2006年07月22日
落雷事故 差戻審始まる
高校サッカー大会での落雷訴訟の差し戻し審始まる
2006年7月18日付四国新聞や7月19日付毎日新聞などの報道によると: 2006年7月18日、高松高裁で、高校のサッカー大会の試合で落雷を受けた男性(現在20代)らが、学校と主催者側に約3億円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し審第1回口頭弁論が開かれたようです。
最高裁判所は、今年3月に、この男性らの請求を棄却した2審高松高裁判決を、「引率教諭は落雷を予見できた」と判断して破棄し、審理を高裁に差し戻しました。
法的過失が成立するためには、すでに何度かご説明したように、予見可能性と結果回避可能性の両方が必要です。
最高裁が、法的過失成立のための2要件のうちの予見可能性について、「予見可能性あり」としたわけですから、少法的過失についての争点は、結果回避が可能だったかどうか、だけということになります。
雷が落ちることがあらかじめわかっていたとして落雷を避ける方法はあったでしょうか? もちろん、答えはYesです。グラウンドから避雷針のある屋内に避難すればいいだけですから。
よって、「結果回避可能性は存在した。にもかかわららず、結果回避義務を怠った」ということにならざるをえません。
したがって、以下の原告主張に、「落雷は予見できたのですが、結果回避の方法はありませんでした」と、法的な反論することは無理と思われます。(ただし、最高裁判断には自然科学的には疑義があります。)
原告側主張:
「雷に関する科学的知見は事故当時、誰でも習得可能で、事故は回避できたことは明らか」(津田玄児弁護団長, 7月19日付毎日新聞)
「教諭に落雷についての一般的な知識があれば(事故は)回避できた」(7月18日付四国新聞)
かくて、今後の争点は、「賠償金はどれくらいが相応か」と「賠償金の負担割合をどうするか」という点になると思われます。
これらの争点について、学校側は「試合中止の権限は主催者と審判にあり、教諭が選手を避難させることは不可能だった」(7月18日付四国新聞)と主張し、一方、「市体育協会は、この日は態度を保留した」(7月19日付毎日新聞)とのことです。
2006年7月19日付のasahi.comは、このあたりの様子について、以下のように報じています。
http://mytown.asahi.com/kochi/news.php?k_id=40000000607190002
最高裁は3月、北村さんらの訴えを棄却した二審判決を破棄し、「引率教諭は落雷の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能で、その注意義務を怠った」と認定。また、一、二審が大会の主催者でないとした市体協も責任を負うべきだとして、高裁で審理を尽くすよう差し戻していた。 この日の口頭弁論で北村さん側の弁護士は、教諭が落雷の結果を避けることができたことをより具体的に立証していくとした。北村さん自身もキーボードを操作し、パソコンの音声で「こんにちは。きたむらみつとしです」と陳述した。 一方、学校側の代理人は「試合の中止・中断の決定権は教諭でなく、主催者にあった」とする準備書面を提出した。また法廷後の進行協議で、市体協側が、最高裁判決が市体協の具体的な責任を指摘していないことを挙げたため、北村さん側は今後の審理で体協が負うべき責任の中身を明らかにしていく方針。
次回の口頭弁論は10月18日とのことです。