2007年07月26日
大日岳遭難訴訟 和解成立
和解内容は以下のようです。
(1)国が遺族に一審判決が認めた賠償額と同額の和解金を支払う
(2)冬山研修の安全対策に関する検討会を設置する。
(3)和解条項とは別に、国が遺族に謝罪する。
和解内容は、非公開でなければ、近々にも、明らかになるでしょう。
なお、今回の和解の態様が、引率登山に甚大な影響を与える事は必至です。
判例時報に掲載されている一審判決をぜひ御熟読下さい。
本blogは資料として、当分、このまま残しておく事にします。
なお、本Blogで述べて来た「中山証人と重野証人は間違っている」という主張は従前のままです。
2007年03月12日
高裁 和解勧告 大日岳控訴審結審
名古屋高等裁判所金沢支部(長門栄吉裁判長)は「一審での証拠で十分説明されている」として国の新たな証人申請を却下し、原告・被告双方に和解を勧告したということです。
第一回の和解協議は5月7日とのことです。
http://www2.knb.ne.jp/news/20070312_10605.htm
和解成立の後も一審判決は残ると思われます。一審判決は最高裁判例ではありませんけれども、判決文は、今後の雪山事故の裁判に引用される可能性が高いはずです。(今回の状況は、高等裁判所もこの一審判決を支持していることを意味しますから)。
よって、今後、雪山での引率登山中の事故において、事故発生地点が、稜線から風下側の雪地形であった場合には、主催者や引率者の方が法律上の責任を問われる可能性かなり増加したと思います。
かくて、特に、営利目的で、初心者を連れて雪山に入山されるガイドの方々には、判決文の熟読を強くおすすめします。
2006年12月21日
大日岳訴訟 控訴審 第一回口頭弁論期日
2006年12月19日、名古屋高等裁判所金沢支部で、大日岳遭難事故訴訟の進行協議期日が開かれ、2006年3月12日に、第一回口頭弁論期日の法廷が開かれることが決まりました。
毎日新聞HPの2006年12月20日付けニュースに:
被控訴人側(ご遺族側)は、ご遺族の意見陳述と共に、審理はすでに尽くされた、として、控訴棄却を陳述する予定。一方、控訴人側(国側)は、二人の証人の証人尋問を請求する。
と、記載されていたと記憶してます(2006年12月21日, pm13:00には、すでに、毎日新聞記事は見当たりませんでした)。確認してみて、もし間違っていたら訂正致します。
事件番号は、平成18年ネ第136号損害賠償請求控訴事件である。
法廷は、第一号法廷。開廷予定は午後三時。
2006年09月02日
「吹き溜まり崩落実験」の文献探し(その3)
ぼくは、2006/07/01付の日記で、(1) 風下側絶対進入禁止説 (2)吹き溜まり崩落実験 (3)吹き溜まりには具体的危険あり説 についての中山建生さんのご論文(査読あり)を学術誌『雪氷』で見つけられなかったことを報告しました。
また、2006/07/03付の日記では、前記(1), (2), and (3)についての中山さんの学会発表(口頭発表orポスター発表)を、1986年から2005年まで日本雪氷学会全国大会プログラムで探した所、1991年度をのぞいては、発見できなかった、と報告しました。
なぜ「1991年度をのぞいては」かというと、前回は閲覧時間が短く、1991年度の日本雪氷学会全国大会プログラムそのものを見つけられなかったからです.
かくて、前記(1), (2), and (3)について、中山さんが日本雪氷学会で学会報告をされたのか否かを知るためには、1991年度の日本雪氷学会全国大会プログラムを『雪氷』のバックナンバーから探し出す必要があります。
で、一昨日、大学図書館に行ってきました.
