2014年07月06日
シリーズ:中世のミサ曲(5)「クレド」
皆様こんにちはー。副顧問のたろうです。
訳あって1日遅れましたが、ミサ曲シリーズの更新をします。
さて、今回は「クレド」についてです。
クレドは日本語では「信仰宣言」呼ばれます。
読んで字の如し、ですが、「私は神を信じます」という内容で、
ミサの中では前半部分の最後に唱えられます。
ミサ曲の中ではグローリアの後に演奏されます。
ミサ曲の中の「クレド」の特徴ですが、歌詞がとにかく「長い」です。
写真は私の持っているミサ曲の解説本の1ページですが、
左ページの上がキリエ、その下がグローリア、
右ページが全部クレドです。(しかもさらに次のページに続いています)

歌詞は
Credo in unum Deum (私は唯一の神を信じます)
という言葉で始まるのですが、
その後に「神」の言い換えや説明がたくさん続きます。
歌詞が多いので当然曲も長くなります。
多くの場合、ミサ曲の中で一番長い曲はこのクレドです。
◆「あのー、すみません。質問があります」
あ、こんにちは。なんでしょうか(今日は登場早いナ)
◆「歌詞の写真を見たんですが、キリエとクレドの差がすごいですね」
そうですね。行数で3倍以上ありますからね。
◆「こんなに差があると、ミサ曲を作る時は全体のバランス調整が大変そうですね」
確かに。そのまま作ったらグローリアとクレドばかりが目立つ曲になってしまいますね。
でも、それを解消するためのテクニックが、実は中世の頃から存在します。
「メリスマ」って分かりますか?
◆「料理とかコントとかをやる、某アイドルグループのテレビ番組?」
・・・・・・スマスマですね(古っ!)
◆「冗談です。授業でやりました。なんかこう、
『あーーーーーーーーーーーれるーーーやーーーーー』
ってやつですよね」
そうですね。歌詞の一音節に複数の音をあてる作曲、または歌唱のことです。
キリエではこのメリスマが使われている曲が非常に多いのです。
サンクトゥスとアニュスデイも、比較的歌詞が少ないので、同様です。
対して、グローリアやクレドではほとんど使われません。
多くの場合、シラブリック(一音節に一音)に作曲されています。
結果、キリエやサンクトゥス、アニュスデイはひとつの言葉をたっぷりと時間をかけて歌い、
グローリアやクレドは比較的さくさくと進んでいく感じになります。
このようにして、ミサ曲の全体のバランスは調整されています。
このような視点で色々なミサ曲を聴き比べてみるのも、面白いと思いますよ。
12月に私たちが演奏するクレドは、トゥルネーのミサ曲からとりました。
このクレドは作曲者は不詳ですが、トゥルネー以外の複数の写本にも掲載されていることから、
当時各所で演奏された有名な曲だったと考えられています。
声部は三声で、ホモフォニックなスタイル(全てのパートが同時に同じ歌詞を歌う)
で作曲されています。
比較的単純な作りになっていますが、いくつかの大切な歌詞に、
それを上手く表現するような音が付けられています。
例えば
sub Pontio Pilato(ポンティオ・ピラトの下で)
の部分には現代和声の倚音にあたるような不協和音が使われ、イエスの苦しみを表現しています。
また、
et expecto(私は(死者の復活と来世の命を)待ち望みます)
には、2回だけ現れる曲中の最高音が使われており、期待感を表しているといえます。
(もう一回の最高音は Amen の部分で使われます)
もうひとつの大きな特徴は、フレーズの間に挿入される「つなぎ」の部分です。
曲中で13回現れるこの「つなぎ」の部分は、二声ないし単声で歌われます。
ほんの2拍程度の長さのものですが、長い歌詞に区切りを作ったり、
聴衆の耳をリフレッシュさせたり、曲に独特のリズム感を与えたりという効果があります。
有名なギョーム・ド・マショーのノートルダムミサ曲にも、
グローリアとクレドに同じような「つなぎ」部分が見られます。
マショーがこのトゥルネーのミサ曲を参考にしたのではないか、
少なくとも聴いたことはあるはずだ、と言われています。
個人的にとても好きな曲なので、だいぶ長くなってしまいましたが、
今回はこの辺りで終わります。
クレドは今回選んだミサ曲の中では比較的地味ーな曲です。
ですが、それ故に、より原初的な祈りに近い曲だと思っています。
是非、会場でお聴きいただきたいと思います。
次回は、「サンクトゥス」です。
◆「また見てネ☆」
おまけー:祖母からのメール
「今年のクリスマスはまたあれに出るの?教会の、ミサイル」
