2006年07月11日

空騒ぎと危機管理の間には

確かに国連安全保障理事会は、先週の北朝鮮のミサイル発射に対する国際的な批判を明記すべきです。
しかし、何か重大な進展がこの問題やこれと関連する北朝鮮の核問題に関して得られるとすれば、それは安全保障理事会の決議や制裁によってではありません。

実際に梃子となるものを持った国が3つだけありますが、アメリカ、中国及び韓国のどこもまだ、さほど挑発的でない路線に北朝鮮を押し込んでいくためにできることのすべてをしているとは限りません。
これらの国が、そうしたことを行うまで、安全保障理事会の決議は、その大部分が象徴的な余興のままでしょう。

先週のミサイル発射は、直ちに北東アジアにおける安全保障の構図を複雑にしましたが、それは安全保障理事会からの強制的な制裁を明白に正当化する国際法や条約に違反していませんでした(インドは、ちょうど昨日、核弾頭を搭載可能な長距離ミサイルの実験をしました)。
それぞれの国家、特に3ヶ国のうち最も影響力のある国は、核兵器及び長距離ミサイルを放棄するよう北朝鮮に説得するために、短期の処罰と長期的な誘因を考案することができるでしょう。

以上、7月10日付け米紙「ニューヨーク・タイムズ」社説「The U.N. Sideshow on Korea」からの一部引用でした。
それから、この社説で興味深いのは、6ヶ国協議が膠着状態に陥ったのはブッシュ政権が行った「不必要な障害」が原因だと指摘しているところです。


ほぼ1年前に、北朝鮮は、アメリカ、中国、ロシア、日本および韓国との協定の一部として核兵器プログラムを放棄することに原則として賛成しました。
しかし、これと無関係な金融制裁をブッシュ政権が昨秋発表し、北朝鮮が会談を放置したので、重大な細部の詰めは作り出されませんでした。ワシントンは、金融制裁中の直接交渉の開催を拒絶しました。

この不必要な障害が除去されても、核軍縮を完成する前に北朝鮮が民生用原子炉を希望するので、核会談を終了させることは困難でしょう。
民生用から軍事用に核燃料を転換する北朝鮮の記録を要求して、民生用原子炉を建設する前に、それが核兵器拡散防止規則に従っていることを実証しなければなりません。

(以上、引用終わり)

アメリカは、2005年9月から偽アメリカ・ドルのマネーロンダリングに関わったとして、マカオの「バンコ・デルタ・アジア」その他の銀行取引を停止し、北朝鮮系の口座を凍結しましたが、凍結総額約4,600万ドル(約53億円)とも言われる口座は、武器や麻薬等の決済に使われていたとみられるものの、通常の貿易にも使われていました。

また、制裁を恐れたアジア系金融機関が、こぞって北朝鮮系の口座開設を拒否し、さらには、1995年に平壌に設立された英国系銀行も合法的な取引までできなくなっていると報じられていました。

北朝鮮は、同年11月の6ヶ国協議でアメリカの姿勢を批判して「制裁解除まで核問題を協議しない」と表明し協議は空転しましたが、逆にアメリカは6ヶ国協議への復帰と核放棄に応じなければ残された欧州系口座も調査する考えを示すなど、圧力を強めていました。
そして、日本は、北朝鮮から制裁解除に向けた対米工作を要請されていたようですが、そうした役割を果たすことで今後の交渉を有利に進めるような才覚はなかったようです。

制裁措置というのは、ある意味では戦争と同じで、発動は比較的簡単だが解除するのが難しい性質のものですから、なぜ大事な時期に対話プロセスの阻害要因になることをアメリカが敢えてしたのかというのは、大きな疑問です。
しかも、その制裁の中身は「無差別的なもの」であり、犯罪行為の抑制や処罰という観点からすると、適切な規模と内容と備えていなかったようです。

「正義を求めて戦争になるくらいなら、不正義の平和の方がいい」と言ったのは坂口安吾じゃなかったかと思いますが、ブッシュ政権内の戦争経験のないタカ派、いわゆる「チキン・ホーク」たちは、「正義」を掲げてクリントン政権の「弱腰」を強く批判し過去の合意を破棄してきたので、同じような決着になるのを恐れている。
それで、北朝鮮を挑発して対話プロセスを破壊しようとしているようにも見えますね。

それがここに来て外交交渉を優先させる考えを強調してきているので、ブッシュ政権の「カウボーイ外交路線」に変化が生じているとの見方も出ているようですが、ホワイトハウスは「ブッシュ・ドクトリン」に変更はないと表明しています。
「先制とは戦いではなく、誰かが危害を加える前に阻止することなんです。そのためには外交的な手段も講じることが出来ます」と、トニー・スノー(Tony Snow)大統領報道官は述べていました。

この軍事的戦略的な背景として、アメリカABCは「ブッシュ政権は、北朝鮮に対して軍事行動を取れば、韓国などの何百万人の市民が報復の犠牲になるとの認識を示しています」と伝えていました。

他方、日本政府ですが、「強いて日本のように未明から大騒ぎする必要はない」との韓国大統領府の批判に対して、安倍官房長官は「危機管理的な対応をとるのは当然のことだ」と反論しましたが、残念ながら安倍氏個人の発言だけを見ても「危機管理的な対応」をしたようには見えませんでした。

極め付けは、「敵基地の先制攻撃」で、官房長官、外相、防衛庁長官と同種の発言を行ったことです。
政府の要職にある彼らの立場なら、例え「従来の政府見解」の繰り返しあろうが、今はもっと抑制的に語るべきであり、威勢のいい脅し文句が必要なら、アメリカのように前任者や国防族議員にでも発言してもらえばいいのに、逆に踏み込み過ぎたところを国防族議員にたしなめられたようです。

こういうところを見せられると、いずれの方も私には「宰相の器」には見えませんでしたが、それじゃあ誰が「宰相の器」かと訊かれても答えに窮するところではありますね。。。


【関連記事として】気持ちはハワイの方に向いている(2006/07/07)

soliton_xyz at 23:15│Comments(0)TrackBack(4)日本とアジア 

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1. こんばんは、お邪魔しますね。  [ 現役教師の奈保美 ]   2006年07月12日 09:43
教師やってると、色んな場面に遭遇するものです。生徒の思春期は特に…
2. オゥ!お前ら基本がなってねーぞ!!  [ 高岡 ]   2006年07月12日 10:15
ペットショップ行ってきたんだが猫にしろ犬にしろかなり高いんだな!!子犬が20万もするなって夢にも思わなかったぞ
3. あなた様の白いミルク飲ませてください。  [ 留守番の妻 ]   2006年07月12日 10:19
悲しいことに旦那様は私に全く興味が無いようです。私の性欲は度が過ぎているのでしょうか。
4. こんばんわ〜  [ コンパニオンやってます。 ]   2006年07月12日 10:27
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