Uma Nuvem Se Aparece - 柳樂光隆のお仕事メモ

柳樂光隆のお仕事をメモしています。

【ハル・ウィルナー HAL WILLNERを聴く】のこと

奇才ハル・ウィルナーを聴く。

とりあえず、このトリビュート5作は全部行かないとね。
ninorota
Amarcord Nino Rota: Interpretations of Nino Rota's Music From the Films of Federico Fellini (1981)
ニーノ・ロータ盤は大音量で聴くと余計にエレガント。
Jaki Byardのソロに友人感嘆。

monk
That's The Way I Feel Now: A Tribute to Thelonious Monk (1984)
モンク盤、個人的に好きなのはWas(Not was)、Todd Rundgrenなのだが、
この辺りってDJから人気あったりしないのかね。
ロスアプソン系のミックスCDとかに入れたら、良さ気なんだけど。

KurtWeill
Lost in the Stars: The Music of Kurt Weill (1985)
クルト・ワイル盤はジョン・ゾーンの参加あたりが示しているが、
ちょいと前衛気味な部分もあり。
それでも、終始聴きやすいのがすごい。
Phil Woodsのバラードは気持ち良過ぎ。

Disney
Stay Awake: Interpretations of Vintage Disney Films (1988)
改めて聴くと、ディズニー盤もいい。
ポップな魅力に溢れてたんだと再確認。
トム・ウェイツとか、ハマリ過ぎ。

Weird Nightmare: Meditations on Mingus (1992)
ミンガス盤は意外なかっこよさに感激、見直した。
ドン・アライアスのビートが想像以上。
Chuck Dのラップも想定外にキた。

Carl Stalling Project(1990)
は大音量には向かず。
でも、最高だからもっと多くの人に聴いてほしい。

The Harry Smith Project: Anthology of American Folk Music Revisited (2006)
ハリースミス
フォーク・フォーク・フォーク。
Wilco〜Beth Orton〜Beckなんて豪華な流れも。
Roswell Rudd with Sonic Youth のソニックユースに店主関心。
ソニックユースは高柳昌行経由でジャズファンにもイケるね、やっぱり。

Plague Songs (2007)
プラグソング
これ、ちょっとウケたみたい。
聖書ネタの重いテーマなのに、
いきなりUKヒップホップでその後ポップなエレクトロポップもあり。
その今っぽい音に反応した方も。
ただ、その後にBriano EnoやRobert Wyatt。
その辺はウィルナーらしい。

Leonard Cohen: I'm Your Man (2006)
レナードコーエン
友人が一番喜んでたのがこれか。
Kate & Anna McGarrigle とか気持ち良い。
真っ白な音楽が組み込まれているのは
アメリカ人のルーツ(白人サイド)への傾倒からか。
レナード・コーエン、本人バージョンは馴染みにくいが
こういうカヴァーなら聞きやすいらしい。

他には
Hal Willner「Whoops, I'm an Indian」(1998)
Laurie Anderson「Life on a String」(2001)
lou Reed「The Raven」(2003)
Lucinda Williams「West」(2007)
Marianne Faithfull「Easy Come Easy Go」(2009)
ローリー・アンダーソンのは特に素晴らしい、個人的にフェイバリット。
ローリーアンダーソン
基本的に難しくて理屈っぽいイメージのローリーの魅力が
難しすぎない表現で楽しめる。
まぁ、ウィルナーにはしてはシンプルなサウンドで地味なんだけどね。

ハル・ウィルナーの志向はどんどん変化していっているのが手に取るようにわかった。
たとえば、スポークンワード好きでそういった企画をする予兆は
ミンガス盤での語りにも出ているし、
ラップを"ポエトリーリーディングやスポークンワードの延長"という発言も行っているだけに
その後もヒップホップを進んで収録したり、手がけたり。
ただ、それをダンスミュージックとしてではなく、
いち音楽としてロックやジャズの中に自然に放り込んでしまうセンスは、
今のタイミングにこそ、年下の我々は見習うべきだと思う。