うお、いきなり物騒になったな・・
訳あって1日遅れましたが、ミサ曲シリーズの更新をします。
さて、今回は「クレド」についてです。
クレドは日本語では「信仰宣言」呼ばれます。
読んで字の如し、ですが、「私は神を信じます」という内容で、
ミサの中では前半部分の最後に唱えられます。
ミサ曲の中ではグローリアの後に演奏されます。
ミサ曲の中の「クレド」の特徴ですが、歌詞がとにかく「長い」です。
写真は私の持っているミサ曲の解説本の1ページですが、
左ページの上がキリエ、その下がグローリア、
右ページが全部クレドです。(しかもさらに次のページに続いています)

歌詞は
Credo in unum Deum (私は唯一の神を信じます)
という言葉で始まるのですが、
その後に「神」の言い換えや説明がたくさん続きます。
歌詞が多いので当然曲も長くなります。
多くの場合、ミサ曲の中で一番長い曲はこのクレドです。
◆「あのー、すみません。質問があります」
あ、こんにちは。なんでしょうか(今日は登場早いナ)
◆「歌詞の写真を見たんですが、キリエとクレドの差がすごいですね」
そうですね。行数で3倍以上ありますからね。
◆「こんなに差があると、ミサ曲を作る時は全体のバランス調整が大変そうですね」
確かに。そのまま作ったらグローリアとクレドばかりが目立つ曲になってしまいますね。
でも、それを解消するためのテクニックが、実は中世の頃から存在します。
「メリスマ」って分かりますか?
◆「料理とかコントとかをやる、某アイドルグループのテレビ番組?」
・・・・・・スマスマですね(古っ!)
◆「冗談です。授業でやりました。なんかこう、
『あーーーーーーーーーーーれるーーーやーーーーー』
ってやつですよね」
そうですね。歌詞の一音節に複数の音をあてる作曲、または歌唱のことです。
キリエではこのメリスマが使われている曲が非常に多いのです。
サンクトゥスとアニュスデイも、比較的歌詞が少ないので、同様です。
対して、グローリアやクレドではほとんど使われません。
多くの場合、シラブリック(一音節に一音)に作曲されています。
結果、キリエやサンクトゥス、アニュスデイはひとつの言葉をたっぷりと時間をかけて歌い、
グローリアやクレドは比較的さくさくと進んでいく感じになります。
このようにして、ミサ曲の全体のバランスは調整されています。
このような視点で色々なミサ曲を聴き比べてみるのも、面白いと思いますよ。
12月に私たちが演奏するクレドは、トゥルネーのミサ曲からとりました。
このクレドは作曲者は不詳ですが、トゥルネー以外の複数の写本にも掲載されていることから、
当時各所で演奏された有名な曲だったと考えられています。
声部は三声で、ホモフォニックなスタイル(全てのパートが同時に同じ歌詞を歌う)
で作曲されています。
比較的単純な作りになっていますが、いくつかの大切な歌詞に、
それを上手く表現するような音が付けられています。
例えば
sub Pontio Pilato(ポンティオ・ピラトの下で)
の部分には現代和声の倚音にあたるような不協和音が使われ、イエスの苦しみを表現しています。
また、
et expecto(私は(死者の復活と来世の命を)待ち望みます)
には、2回だけ現れる曲中の最高音が使われており、期待感を表しているといえます。
(もう一回の最高音は Amen の部分で使われます)
もうひとつの大きな特徴は、フレーズの間に挿入される「つなぎ」の部分です。
曲中で13回現れるこの「つなぎ」の部分は、二声ないし単声で歌われます。
ほんの2拍程度の長さのものですが、長い歌詞に区切りを作ったり、
聴衆の耳をリフレッシュさせたり、曲に独特のリズム感を与えたりという効果があります。
有名なギョーム・ド・マショーのノートルダムミサ曲にも、
グローリアとクレドに同じような「つなぎ」部分が見られます。
マショーがこのトゥルネーのミサ曲を参考にしたのではないか、
少なくとも聴いたことはあるはずだ、と言われています。
個人的にとても好きな曲なので、だいぶ長くなってしまいましたが、
今回はこの辺りで終わります。
クレドは今回選んだミサ曲の中では比較的地味ーな曲です。
ですが、それ故に、より原初的な祈りに近い曲だと思っています。
是非、会場でお聴きいただきたいと思います。
次回は、「サンクトゥス」です。
◆「また見てネ☆」
おまけー:祖母からのメール
「今年のクリスマスはまたあれに出るの?教会の、ミサイル」
うお、いきなり物騒になったな・・