8月4日(火)より1年ぶりとなる個展を開催される河本いづみ先生。
お話をお聞きしました!
-今回の個展のテーマを教えてください。
色を音と捉えサブタイトルを「調べ」とし、クラッシック音楽が聞こえてくるような画面作りを目指しました。
一貫してあるコンセプトは静けさです。
どの作品も、モチーフには静かで柔らかな光をまとわせ、落ち着いた雰囲気が感じられるようまとめました。
-サブタイトルは何故「調べ」に?
私の制作は、常に好きな音楽と共にあります。
描くときには必ず聞いていて、無音では描けません。
それはラフマニノフであったりショパンやリストであったりと、多くはピアノ曲やコンチェルトです。
その甘やかで繊細、時に壮大な楽曲を聞き、力をいただいているわけですが、思うことは常に音楽にはかなわない、でも色で音を奏でたい、そういう願いで制作しています。
-今回の作品はそれぞれに聴かれていた曲があるのでしょうか?
特に特定のものはないのですが、クラッシック音楽が好きです。
描いている時のモチーフや構成によって気持ちよくしっくりくる音を選びます。
また、演奏者のパフォーマンスによって同じ曲でも聞こえ方が違うので、好きな演奏者のものだけを好んで聞いています。
今回多く聞いたのは反田恭平さんのピアノコンチェルトです。
曲は画像にあるように、ラフマニノフのピアノコンチェルト2番作品18や3番作品30がメインで入っているCDで、飽きずに繰り返し聴いていました。
あとはショパンのピアノ曲(アシュケナージ)やバイオリン(五嶋みどり、樫本大進)などです。
画面から音が聞こえてくるような…という気持ちを込めて描いています。
-約1年ぶりの個展となりますが、制作されてきた中で心境の変化はありましたか?
タイトルで完成になるような作品作りでしょうか。
以前から、モチーフの持つ色の関係性を大事にしてきましたが、例えば花ならただ色形だけでなくその花に意識を持たせるようにする。
花言葉を調べてタイトルと関連性を持たせるなど、工夫するようになりました。
タイトルを作品の一部と考えるとその作品をどう見せたいか、鑑賞者へのメッセージにも繋がるような気がします。
以前は静物なのだからと、組み合わせたモチーフ名だけにしていたことも多かったのですが、昨年あたりからタイトルにも重点をあて、作品内容+タイトルで一つの作品といった考え方をするようになりました。
-タイトルはどのように浮かんでくるのでしょうか?
始めにタイトルありきもありますが、描いている最中に浮かんでくることが多いです。
なかなか出てこなくて絵だけ先に仕上がり、何がぴったりするか?と苦労することもあります。
制作中にタイトルが降ってきてそれがいい得て妙みたいだと本当に嬉しくなります!
気持ちも入るので、仕上げやすくなるということも実感しています。
例えば、今回の出品作「望郷」は遠い昔のヨーロッパの設定。
離れ離れに暮らしている愛娘の無事を願い、手紙を書こうとしている父親目線の作品。
男性は妻に先立たれており娘が一人残されている。
仕事の関係で寄宿舎か乳母に娘を預け遠く離れた国に住んでいる。
果物とチューリップは季節的には同じにはならないのですが、白いチューリップは幼く可憐な娘の象徴、かつ春には会えるかという希望を表している。
果物は娘に食べさせてやりたいという思いが入っています。
状況はスペイン風邪の頃。
なかなか思うように会えない。
送ってもらった写真に娘を思い、彼女の無事を祈る気持ちで手紙を書こうとしている、そんな風景を描きました。
現状下で描き始めたわけではなかったのですが、結局似たような感覚になりました。
フレームや本、布、ポストカードなど多くはフランス製アンティーク。
ペンはイタリアのアンティークペンのフェイクです。
投げ入れたような盛花。
柔らかな夜風が吹く中、風に揺れた葉どうしがこすれ合い、微かな音が聞こえてくる。
そんなたまゆらのような音を連想する画面を目指しました。
「変わらぬ想い」F4
花言葉で紫色のチューリップは『不滅の愛』、クリスマスローズはいろいろあるうちの『忘れないで』を取り、『忘れないで…変らずあなたを想っています』という静かな想いを表しました。
-今回の出品作の中で一番見てほしい作品を教えてください。
15Pの「旋律」です。
ユリに加えて数種の果物が入った作品です。
狙って組んだわけではなかったのですが、色相環で言えば紫を除き、ほとんど全ての色相が入った絵になりました。
赤い洋梨を中心にいろいろな色がハーモニーを奏でるように響き合い、あたかも静かな旋律が聞こえてくるような画面に…と思いながら仕上げました。
-作品のインスピレーションはどこから生まれてきますか。
実際に見る果物や花との出会いから生まれます。
無機的な器だけではなかなか描く気持ちになれません。
色や形がきれいだったり変わっていたりする果物や花と出会うと決まって描きたい意欲がわいてきます。
そして手持ちの器と組み合わせ考えているうちに、作品に込める内容が決まっていくという感じです。
-最後に個展を見て下さる皆さまに一言お願いします。
2020年、全く様相が変わってしまった世の中ですが、制作と共にある生活は以前と変わらず私の日常です。
世の情勢を見聞きするたびに心がざわつくことが少なからずありますが、色が一筆から現れ美しいと感じるその一瞬に穏やかさを取り戻し、平常心の大切さを教えられる日々です。
私の制作は、常に好きな音楽と共にあります。
今回の決して多くはない新作ではありますが、皆様のお心にひとひらでも静かな音を落とすことができましたら幸いです。
河本先生、ありがとうございました!
個展は8月16日(日)まで開催しております。
是非ご高覧くださいませ。
前回のインタビューはこちら↓
http://blog.livedoor.jp/soratobu_penguin/archives/8845309.html
「河本いづみ 油彩画展-調べ-」
8月4日(火)~8月16日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:河本いづみ
作家来場日:8月4日(火) 13時~17時
河本いづみの画業のきっかけはトールペインティングでした。その後、油彩画家・三嶋哲也に師事し、みずみずしい果物や、鮮やかな花などの静物画をメインとした作品を制作しております。持っている食器やグラス、花瓶など古いものに合わせ、時の中の1シーンを考えるのは楽しい仕事だと作家自身は語っております。色同士の相性や表現にもこだわりを持つ作品からは、彼女の持つセンスと、完成度の高さが伺えます。 今回の個展では、サブタイトルを「調べ」とし色を音と捉え、クラッシック音楽が聞こえてくるような展覧会となっております。静けさの中に柔らかな光を纏う作品たちを是非ご高覧くださいませ。
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