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2006年08月20日
大日岳裁判の控訴審日程
大日岳遭難事故裁判の控訴審についての日程が、HP「大日岳遭難事故を考える」に、以下のように掲載されていました。
第1回控訴審日程決まる
名古屋高裁金沢支部での第1回控訴審の日程が下記の通り決まりました。
ただし、この日は進行協議で法廷が開かれるかどうかはわかりません。
9月29日(金) 15:00
ここで、「口頭弁論期日と進行協議期日はどう違うの?」という疑問が湧くはずです。
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2006年08月06日
登山中の熱中症事故判決
熱射病の罹患が疑われる場合、(1)直ちに応急措置を開始(2)、速やかに医師と連絡、(3)緊急下山の方策をとるべき注意義務を負う
暑い日が続きます。
ある県立高校の山岳部の合宿登山中に熱射病によって部員の高校生が死亡した事故において、事故は引率教師の法的な過失が原因であるとして、県に約5000万円の損害賠償金の支払いを命じた判決文から抜粋(一部省略)してご紹介します。
事件番号は平成9年(ワ)第1162号。裁判所は浦和地方裁判所です。
主文
1 被告県は、原告らに対し、それぞれ金2550万7376円及びこれに対する平成6年7月24日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 原告らの被告A、被告B及び被告Cに対する請求並びに被告県に対するその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その2を原告らの負担とし、その余を被告県の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
続きを読む2006年08月02日
飲酒運転、飲酒登山、飲酒スキー
一緒に酒を飲む場合は、相手が酒酔い運転をしないように制止すべき注意義務(法的責任)がある。
5日前の7月28日。東京地裁で、飲酒死亡事故についての民事事件の判決がありました。
この裁判の特徴は、原告が、加害者の30代の男性(刑事責任が確定しています。危険運転致死傷罪などで懲役7年)だけではなく、以下の二者にも、法的な責任があると主張して賠償金の支払いを求めた点にあります。
(1) 加害者の男性と一緒に酒を飲んでいた同僚。加害者の男性の飲酒運転を止める法的責任を怠ったとして。
(2) 加害者の男性の配偶者。「飲酒運転を繰り返していたのに止めなかった」として。
続きを読む2006年07月25日
顧問教諭の法的過失認定
高校山岳部 部活の休憩中の水難事故 1540万円の賠償命令 静岡地裁
HP「登山事故の法的責任について考える」のニュースにも書きましたけど:
2006年7月19日、静岡地裁で、富士高校山岳部の2年生の男子部員(当時16歳)が、富士川での部活動(クライミングの練習)の昼食後の休憩中に、引率教諭の許可を得て川を泳いで流され死亡したのは、引率教師2人の注意義務違反が原因として、両親が県に計約6245万円の損害賠償を求めた訴訟の判決がありました。
裁判所の結論は1540万円の支払い命令でした。
続きを読む2006年07月22日
落雷事故 差戻審始まる
高校サッカー大会での落雷訴訟の差し戻し審始まる
2006年7月18日付四国新聞や7月19日付毎日新聞などの報道によると: 2006年7月18日、高松高裁で、高校のサッカー大会の試合で落雷を受けた男性(現在20代)らが、学校と主催者側に約3億円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し審第1回口頭弁論が開かれたようです。
最高裁判所は、今年3月に、この男性らの請求を棄却した2審高松高裁判決を、「引率教諭は落雷を予見できた」と判断して破棄し、審理を高裁に差し戻しました。
法的過失が成立するためには、すでに何度かご説明したように、予見可能性と結果回避可能性の両方が必要です。
最高裁が、法的過失成立のための2要件のうちの予見可能性について、「予見可能性あり」としたわけですから、少法的過失についての争点は、結果回避が可能だったかどうか、だけということになります。
続きを読む2006年07月17日
梅雨明け目前 最高裁落雷判決をもう一度
学校登山、夏山合宿、ガイドツアー関係者の方には、最高裁落雷判決の再読をオススメします
もうすぐ梅雨が明け、夏山シーズンが始まります。
今年の夏は、「高等学校のサッカーの試合中の落雷事故について、教諭には落雷事故の発生を予見すべき法的義務あり」とした最高裁判決後の最初の夏です。
学校登山、夏山合宿、ガイドツアーの引率者の方々は十分ご留意ください。
この最高裁判決の紹介とぼくの感想は、本Blogの2006年03月16日の日記「落雷は予見可能とした最高裁判決を読んで思ったこと」に書きましたので、興味のある方はご覧下さい。
http://blog.livedoor.jp/somiyaseiyu/archives/50306724.html
今回は、判例タイムズNo.1208号、判例時報1929号、そして『岳人』2006年8月号から、この最高裁判決についての解説から、ご紹介します。
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