のと同時に、大人の事情からか、
流石にメジャー仕事が板についてくると、
徐々に、冒険はなくなってくるのが少し残念。
それぞれ、出来は良いのだけどね。
初期のインパクトに迫るものは正直ない。
ニーノロータ盤での計算しつくされた流麗な展開、
クルトワイル盤、セロニアス・モンク盤での破綻寸前の雑多さとその時代の空気。
ジャンルを超えた多彩なゲストを起用した特異な作品で知られる
Kip Hanrahanのサウンドの元ネタとも言われる
ウィルナーの鋭く、同時に柔らかいセンスが最大限に発揮されたのは
初期だけだったといわれてもしょうがないかと。

ただ、ハリー・スミス・プロジェクトはそれに迫る仕事だった。
豪華なメンバーは予想の範囲内の人脈で
もう少しジャズ、もしくはヒップホップなども加えても面白かったとは思うが、
とは言え、フォークを軸に、ああいうことが出来るってのは興味深い。
ロック〜フォークの様々な所から点で集めた人選は文句の付けようが無い。
でもこれはスミソニアン財団絡みでセールスを意識しなくて良かったからかね。
音楽は常に、そことのせめぎ合いなのだね。
そういう現実も、見ることが出来る。

しかし、ウィルナーの初期作を聴くと、
ウィルナー以外でこんな次元のトリビュートというと
なかなかないなというのが正直なところ。
(心地良いもの、素敵なものならあるんですけどね。)

近年で言うと、Sufjan Stevens、Bjork、Caetano Veloso
Brad Mehldau、Cassandra Wilson、Prince、Emmylou Harris、
Elvis Costello、k.d. lang、James Taylorによる
「A Tribute to Joni Mitchell」
ジョニミッチェル
あたりはポップだしなかなか。
Ennio MorriconeのカヴァーしたJorn Zorn「The Big GunDown 」
は前衛過ぎるとは言え、素晴らしい。

ただ、ハル・ウィルナー・レベルというと、
個人的に思いついたのは
中村八大をカヴァーした大友良英&さがゆき「See You In A Dream」
大友良英&さがゆき
オリジナルと聞き比べると
楽曲のオリジナルには無い魅力が引き出されてるし、
(今の)時代の空気というのもパックされているし、
全体として、まとまりも良いというような楽しさもある。
結局、前衛畑か・・・という気もしてしまうが。

いつか、トリビュート盤(ついでにカヴァー集)特集の鑑賞会とかやってみても、
なんか、見えてくるかもしれないなと思った。
思い付きなので、いいのが浮かばないのが、困ったものだけれども。
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  • Posted by Mitsutaka Nagira
  • 03:22 | Edit

【告知】vol.35 : 2009/12/13 【ハル・ウィルナー HAL WILLNERを聴く

※告知なので、しばらく最上段に置いておきます。
ninorotamonkKurtWeillDisney

   @国分寺 プー横丁の店 2009/12/13(日) 18:00-23:00
      コーヒー¥400- or アルコール¥500〜
        (飲食代のみで入場料等はございません。)

 ※詳細はプー横丁の店のHP [event]ページをご覧下さい。
   http://poohshouse.web.fc2.com/event.html 
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  • Posted by Mitsutaka Nagira
  • 03:22 | Edit

【イベント】ジャズ新譜試聴会@国立ノートランクス

  • December 04, 2009
  • Diary
ディスク・ユニオン渋谷ジャズ&レアグルーヴ館の後藤さん主宰の
国立のジャズバーでの試聴会に行ってみようかと思ってます。

  ・ノートランクスHP⇒http://notrunks.jp/
  ・ジャズ新譜試聴会 詳細⇒http://d.hatena.ne.jp/sabio/20091219

