2006年07月06日

アンチ・エイジング

ラスベガスの「セネジェニックス医療研究所」(Cenegenics Medical Institute)は、アラン・ミンツ(Alan Mintz)医師(67)によって1998年に設立され、現在では、世界中に1万2千人の患者を抱えているという。
ミンツ医師自身、長年にわたるボディービル愛好家でフィットネス・マニアだが、定期的な運動と栄養値の高い食事、ビタミンやサプリメントに加えて、毎日、ステロイド及びヒト成長ホルモンを自ら注射し、患者にも奨めている。

ミンツ医師は、彼自身約10-11年間ヒト成長ホルモン注射しているが「非常に低用量」なので悪影響はないと主張し、「エネルギーが漲る感じがして体脂肪が落とせる」「脳機能が5-6年前よりずっと良くなっている」と語る。
また、ミンツ医師によれば、加齢に伴ってテストステロンやヒト成長ホルモンの分泌が減っていく現象は、「成長ホルモン分泌不全症」と呼ぶべき病気の一種であり、「正常と考えられるものの範囲内で常に」失われたホルモンを補充しているのだと言う。

彼は、老化現象もホルモン不足が原因だと主張し、テストステロンとヒト成長ホルモンは、多量の筋肉を構築して脂肪を減らし、骨格を強くして骨粗鬆症を予防すると主張する。
「セネジェニックス医療研究所」は、全米に100人を超える医師のネットワークを持ち、東京、ソウル、香港の企業とも提携し、2006年の売り上げは2,000万ドルに達する。患者の中には、映画スター、ラスベガスのエンタテイナー、CEO、外国の大統領が含まれ、月に1,000ドルを注ぎ込む人もいるという。

既にミンツ医師は脱退しているが、「全米アンチ・エイジング医学学会」(American Academy of Anti-Aging Medicine)が1993年に初めて開催されたとき、出席した内科医は30人だった。
それが今日、85ヶ国に17,000人の会員を擁するようになり、その数は2年ごとに2倍になっているという。アンチ・エイジング製品の市場は、年間300億ドルから500億ドルと見積もられている。

アメリカ医学学会誌は、医療関係者に対して「老化あるいは老化に関連する状況を治療する目的で、ヒト成長ホルモンの売買あるいはマーケティングを行うことは違法である」として、最高で5年の刑が科せられると警告している。
食品医薬品局によれば、ヒト成長ホルモンを処方できるのは、脳下垂体の損傷によって引き起こされる「成長ホルモン分泌不全症」の場合だけで、発症率は1万人に対して3人にすぎない。

国際内分泌学会の会長を務めるヒト成長ホルモンの指導的研究者、シュロモ・メルメド(Shlomo Melmed)医師は、「ヒト成長ホルモンの投与が長寿に結びつくことを示す研究はありません。長期に渡ってヒト成長ホルモンを投与した場合、老年に対抗して何か役立つことを示す研究はないのです」と言う。
メルメド医師によれば、テストステロンとヒト成長ホルモンの利点は多くの場合一時的なもので、大部分は美容効果であり、関節痛、手根管症候群、糖尿病、高血圧および心臓病を含ん副作用の危険性が高いが、最も懸念されるのは前立腺癌のような発見されない癌細胞の成長を刺激することだという。

メルメド医師は、年を取るとともに成長ホルモンの分泌が減少することは癌と心臓病の危険から私たちを保護しているかもしれないという点で有益かもしれず、不幸なことに発見する方法がない癌に対して成長ホルモンの投与は逆に「火に油を注ぐようなものだ」と言う。
しかし、こうした指摘に対して、ミンツ医師は、「スタッフの内科医が患者を注意深くモニターして癌の兆候に気をつけている」「ヒト成長ホルモンを処方しているのは患者の7%に過ぎず、いずれも正常値よりも分泌量が少ない患者だ」と主張している。

ミンツ医師は、内分泌が専門ではなく、放射線が専門であり、「セネジェニックス医療研究所」にも内分泌学者はいないが、理事会には2名の内分泌学者がいるという。
また、被験者も医師も治験薬の中身を知らない比較試験「二重盲検試験」(double blind study)を実施していないことを認めているが、ミンツ医師は自分をこの分野のパイオニアだと考えている。

実際、安全性に問題があっても治療を求める患者は大勢いる。

以上、TBSで見たアメリカのCBSドキュメント「60Minutes」からクロフト記者のリポートでした。

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