2006年05月
2006年05月12日
法廷における科学的証拠の採用試験
法廷で、「科学的証拠として証拠能力あり」となるには、1次試験 (科学レポートとしての要件)だけではなく、2次試験 (法廷における科学的証拠としての要件)の合格も必要。
富山地裁は、「大日岳研修会の講師らに対して大日岳山頂付近の吹き溜まりに進入してはならない法律上の義務を課す必要があるくらい大日岳山頂付近の吹き溜まりは危険な場所と言わざるをえない」という結論を下しています。
富山地裁がこの結論を導くために用いた"科学的な証拠"は、「吹き溜まりは崩落の危険性が高いので絶対に進入してはならない場所である」とした中山証言である、とぼくは認識しています。
続きを読む2006年05月11日
判決文の超訳・その1
このBlogの5月6日の日記を読んだある方から「判決文は読みにくい。もう少し、なんとかならないかなあ」と言う感想をいただきました
そこで、今回は、「5月6日の日記中の判決文→話し言葉」にチャレンジします。意訳したり、つけ加えたり、推し量ったりの、いわゆる、超訳です。もし、{ここの翻訳はおかしい!!」と感じた方は、どしどし、お申し出下さい。
なお、5月6日の日記中の判決文の内容とは、裁判所が、吹き溜まり部分への進入についての国の言い分を却下する理由を説明している部分です。国の言い分は以下のようでした。
「ひさしならともかく、吹き溜まり部分にまでも進入しないようにすべき法律上の義務までは、あの事故当時には、ありませんでした。」
続きを読む2006年05月10日
一審判決、控訴により、未確定に
2006年5月2日、国は研修会の講師らの法的過失を認めた富山地裁判決を不服として控訴
2006年5月2日、国は、亡くなられたお二人の御冥福を心よりお祈り申し上げ、また、御遺族の方々に対し心より御悔やみ申し上げたいという気持ちには変わりはないけれども、講師らの登高ルート及び休憩場所の選定に法的な過失があるとした富山地裁判決については不服があると言わざるをえないとして、控訴しました。
この控訴により、一審判決は確定せず、上級審の名古屋高等裁判所金沢支部の判断を仰ぐことになります。
なお、HP「大日岳遭難事故を考える」の「国のプレス発表文書はこちら」に、控訴についての文部科学省のプレス発表文書「北アルプス大日岳遭難事故訴訟について」が掲載されています。URLは以下のようです。
http://www.geocities.jp/sa9zi2005/続きを読む2006年05月08日
富山地裁判決へのBlogの反応
Blogのほとんどが原告勝訴を祝福
今日は、富山地裁判決へのネット上の反応をご紹介します。
以下は、yahoo!のBlog検索でヒットした富山地裁判決へのコメントのあるBlogです。(2006.05.08現在)。「」内はタイトル、()内はBlog名です。
なお、この判決について複数の日記が掲載されているBlogは、ひとつの日記だけ紹介してあります。(僕のBlogも含みます)
読んでみると、原告の勝訴を祝福するBlogがほとんどでした。その割合は90パーセント近くあります。
続きを読む2006年05月06日
『研修会は吹き溜まり進入禁止』地裁判決
今回は、以下の国側の主張を否定する裁判所の論理を、判決文Pp.28-29より、ご紹介します。
国側の主張「雪庇とは,吹き溜まりの部分を含むものであるとの共通認識はなく,むしろ庇部分を指すとの認識が一般的であったから,吹き溜まり部分に進入しないようにすべき法律上の義務はない。」
なお、データ化の過程での間違いがあるかもしれません。必ず、HP「大日岳遭難事故を考える」に掲載中の判決全文PDFをごらん下さい。
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2006年05月04日
中山説に一部依拠 地裁判決
吹き溜まり部分は,先端部分と同様に危険であるとまでは認識されていなかったが、その危険性を指摘する登山家も存在していた。 (富山地裁)
今日は、日本勤労者山岳連盟の中山建生さんの「冬山登山においては、登山者は、稜線から風下側の吹き溜まり部分にも進入しても近寄ってもならない。一切の例外はない。私は、昭和60年以降、講師の立場で参加している雪崩講習会で、稜線から風下側には進入してはならないと講習生に教えている。」と言う主旨の証言(以下、中山説と書きます)」についての富山地裁の判断に関する部分を、判決文pp.26-28から、ご紹介します。
続きを読む2006年05月02日
富山地裁 原告側の結果回避方法を棄却
富山地裁は、原告側の主張した結果回避方法の中のどれを認め、どれを却下したか
ぼくは、2006年4月25日の日記で以下のように書きました。
ツアー登山・雪崩講習会・バックカントリーツアーの主催者のみなさんは、判決が(2)だった場合、必ず、読んでおかなければならない点があります。
それは、原告側が「講師らは結果回避のためにこれこれをすべきだった」と列挙した以下の中から、裁判所がどれを結果回避義務として認めたか、です。そして、裁判所が認めた結果回避の方法については、少なくとも、その実施の有効性を検討する必要があります。
1、 事前の実地踏査を行っていない場合は、当日の偵察要員による雪庇(吹き溜まりを含む)の先行調査。
2、 バックベアリング法による稜線を特定しながらの登山。
3、 ゾンデ棒による山頂確定作業。
4、 地物の探索による山頂確定作業。
5、 遠方の山頂を目印に用いる山頂確定作業。
富山地裁の判断はどうだったでしょうか?
続きを読むHP「大日岳遭難事故を考える」判決文掲載
冬山登山者、全員、風下側絶対進入禁止論は棄却 と思われます
HP「大日岳遭難事故を考える」に、判決文と判決文要旨の全文がPDFファイルで掲載されました。
判決文公開はぼくの持論ですけれども、これは、とても勇気のいることだと思います。ですから、雪山に向かうすべての人は、この判決文を熟読し、真摯に考え、徹底して話しあい、その意思を明らかにする道義的責任があります。
もちろん、意思の表示の程度と精度は、その人の登山界での地位にたいして、ふさわしいものでなければなりません。
閑話休題
ぼくが、真っ先に確認したのは、非合理な以下の主張・・・ぼくが、直接、この裁判に関与することを決めた最大の原因・・・について、裁判所がどう判断したのかの詳細でした
「・・・冬山登山において、雪庇の上に進入しないように登高ルートを選定することは、最も基本的かつ重要な注意義務(法律上の義務)である。・・・」(判決文, p.6)
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