中央線ジャズシーンでは有名な 村上寛さんと言う方のお店で
本気感が高い硬派なお店な上に、本気度全快のこの企画。
なかなか行く勇気が出なかったのですが、
このイベントに関してはずっと前から非常に気になっていて、
行こう行こうと思いながらも、行けずというのが続いて。
今月は丁度うまいことスケジュールも合ったので、
ようやく初参戦してみようかと。

ちなみにこの主催者の後藤さんは「中央線ジャズ決定盤101」
中央線ジャズ
という本にも執筆されてた方で
僕が毎年参加している いしいさん主宰のおれ的わたし的ベストにも参加されてます。

  後藤さんの08年のベストディスク⇒http://best2006.web.fc2.com/orewata2008toshi.html
        07年のベストディスク⇒http://best2006.web.fc2.com/orewata2007toshi.html

コメントも気合入ってますね。
僕のとは大違い。

当日紹介予定の新譜は
(順不同)→松風鉱一、林栄一、平井庸一、清野拓巳、高橋クニユキ、今岡友美、山田晃路、JON IRABAGON、JOE MARTIN、SERGI SIRVENT TRIO、DJ SPOOKY、JOHN HOLLENBECK、MAX DE ALOE、TYSHAWN SOREY、MIGUEL ZENON、KURT ROSENWINKELなどなど。
  おかまいなしの日記より
と想像通りの硬派なジャズです。
いやいや、楽しみなのと、ちょっと心細いのと。
でも、貴重なイベントなので、一人ででも行きますよ。

もし、一緒に行ってくれる人いたら連絡くだされ。
もしくは、間違いなく行くので、来たら声かけて下さい。
     
  • Posted by Mitsutaka Nagira
  • 15:16 | Edit

【 ドン・チェリー DON CHERRYを聴く 】 のこと

ジャズ界のボヘミアン ドン・チェリーを聴く
ということで、大量の作品を用意しての鑑賞会。
簡単に感想を。

やはり代表作は凄いと言うことで、
"MU" FIRST PART (1969)
mu
はホントにすばらしい。
Ed Blackwellが良いから、緊張感もあるし、空間に余裕もある。
ブラックウェルのプレイは非ジャズなのだが、
ジャズ的鋭利さが残っているのが良い。
ゆったりしてるんだけど、弛緩しないんだよな、それがすごい。

そう考えると今年再発されたレア盤の
DON CHERRY & LATIF KHAN(1978)
latif khan
はMUと比較すると演奏としては、ラティフ・カーンが役不足か。
ただ、ミニマルな演奏から、アンビエント的な、チル的な意味合いでは、
この弛緩したゆるさが、心地良い。
ドンチェリーのソロも刺激はあるが、雰囲気を崩さない。
空気を読める、空気を作り出せる才能が有る気がする、この人には。

ちなみにフリーっぽいのもいいけど、
そんな中にもボヘミアンな、エスノ風味を盛り込んでしまうのがドンチェリー。
THE NEW ETERNAL RHYTHM ORCHESTRA: ACTIONS (1971)
actions
などでは、欧州フリーのつわものが参加しているのに、
そんなのお構いなしのドンチェリーワールド。
ハードコアなフリージャズでも、インプロでの猥雑ではなく、
音楽的にトッ散らかったわかりやすい猥雑さで
いとも簡単に楽しく仕上げちゃう。
誰かがこれをサンプリングしたってことで再評価らしいが、
そんなデータは何の役にも立たん気がするんだよなー。

同時期のジャンルレスでエスニックな奇才とのトリオ コドナも当然凄い。
Collin Walcott/Don Cherry/Nana Vasconcelos Codona 1/2/3(1978,80,82)
codona
難しいことは考えてなさそうな三人だけど、
ECMでやると、賢そうに仕上がってしまうのが興味深いし、
音楽性という点でここまで完成度が高いものはドン・チェリーには他にない。
それもそれぞれが超濃厚な個性派で同じECMの
Egberto Gismonti=Charie Haden=Jan Garbarek「Folk Song」「magico」
以上に難しそうな組み合わせなのだが、
このサウンドの嘘のようなハマリ具合はコドナが3作も録音されていることからもわかる。
それにしても何度聴いても、驚ける傑作だ。
ちなみに意外と見逃されがちな「2」もかなり良い。
ついで言うと1,2,3がセットのボックスになって格安で出た。
未聴なら即買いだ。

