏ら7人はテロを共謀した容疑で逮捕され、翌23日には起訴されました。
なぜなら、ここに登場する「アルカイダの代理人」は、「おとり捜査官」だったからです。


逮捕されたバティスト氏は、シカゴ生まれ。「無実を信じている」と語る妻(34)と4人の子どもを持つ父親で、裁判所に対する申し立てによれば年収約3万ドル。
一緒に逮捕された6人のうち少なくとも2人に仕事を与えたことがあるが、少なくとも数人は武道(マーシャルアーツ)の専門家と評された彼の仲間だった。

2人の子どもを持つレモーリン氏の内縁の妻(32)は、バティスト氏が彼らを集めたと言い、「彼らに仕事を取ってきてやることで、支援していました」と語る。
「彼らは好奇心をそそられました。彼らは武道を見ました。彼らは学習したかった。彼らは単なるケンカは知っていました」と、ファノール氏の親戚(30)は語り、彼はコーランを研究したが、聖書も研究していたと強調した。

被告らの1人と親しい友人によれば、武道を通して行われていたバティスト氏の説教は、20世紀初期の「ムーアッシュ・サイエンス」(Moorish Science Temple of America)から来ていると言う。

「ムーアッシュ・サイエンス」の主な教義は、アフリカ系アメリカ人がムーア人の子孫で元はイスラム教徒だったことから来ており、イスラム教の分派を主張しているが、形而上の教えは、イスラム教よりも道教に近く、仏教、キリスト教の影響も等しくあり、憲章や儀式はフリーメーソンに倣っているという。
また、第一次世界大戦では戦闘を拒絶し、黒人であることに誇りを持ち二級市民だという考えを拒絶したことで迫害され、東洋の神秘主義の影響からか第ニ次世界大戦中は日本との関係を疑われて現代に至るが、近年では正統派イスラムに圧されて衰退しているという。

もっとも、バティスト氏の妻は、夫はクリスチャンだと言い、彼は子どもたちには聖書を教えていると言う。
自宅にイエスの写真を飾っているファノール氏の母親は、息子はイスラム教徒ではなく、「彼は、聖書を読むのを愛します」と言うが、彼の電話帳には「アラーから全て発している」との書き込みもある。

被告らのうち5人は米国籍を持っているが、アブラハム氏はハイチからの合法的な移民、レモーリン氏は同じくハイチからの不法移民だった。
レモーリン氏の内縁の妻は、「これらの人たちは無一文です。彼らは、お金を持っていません」と言う。

また、被告らのうち4人は逮捕されたことがあるが、殴打、マリファナ所持、火器の違法所持、免停中の運転など、いずれも軽い罪だけだった。
犯罪歴の中には何も国内テロへの関心を示唆するものはなかった、と当局も話している。

以上、「マイアミ・ヘラルド」紙のリポートその他からの引用でした。

首謀者とされるバティスト氏ですが、最初から最後まで「おとり捜査官」である「アルカイダの代理人」に主導されているように見えますね。
3月16日にデジタルビデオカメラを入手して今週中にFBIビルを撮すと言いながら、期限が来た1週間後の23日になってレンタルのバンが要ると言い出すところなど、威勢のいい言動とは裏腹に完全に腰が引けていたようです。

「おとり捜査官」が辛抱強く、計画を進めていくように強い圧力をかけ続けていなかったならば、こうはならないでしょう。
翌24日にデジタルカメラ用のメモリーチップを買いに行くのも、本当にお金がないのも事実かもしれませんが、時間稼ぎに見えなくもない。

「アルカイダの代理人を名乗る人物を信じていいのか」という半信半疑の気持ちもあれば、「頭のおかしいヤツなら話を合わせておいてカネだけはもらおう」という下心もあれば、「相手が本物だと知ってからは、警察には言えないし、怖くなって手を引けなくなる」という印象も受けました。

もっとも、「政府に反感を持っている危険人物」という見方だってできますし、予防的に危険分子を排除しておくのが「おとり捜査」の目的だという意見もあります。
「もしも、本当にアルカイダが接触して来て、援助をしたらどうなるかを考えろ」というわけです。


しかし、そんな可能性が本当にあるのかと思ってしまいます。
必要な資質に欠ける「武道をやってる変な人」を訓練し、援助したところで、成功する可能性は低い、とも言える。

麻薬の密売を生業としていると思われる人物に取引を持ちかけるような「おとり捜査」は理解できますけど、例えば「政府をやっつけたい」とか大言壮語しているだけの奇人変人に、資金や装備やノウハウを提供するふりをして「罪を作る」のに、どんな意味があるのでしょう。
標的となった人々と違って、知識や教養があり、恵まれた地位にあって生活にゆとりのあるような人々が、するようなことなのかどうか。

「罪作りなことをする」という日本語には、悲しみや哀れみの感情が込められているように思うのですけど、この言葉も「もったいない」と同様、世界に広めたらいいのにと思いました。。。


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