2011年06月
2011年06月23日
私の執事は意地悪ダーリン【3】
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これより女性向け執事とお嬢様のベタ小説が始まります。
ちょっとひっぱり過ぎたかな
でも次回の楽しみがまた増えるって思ってくださると幸いです。
それでは【2】の続きをお楽しみください
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ベッドの上で乱れたバスローブをそのままに、膝を抱え泣く莉李の頭を高来はそっと撫でた。
「お嬢様。顔を上げてください」
その声はさっきと違い、とても優しい指遣いと声色だった。
「…嫌っ」
だけど莉李は鼻を啜るだけで素直に顔を上げられない。
高来に自分の気持ちがバレた。きっと高来は困って自分を慰める為に優しい仕草をするのだろう。
いつだってそうだ。子供扱いして女性と見てくれない。
しかも今回はこんなエッチな漫画を読んで、それを高来に置き換えて自慰行為をしたのだ。それを高来は知っている。
顔を上げられるはずはなかった。
「困りましたね…」
ボソリと呟く高来に莉李の身体はピクリと反応した。
その後に続く高来の言葉を莉李は知っていたからだ。
莉李の告白に困り、どう傷つけないように断ろうか優しい高来は悩んでいるに違いない。
だけど高来の口から出た言葉は莉李の予想に反した。
「顔を上げてもらわないと、私は好きな女性にキスもできません。それともお嬢様は無理やりの方が好みですか?」
クスクスとどこか楽しげな笑いと一緒に頭を撫でていた高来の指が、莉李の俯いて隠れた横の髪をかき上げた。
「たか…き? 今、なんて…?」
「やっと顔を上げてくださいましたね」
目を細めて優しく微笑む高来に莉李は戸惑った。
あまりにも高来がさらりと言ったから聞き間違えだったのか、それとも別の解釈があるのだろうかと思考を巡らせた。
「あまり私に勘違いさせないでください。こう見えて独占欲が強いんですよ。それこそ…」
未だ理解できず口をポカンと開けて高来の真意を図ろうと見つめている莉李に高来はゆっくりと笑みを消すと、涙で濡れた頬を指で拭った。
「お嬢様の口から他の男性の名が出たら、私はあなたをどうしていたか判りません」
さっきまで笑っていた高来の瞳に一瞬鋭い光を感じ、莉李は数回瞬きをした。
それは今まで見た事のないような怖い瞳だったからだ。
「さぁ、お嬢様。ちゃんと私におっしゃってください」
そう言って笑った高来に、やっぱり気のせいだったんだとホッとしたと同時に首を傾げる。
正直、さっきから高来が何を言っているのか莉李には着いていくことができなかったのだ。
「まともに告白させろと言ったのはお嬢様ですよ?」
高来の指が頬から唇へと下り、言葉を待つようにゆっくりとなぞる。
その手つきに高来のキスを思い出し、莉李はドキドキと鼓動を早くさせた。
すっかり涙は止まっていた。
「私は…」
高来の言葉もまだ理解できていないくせに、魔法に掛ったみたいに言葉が続く。
「高来が…好き」
そんな莉李に高来は満足そうに口角を上げた。
「良くできました。ご褒美です」
「んっ…」
近づいてきた整った顔はぼやけ、唇に柔らかな温もりを感じる。
高来にキスをされていると気付いた頃には、口内に舌が入り甘く擽られている時だった。
「んふっ…くちゅ…たか…んっ」
巧みな高来のキスは離れては角度を変え、深く甘く莉李を味わう。
莉李の身体は力が抜け、されるがままになっていた。
「ちゅっ、お嬢様。本当に私を愛す覚悟はおありですか?」
やっと離れた頃には莉李の息が上がり、まだ間近にある高来のスッとした切れ長な目を蕩けるように見つめていた。
「はぁはぁはぁ…。もちろん」
「本当ですか? 今更『間違いでした』は通用しませんよ?」
「間違いなんかじゃないわ! ずっと高来が好きだったのに! 高来だって私のこと本当に好きなの?」
「私の告白を聞いていませんでしたか?」
「…‥高来」
高来は執事とお嬢様という立場を気にしているのだろう。『私を愛す覚悟』その言葉を莉李はそう解釈した。
正直、先のことなど全然考えていなかったが、さっき高来が言った言葉は訊き間違えなんかじゃなかったんだ。
好きな人とこうしてキスをできる喜びに莉李の心は満たされていた。
「フッ…。それなら続きは今夜いたしましょう」
「え?」
莉李の唇に軽いキスをもう一度すると、高来はベッドから下り立ち上がった。
「0時頃、またここに来ます。お嬢様は今の格好で私を待っていてください。幸い明日は学校がお休みですしね。たっぷり可愛がってさしあげましょう」
ポカンと高来を見つめる莉李に、この漫画は預かっていきますと口角を上げ、高来は莉李の部屋から出て行った。
「…‥続き?」
高来が出て行ってから10分後、莉李は顔を真っ赤にさせていた。
やっと意味を理解したのだ。
今夜高来に抱かれる――。
だが、莉李の解釈は間違っていた。
高来が言った『覚悟』は違う意味だったことにまだ気付かず、頬を染めドキドキと鼓動を早くしているだけだった。
【 続く 】