アーティスティックアスリート(体操、ダンサー等)における鏡視下臼蓋形成術
関する文献を紹介したいと思います。
※今回の文献は芸術系アスリートに特化したものです。
本編は、下記よりダウンロードが無料でできます。
https://doi.org/10.1177/23259671211049222
『23人の女性芸術系競技アスリート(バレエ14人,新体操9人,ダンス4人,バトントワリング1人)の28股関節について,関節鏡下関節唇温存術,関節包プリケーション,ESA(鏡視下シェルフ)術を行った。』
鏡視下Shelf Acetabuloplastyと関節唇修復、Cam Osteoplasty、関節包プリケーションを併用したアーティスティックアスリートの寛骨臼形成不全の治療について:症例シリーズ
Endoscopic Shelf Acetabuloplasty Concomitant With Labral Repair, Cam Osteoplasty, and Capsular Plication to Treat Acetabular Dysplasia in Artistic Athletes A Case Series
Soshi Uchida,*† MD, PhD, Yoichi Murata,† MD, PhD,
2021
The Orthopaedic Journal of Sports Medicine
ダンスのような芸術的なスポーツは、股関節の可動域を極端に広げる必要がある。骨の変形があるアーティスティックスポーツ選手が極端な股関節可動域を繰り返していると、軟骨関節唇の損傷を引き起こし、変形性股関節症(OA)になりやすくなる。引退したバレエダンサーでは、一般の人よりもX線写真による股関節OAの有病率が高いことが報告されている。あるシステマティックレビューによると、462人のプロダンサーのうち128人が股関節/鼠径部を損傷しており、損傷率は27.7%であった。また、学生ダンサー1539名のうち、217名が股関節/鼠径部を損傷しており、損傷率は14.1%であった。Harrisらは、47人のダンサーを対象に、カム変形と股関節形成不全の有病率を報告している。
芸術系ダンサーの89%が股関節形成不全または境界型股関節形成不全を有しており、男性よりも女性の方が、有意に有病率が高かったとのことである。アーティスティックアスリートのカム変形や関節唇断裂などの関節内の病態に対処するために、股関節鏡下手術は実に貴重なものとなる。
以前のケースシリーズ研究では、
鏡視下Shelf acetabuloplasty(ESA)を行ったところ、活動的な患者の90%以上が活動に復帰することができた。
さらに、最近の研究では、ESAは寛骨臼周囲骨切り術(PAO)よりも低侵襲で、しかも活動的な患者が受傷前のレベルのスポーツ活動に復帰できることが示されている。最近の手術手技報告では、寛骨臼形成不全でリムストレス骨折を起こした新体操選手が、ESAによる骨片固定、関節唇修復、シューレース関節包プリケーションを併用した後、競技に復帰したケースが紹介されている。
寛骨臼回転骨切り術や、臼蓋移動術では 侵襲が大きすぎるため、芸術系アスリートは復帰することがほぼ不可能であるか 非常に時間がかかる
『既存の文献では、新体操、バレエダンサー などの芸術系アスリートの寛骨臼形成不全に対するESA(鏡視下Shelf acetabuloplasty)の有効性について、明確な説明がなされていない。』
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『本研究の目的は、芸術系アスリートの寛骨臼形成不全に対するESAと関節唇修復術および関節包プリケーションの併用後の臨床結果および芸術競技活動への復帰について調査することであった。』
ESAを含む股関節鏡視下手術により、これらのアスリートは、高い成功率、有意に改善された寛骨臼の被覆、温存された関節軟骨により、芸術競技活動への復帰が可能になるという仮説が立てられた。
手術術式
●結果
l 最終的なフォローアップは、平均32.5±12.5ヵ月(範囲、24〜72ヵ月)であった。
l 術前および術後のPROスコアの詳細は表4に示すとおりである。すべてのスコアは,術前評価と最終フォローアップの間で有意に改善した(すべてにおいてP < 0.001)。
l MCIDスコア(MCIDを達成した患者の割合)は、mHHSが9.1(71.4%)、NAHSが8.9(75.0%)、iHOT-12が9.7(85.7%)、VHSが6.9(85.7%)、HOS-Sportsが8.5(70.4%)であった。
l FABERは、術前から最終フォローアップまで有意に改善した。内旋では有意な改善は見られなかった(表5)。
●考察を抜粋します。
本研究で得られた主な知見は以下の通りである。
(1) 芸術的競技活動に復帰した患者のPROスコアは、術前から術後最終フォローアップまで有意に改善した。
(2)寛骨臼形成不全の芸術的アスリートの89%が、ESAに関節唇修復術、カムオステオコンドロプラスティ、関節包プリケーションを併用することで、芸術的競技活動に復帰できた。
(3) 最後に、3人の芸術的アスリートは、術後のDGSの結果、PROスコアの改善が見られず、活動に復帰できなかった。
l 今回の結果は、他の研究で報告されたものよりも芸術的競技活動への復帰率が高く(87%)、ESA後のHOS-Sportsでは80.0%の患者がPASSを達成した。
l 我々の研究では、3名(13%)のダンサーが術後にDGSを経験した。
O ESAはFAI手術よりも術後の出血が多い可能性がある。
O 血液が深臀部の空間に膨張し、深臀部の空間にある周囲の神経に癒着を促すことがある。我々は、この手術にはDGSのリスクがあると考える。
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これまでの知見と同様に、我々の患者はすべて女性であり、28人中22人が全身性の関節弛緩(Beighton score >5)を有すると定義された。これらの所見は、寛骨臼形成不全を有する芸術的アスリート選手には注意が必要であることを示唆する。
『我々のクリニックでは、LCEAが10°から20°程度の寛骨臼形成不全で、股関節鏡だけで良好な結果が予測される患者でも、骨のサポートを追加するESAの候補となることがある。これは、共存する関節包内病変を治療するために股関節鏡を同時に行うことの利点に加えてのことである。とはいえ、LCEAが10°未満の重度の寛骨臼形成不全は、PAOの適応であると考えている。』
●結語を抜粋します。
『今回の研究では、アーティスティックなスポーツ選手が、関節弛緩のための股関節形成不全の治療として、関節唇修復術、カムオステオプラスティ、関節包プリケーションとESAを併用したところ、高い成功率で活動に復帰することができた。』
動画でまとめたものがこちらです。
先生のご投稿と関係のない内容で失礼いたします。3ケ月ほど、原因不明の右足の痺れ・力が抜ける・足先が下がる症状に悩まされている市民ランナーです。
春頃にも、右足先が突っ掛かり、頻繁に転倒する症状があり、その時腰部のMRIを撮りましたが軽度のヘルニアという程度で、症状も自然と?落ち着いたのですが、今回は改善の兆しがなく、むしろ症状が悪化していく感じで、懸命に取り組んできたマラソンも、今は全くと言っていいほど走ることができなくなり、原因が腓骨神経なのか、抜け抜け病なのか、別の何かなのか全くわからず、どこに行って何をしたらいいのかもわからず、光を失ってしまいました。先生は、股関節が専門のようにお見受けしたのですが、私のような症状を診ていただくことは可能でしょうか?