2006年06月25日

遠くの国家より、近くの隣人

これまで、フランスには「不法移民であっても、一定条件を満たせば、10年後に滞在許可が得られる」という制度があったが、このほど新たな移民法案が6月末にも成立する見通しとなり、この制度は廃止されることになった。

5年前にアルジェリアから渡ってきたソフィアさんは4人家族で、息子のサミール君(12)も娘のイクラムちゃん(7)もフランスの学校に通っていおり、今ではフランス語以外話せないという。
ソフィアさんはベビーシッターを、薬剤師だった夫のアブデラフマンさんは塗装工をして生活を支え、滞在許可の条件とされる収入申告も毎年欠かさず行ってきた。

ソフィアさん一家にとって滞在許可制度の廃止は大きなショックで、国外退去を求められるおそれも出てきた。
こうしたなか、一家と家族ぐるみのつきあいをしてきたマルタさんは、支援活動を始めた。

最近の世論調査でも「移民規制をもっと強化すべきだ」と考える人は60%に上っており、マルタさんも「新たな移民が増え続ける状況では、規制強化は必要だ」とは考えているが、自分の子どもの同級生までもが国外に追い出される恐れがあると知って、法案に反対するようになったという。
後見人となって子どもたちを守ろうというフランス人のグループが結成され、マルタさんも、ソフィアさんの子どもたちのために後見人となるための署名式典に参加した。

マルタさんは、「これからも、ずっとそばにいて、彼女たちの家族を助けていくつもりです」と言う。
国外追放にならないように後見人となったり支援を申し出て今回の法案に反対している人は、既に6万人を越えている。

こうした事態を受けて、サルコジ内相も、6月中旬、フランスで生まれたり学校に通うなど既に社会に同化している子どもたちには、一定期間に申請を受け付けた者に限り滞在許可を与える特例措置を発表した。

以上、NHK総合「海外ネットワーク」から長尾香里記者のリポートでした。


ただし、リポートでは「これまでは人道的な観点などから移民の受け入れには寛容な態度をとってきた」「これからは、特定の技能を持つなど、社会に必要な労働力になるかどうかを判断基準にする方向に・・・」と説明していましたが、これでは政治家が好きなプロパガンダの受け売りになってしまいそうです。

事実は、「これまでは、合法・不法を問わず社会に必要な労働力であった安い単純労働者を大量に受け入れてきたが、市場の自由化と生産拠点の海外移転などが進んで状況が変わってきた」というところでしょう。
量的に言えば、人道的な観点から受け入れた難民よりも、単純労働力として受け入れた合法的な移民のほうが多いはずですし、少子高齢化の影響も、近年になって急速に進行した日本などとは状況が違いますし、影響の大きさと早さで言えば、産業空洞化のほうが大きいでしょうね。

もっとも、フランスの学校が、主に人道的な観点から、「教育の平等という理念」に立って、不法移民の子どもたちを受け入れてきたというのは、そのとおりでしょう。
日本も、こうした点は見習うべきだと思いました。

他方、「一定条件を満たせば、10年後に滞在許可が得られる」という制度ですが、これを当てにしていた人たちもいることを考えると、一方的には破棄するのは信義に反する感じもしました。
「これまでだって退去処分にすることは出来たのだから、既得権のように考えるのはおかしい」とも言えますが、民放にも取得時効があるように単純には割り切れないでしょうね。

日本の場合ですが、ちょうど1年ほどの前の記事で取り上げたフィリピン人のウォン・ジャイさん一家は、2005年11月21日、家族全員に在留特別許可が認められました。
この家族の場合、不法残留期間は15年でしたが、長期に渡って平穏に暮らしてきた点は評価されていいでしょうし、逆に言えば、この事例と同様に入管法違反以外に法令違反がないケースについては、厳しく取り締まる「北風政策」よりも、許可の基準を公開する「太陽政策」のほうが、かえって治安対策上も良い効果が期待できそうだも言えそうですけどね。

2004年の在留特別許可は、許可を受けた外国人数で1万3,239人で、2000年の6,930人と比較すると約2倍になっていますが、今のところ法務省入国管理局は「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例」を公表することで、「処分の透明性を高める」ようにしているようです。
しかし、これだと基準が見えにくいのが欠点でしょうか。


【関連記事として】曖昧な日本というシステムの中の外国人(2005/06/14)

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