個人的には70〜80年代のワールド〜ジャズ〜ロック〜ソウルなサウンドが
ドンチェリーの最も楽しく、耳馴染みも良い最良の時期かと。
BROWN RICE (1976)
brown rice
あたりではCharlie Haden,Billy Higgins,Frank Loweなど
Ornette Coleman絡みの人選と言うのもあり、
若干ジャズの比重が大きく、僕が望むものはまだ控えめ。
ただ、ジャズ的に聴けば、これが一番完成度は高い。
個々の演奏の柔軟性が以降とは次元が違う。
文句無しに傑作だ。

HEAR & NOW (1976)
here&now
ではブラコンの売れっ子プロデューサー Narada Michael Waldenが手がけたこともあり、
もはやフリージャズ色は希薄。
バックにはLenny White,Marcus Millerなどフュージョン系で
中途半端なグルーヴや緻密さが極めて、胡散臭い。
これこそ、ドン・チェリーかなと、個人的には思う。
ここから一気に突っ走りはじめる。

HOME BOY(1985)
home boy
フランス パリでのマイナーレーベル録音や
この路線のラストの
MULTIKULTI(1989)
MULTIKULTI
あたりが終着点か。
ニューウェイブ以降のロックやブラコン、ディスコなど
80年代を存分に吸い込んでのサウンドは、ポップで自由で中途半端。
着地点のなさが最高に楽しい。

この路線の流れの中に、
RIP PIG PANIC/I'M COLD(1982)
rip pig panic
への参加がある。
このフリージャズとファンクとワールドが融合したポストパンクな傑作、
ついでに、この人脈周辺のPop Group,Pig Bagなどなど
を合わせて考えると、ドンチェリーのサウンドとの類似性を
大雑把ながら感じてしまう。
たとえば、ニューウェイヴ/ポストパンクが時代のトレンドとは言え、
レゲエやダブを重用したが、
ドン・チェリーもこの路線の作品では
アルバム毎にレゲエに取り組み微妙にこだわりを見せる。
流行りモノが好きだったと言えばそれまでだが、
無理やりにでも音楽家の志向の類似を見つけて楽しむのは僕の得意技だ。
ポストパンクやニューウェイブのリスナーにも
ドンチェリーを勧めてみたい思いに駆られる。

ついでにビッグネームとのフリージャズじゃなくて、
こういう時期のジャンル不問のサウンドの未発表ライブなんかを聴いてみたい。
あるんだろうが、参加者の名前でパンチが無いから出せないんだろうが、
きっとすばらしいのがどっかに埋もれてるはず。
いつか、出ないか、期待して待っているんだが。
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  • Posted by Mitsutaka Nagira
  • 23:02 | Edit
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MNS





 ■mitsutaka nagira

 柳樂光隆(なぎら みつたか)

 1979年生まれ。
 東京都在住、島根県出雲市出身。
 音楽ライター
 元珍屋レコード店長。
 ジャズ専門誌、音楽誌を中心に寄稿。
 ライナーノーツ多数。
 監修・著書に『JAZZ The New Chapter ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平』 (シンコーミュージック刊)

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『ぼくがパーティーで一番気にかけていたことは、経済的に違う人たちをミックスさせること。そうするといいパーティーになるんだ。お金とは奇妙なもので人々を離ればなれにさせてしてしまう。だからお金のせいで離ればなれになっている人たちをパーティーで交流させるんだ。』
   by David Mancuso

『silencio tambem e musica (= 静寂は時に音楽を凌駕するんだ)』
   by Joao Gilberto

『音に積極的に耳を傾けるときに聞こえてくる響き。それこそが、サイレンス(沈黙)という、音楽的体験なのです。』
   by John Cage

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